悪役令嬢、メイドさんになる~転生先は処刑待ちの牢屋スタートです~

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第1章 悪役令嬢がメイドに至るまで

イケメン声の二人は見た目もイケメン

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 私は首への被害を受け入れると決意し、顔を上げると───。

目の前に絶世のイケメンが二人いた。
モンスターじゃなかった。いや、見た目イケメンのモンスターの可能性が……。

そんなことより……私の息が止まっている。

何故って?
期待はしていたけれど、覚悟が出来ていなかったからだよ。モンスターじゃね?ってふざけたし。
衝撃が凄いことになってしまった……。
私の死因はイケメンか……。はっ!まさか……そういう……モン……ス……ター……。
息ができなくて苦しい。
が、それも一瞬のこと。すぐに私の呼吸は戻り、死はまぬがれた。

刺すような二人分の視線に殺されそうだが。

 二人が持ってきた明かりがあっても、この牢屋は暗い。
そんな中でも伝わってくる二人からの強い感情。私への嫌悪やら敵意やら何やらの悪感情。恋情れんじょうだったら良かったのにってくらい。
私に対する気持ちを隠す気はないようだが、一体全体私は何をしたのか。

「聞いているのか」

聞いてませんでした。

 唐突に声がしたと思ったら、姿もイケメンな彼は、ずっと何かを話していたらしい。

申し訳ない事に、完全に耳に入っていなかった。本当に申し訳ない。

 鼻で笑う事が得意なイケメンさんは、眉間に皺を作り、私を見ている。
冷めた瞳は細められ、少し殺意が混じっているような気が……。

 本当に、私は何をしたのだ。

「何を見ている。また何か企んでいるのか」

イケメンさんは腕を組み、眉間の皺を深くさせた。
鼻笑いが得意なこちらのイケメンさんは、王子のような容姿をしている。
薄暗くてわからないが、髪の色は薄そうだ。

 あくまで髪の色だ。髪の毛じゃない。

そして王子イケメンの隣、私から見て左にいるイケメンは、最初に聞いた低い声のアレンという名の人物だろう。
王子イケメンよりも背が高く、がっちりとした体をお待ちだ。

 右が王子だとしたら、左の人は騎士だろう。そういうことにしておく。アレンさんはさぞや素晴らしい筋肉をお持ちの事だろう。服の上からでも分かる。私の気持ちは一つになった。その服を脱げ!

「私に何か用ですか」

 嫌悪に溢れる視線にさらされる事が趣味ではないので、早急にお帰りいただこうと声をかけてみる。
それに、“脱いで欲しい”なんて思ったことがバレたら困る。そう、非常に困る。私は筋肉フェチではない。脱がれたら困───。

 ───ではなく、これ以上冷たい視線にさらされることになってしまう。きっと凍る。物理的に凍る。
まぁ、これ以上の冷たい視線があればの話ではあるが。

 そんなことより、声を出してみて驚いた。私の声は酷くかすれている。今更だが喉も痛い。こんな湿気てたら潤いそうなものなのに。

「お前が倒れて動かないという報告があった。一応確認はした方が良いと言われて来ただけで、心配はしていない。むしろ、倒れていてくれた方が良かったくらいだ」

なんだとオイ。

「やはり、嘘だったようだが」

 最後のセリフで王子イケメンの視線が超絶冷たくなった。たぶんここの気温は10度下がった。どうしてくれるんだ。ただでさえこの牢屋は冷えるのに。思わず身震いしてしまった。言葉にも敵意を感じる。

 私、何かしました?あっ、したのか。身に覚えはないけれど。まあ、夢なんてそんなものか。







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