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第1章 悪役令嬢がメイドに至るまで
足音の持ち主はイケメン声の持ち主
しおりを挟むその足音は直ぐ側で止まった。それも、私がいる牢屋の前で。
どうやら、モンスターではなかったようだ。いや、人型モンスターの可能性がまだ……。あっ、姿を見ていないから、人型とも言い切れんな。
……無言。無音。静かだ。
因みに、私は未だ転がったままである。私に用があるとは思わなかったし、わざわざ痛みを訴えてくる体を動かしたくはない。後半が主な理由。切実な。
……視線を感じる。
それはもうビシバシと痛いくらいに。絶対どこかに穴空いた。流血騒ぎだよ。
冗談はさておいて、私は寝たフリを敢行中。向こう側との関係性もわからないし、起きたくない。前半が主な理由で後半が本音。
「あの話は本当だったのか?」
イケメンな低い声が聞こえてきた。
耳に心地よく、とても眠れそう。ずっと喋っててくれ。このまま寝るから。
それで現実世界で起きるんだ!さよなら牢屋よ!
そして、あの話って何?
「フン、ありえない。あの女は異常だ。粘り強いアレを忘れたか。今回のこれもまた演技だろう。簡単に騙されるなアレン」
先の人よりかは低くないけれど、自分を信じてる感じが伝わってくる。こちらも良い声で、鼻で笑うのが自然で上手かった。この人の声では、眠れる気がしないな。
素敵な低い声の人の名前はアレンか。モンスターではなくイケメン……。姿もイケメンかは不明だがな。イケメン声のモンスターの可能性が……。
そして、あの女とは誰だろう。
もしかしてもしかしなくても、私か?
えっ私なのか?
「おい、起きているのだろう?」
これはたぶん私に言っている。だが、反応はしない。できない。体中が痛いから。決して起きたくないからではない。本当だよ。
「何をするつもりかは知らないが、無駄な抵抗はよせ。もう起きている事はわかっている。そろそろ大人しくしろ。時間を取らせるな」
なんだか警察っぽい事を言われた。
そういえば、昨夜はサスペンスを見たな。きっとその影響だ。
犯人側として抵抗したい所だが、面倒なので大人しくするを決行することにした。
このイケメン声二人と私の関係性も知りたい。
私は硬い腕で硬い硬い体を支えながら、硬い体の硬い上半身のみを起こして座り、硬い腕で硬い体を支え、二人と向き合った。腕って凄い。もう足は固まっていて動きたくない。
いや、動かしたほうが良いのかコレ。
そんなこんなで彼らと向き合った。
が、彼らの足は長く、背も高いようで、顔を上げなければならなかった。
なんてこった。
いや、別に困りはしない。未来にて、首が痛くなることだろうけれども、困りはしない。
私の首が被害を受けるだけだ……。
私の首はその程度の価値しかないんだよぉぉぉぉぉぉ。
はぁ。私たぶん疲れてる。こんな夢を見るくらいだし。イケメンの声だって、私が癒しを求めているからなのだろう。実際癒されているし。
現実世界で起きたら十分な休息を取ろう。このイケメン声を脳内再生して。でも、被虐趣味はないのだよね。
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