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尊在
しおりを挟む流れ始めた時間の中を
漂い続けていた
瞼を重く閉ざして
耳を澄ませて
いろんな音を聞いた
耳障りな喧騒
空っぽな愛の言葉
何ひとつ 語りかけてこなかった
不思議な匂いがした
微かに甘みを含んだ死の匂い
目を閉じたまま僕はそれを
指でなぞった
愛を求めたら
愛に似た何かが返ってきた
理想を求めたら
かけ離れた何かが差し出された
座り込んでいた
深い海の底 膝を抱えて
結局 手は伸ばさぬままに
夢を見ていた
色のついた夢 夢…
流れる時間の音までもが
鮮明に映し出される
不思議な匂いがした
どこかで出逢った匂い いつだったろう
僕が生まれる前?
そして 初めてこの目を開く
求められていた
目を開けた先に手を伸ばす君
何を求めているんだい?
僕の愛に似た何か?
それとも まがい物じゃない輪郭?
君は僕を見つめ続ける
求められた反応
きちんと差し出せるだろうか
まがい物じゃない何か
僕は君の瞳を見る
立ち上がる瞬間
きちんと受け取れるだろう
求めあっていた
お互いに探し続けていた
今 君を『尊在』と呼ぼう
光が差し込んでくる
深い海の底 僕らを包んで
出逢えた存在とふたり
無限の有限を泳ごう
泳ごう…
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