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4 攻略対象キャラ3
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どう見ても子どもにしか見えないクライドは、実際に子どもだった。保健室まで付き添ったアタシに、クライドが自分の氏素性を語りだしたのさ。
「僕はまだ12歳だから、周りがお兄さんとお姉さんばっかりで、落ち着かないんです」
「するとクライドさまは教会関係者ですか」
「な、なんでわかるんですか!」
そりゃわかるさ。たぶんクライドは『学園』の教会枠入学者だろ。教会枠で入学する場合には、特例として年齢制限がなくなる。理由は教会幹部を養成する『寄宿学校』が『学園』と同じように15歳での入学になるからさ。
エリート神官になるには、『寄宿学校』卒業が最低条件だ。『寄宿学校』はエリート神官志望者にとってなによりも優先される。そのうえで『学園』にも通おうと思ったら、15歳までに『学園』を卒業しておかないと『寄宿学校』入学に間に合わない。
そこまでして、どうして『学園』に通う必要があるのか?理由はかんたん、門閥貴族にかかわるタイプの神官には、『学園』卒業者であるという信用が必要だからさね。
この世界の門閥貴族ってのは、ハッキリ言うと人間じゃない。人間以上なのさ。『門閥貴族』は固有の領地をもつ伯爵家以上の貴族をさす言葉だ。700年前、帝国というかたちで人類がひとつにまとまる前までは、それぞれ独立国家の王族だった者たちさね。
古来から王族ってやつは、自分たちは神の末裔だって主張する為政者の一族だ。神さまの血統だと主張することで、自分たちの権力を裏づけていた。それが今日まで続く門閥貴族の系譜になる。
平民が門閥貴族とかかわろうとしたら、本当に大変なんだよ。わかりやすく言えば、神さまと人間くらい身分が違うんだから。うちのグレッツナー家は、わりとゆるいけど、本当ならメイドとは口もきけないような高い身分なんだよ、アタシは。
だから貴族とかかわる神官は『学園』を卒業して信用をつくる。ということはだ。逆に言えばクライドは、エリート神官の中でもとびっきりのエリートなのさ。たぶん父親は司祭クラスどころじゃすまないね。司教クラスの立場にいるだろう。
「まあ、頑張ってください。私たちの健康は、クライドさまのような神官にかかっているのですから」
猫をかぶってアタシが言うと、クライドは頬を赤くして照れてた。いやいや、これがホントに、冗談じゃないんだよ。
中世なみの文化レベルにもかかわらず、この世界の人類は平均寿命が70歳だ。理由は治癒術っていう魔法みたいなものがあるからさ。
正式名称は『神聖治癒術』っていうんだけど、治癒術は中級レベルでも、たいていの傷をあっという間に治してしまう反則技さ。
それでその治癒術を扱える医者みたいな存在が神官で、神官をたばねてる組織が教会だ。教会はたんなる宗教団体じゃないんだよ。というより、宗教色がやたら薄いんだ、この世界の教会は。
700年前、ヴァイデンライヒって帝国をつくった高祖皇帝というひとがいる。標準語の普及、度量衡と通貨の統一とか、偉業はいろいろあるんだけど、アタシがいちばん感心したのは、宗教法をつくって宗教団体を規制したことさ。
徳川家康の偉大さは、250年の平和を築いたことじゃなく、日本から宗教紛争をなくしたことだと思うんだよ。現代の日本人にはいまいちピンとこないだろうけど、日本だって400年くらい前までは、宗教団体が軍事力をもって戦争してたんだからね。ところが家康は、日本の宗教団体を、たんなる葬式屋にかえてしまった。
そして高祖皇帝はこの世界で、家康と同じことをやったのさ。教会をたんなる病院に変えちまったってわけだ。おかげで教会の神官は、お医者さんくらいの社会的ステータスしかもってないんだよ。
ちなみにこの世界の人間が、ゲルマン風の姓名をもっているのは、高祖皇帝が広めたからだっていわれている。色々合わせて考えると、高祖皇帝はアタシと同じ、転生者だったんじゃないかと思うんだけど━━まあ700年前の話だからね、確かめようがないさ。
クライドを保健室まで送ったあと、アタシは自分の影に話しかけた。
「フリッツ、ちょっと妙だとは思わないかい?」
「妙、とは?」
低く魅力的な声でフリッツが問い返してくる。どういう魔法で影に潜っているんだか知らないけど、姿が見えないどころか、その声すらもアタシにしか聞こえない。携帯電話がないこの世界じゃ、アタシはひとり言を繰り返すイタイやつだね。
「『学園』に入学してからまだ3時間も経っちゃいないんだよ?このままのペースでいくと、アタシゃ『学園』中の男前と知り合いになっちまうよ」
「はあ、男前ですか?」
どうやらフリッツはピンとこない様子だ。コイツは妙に美醜にうといところがある。フリッツ自身、けっこう美形なんだけどね。
「ディートハルトにケヴィン、アルフォンスときて最後はクライドだ。全員が並外れた男前ってのはどういうワケだい?」
「…至急、裏影に調べさせましょう」
なにか裏があるなら、それを調べるのが裏影の長であるフリッツの仕事だ。それがアタシに指摘されるまで気づかなかったんだから、ちょっとあわててるみたいだった。
だけどアタシも焼きが回ったモンだよ。最後がクライドだと思ったんだが、それが最後じゃなかったんだよ。わずか15分後、アタシはこの日最後の美形と出会うことになる。
魔道士、エルマー・フォン・シュレンドルフだ。
「僕はまだ12歳だから、周りがお兄さんとお姉さんばっかりで、落ち着かないんです」
「するとクライドさまは教会関係者ですか」
「な、なんでわかるんですか!」
そりゃわかるさ。たぶんクライドは『学園』の教会枠入学者だろ。教会枠で入学する場合には、特例として年齢制限がなくなる。理由は教会幹部を養成する『寄宿学校』が『学園』と同じように15歳での入学になるからさ。
エリート神官になるには、『寄宿学校』卒業が最低条件だ。『寄宿学校』はエリート神官志望者にとってなによりも優先される。そのうえで『学園』にも通おうと思ったら、15歳までに『学園』を卒業しておかないと『寄宿学校』入学に間に合わない。
そこまでして、どうして『学園』に通う必要があるのか?理由はかんたん、門閥貴族にかかわるタイプの神官には、『学園』卒業者であるという信用が必要だからさね。
この世界の門閥貴族ってのは、ハッキリ言うと人間じゃない。人間以上なのさ。『門閥貴族』は固有の領地をもつ伯爵家以上の貴族をさす言葉だ。700年前、帝国というかたちで人類がひとつにまとまる前までは、それぞれ独立国家の王族だった者たちさね。
古来から王族ってやつは、自分たちは神の末裔だって主張する為政者の一族だ。神さまの血統だと主張することで、自分たちの権力を裏づけていた。それが今日まで続く門閥貴族の系譜になる。
平民が門閥貴族とかかわろうとしたら、本当に大変なんだよ。わかりやすく言えば、神さまと人間くらい身分が違うんだから。うちのグレッツナー家は、わりとゆるいけど、本当ならメイドとは口もきけないような高い身分なんだよ、アタシは。
だから貴族とかかわる神官は『学園』を卒業して信用をつくる。ということはだ。逆に言えばクライドは、エリート神官の中でもとびっきりのエリートなのさ。たぶん父親は司祭クラスどころじゃすまないね。司教クラスの立場にいるだろう。
「まあ、頑張ってください。私たちの健康は、クライドさまのような神官にかかっているのですから」
猫をかぶってアタシが言うと、クライドは頬を赤くして照れてた。いやいや、これがホントに、冗談じゃないんだよ。
中世なみの文化レベルにもかかわらず、この世界の人類は平均寿命が70歳だ。理由は治癒術っていう魔法みたいなものがあるからさ。
正式名称は『神聖治癒術』っていうんだけど、治癒術は中級レベルでも、たいていの傷をあっという間に治してしまう反則技さ。
それでその治癒術を扱える医者みたいな存在が神官で、神官をたばねてる組織が教会だ。教会はたんなる宗教団体じゃないんだよ。というより、宗教色がやたら薄いんだ、この世界の教会は。
700年前、ヴァイデンライヒって帝国をつくった高祖皇帝というひとがいる。標準語の普及、度量衡と通貨の統一とか、偉業はいろいろあるんだけど、アタシがいちばん感心したのは、宗教法をつくって宗教団体を規制したことさ。
徳川家康の偉大さは、250年の平和を築いたことじゃなく、日本から宗教紛争をなくしたことだと思うんだよ。現代の日本人にはいまいちピンとこないだろうけど、日本だって400年くらい前までは、宗教団体が軍事力をもって戦争してたんだからね。ところが家康は、日本の宗教団体を、たんなる葬式屋にかえてしまった。
そして高祖皇帝はこの世界で、家康と同じことをやったのさ。教会をたんなる病院に変えちまったってわけだ。おかげで教会の神官は、お医者さんくらいの社会的ステータスしかもってないんだよ。
ちなみにこの世界の人間が、ゲルマン風の姓名をもっているのは、高祖皇帝が広めたからだっていわれている。色々合わせて考えると、高祖皇帝はアタシと同じ、転生者だったんじゃないかと思うんだけど━━まあ700年前の話だからね、確かめようがないさ。
クライドを保健室まで送ったあと、アタシは自分の影に話しかけた。
「フリッツ、ちょっと妙だとは思わないかい?」
「妙、とは?」
低く魅力的な声でフリッツが問い返してくる。どういう魔法で影に潜っているんだか知らないけど、姿が見えないどころか、その声すらもアタシにしか聞こえない。携帯電話がないこの世界じゃ、アタシはひとり言を繰り返すイタイやつだね。
「『学園』に入学してからまだ3時間も経っちゃいないんだよ?このままのペースでいくと、アタシゃ『学園』中の男前と知り合いになっちまうよ」
「はあ、男前ですか?」
どうやらフリッツはピンとこない様子だ。コイツは妙に美醜にうといところがある。フリッツ自身、けっこう美形なんだけどね。
「ディートハルトにケヴィン、アルフォンスときて最後はクライドだ。全員が並外れた男前ってのはどういうワケだい?」
「…至急、裏影に調べさせましょう」
なにか裏があるなら、それを調べるのが裏影の長であるフリッツの仕事だ。それがアタシに指摘されるまで気づかなかったんだから、ちょっとあわててるみたいだった。
だけどアタシも焼きが回ったモンだよ。最後がクライドだと思ったんだが、それが最後じゃなかったんだよ。わずか15分後、アタシはこの日最後の美形と出会うことになる。
魔道士、エルマー・フォン・シュレンドルフだ。
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