桜が散るまで

莉逢

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終わりの時

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待ちに待った春休み、そして部活の旅行行事。僕はこの時点で体の限界が近くなっていった。
「先輩……」
「ん?」
突然、新入部員が話しかけてきたので反応する。
「苦しくなったら、言ってくださいね?」
「……お前にはお見透視か……」
こいつは勘が鋭いらしい。でも実際、限界だったのである。
そして夜、僕は1人夜の道を歩いていた。当然息も荒い。
「ねぇ、真冬」
呼ばれたので振り返ってみると、そこには香澄がいた。
「何してるの?」
「散歩だよ、散歩」
「私も一緒に言っていい?」
「あぁ、いいぞ」
僕はそうして香澄と一緒に散歩を再開した。
どれほど歩いただろうか、1時間くらい歩いたような感じがする。すると林が見えてきたので僕らはその道を歩いていった。そして僕は香澄に告げる。
「なぁ香澄、お前先に帰ってくれないか?」
「なんで?」
「1人で歩きたくなったんだ」
「じゃあ質問だけど、なんで君は、余命過ぎてるのに生きているの?」
「……見たんだな、あの書類……」
「うん、あの時に」
「知られたのなら仕方ないか……」
そして僕は事実を伝える。
「香澄、僕はお前とは付き合えない」
「……もう、逝っちゃうの?」
「だから着いてこないでくれ……」
僕はそう言って歩き始めた。香澄はもう追って来ようとはしなかった。そんな時、ある人が現れた。その人とは……あの時の、医者だ。
「そろそろ死ぬ時か?」
冗談半分で言ってみる。
「そうよ」
なんとも予想的中、そして僕は突如浮遊感を感じた。
「え?」
そして僕は数分飛び、やがて地に足をつけた。
「なぁ愛羅、これはなんだ?」
「見ればわかるでしょ……ってあんたまさか……!」
「あぁ、もう目が機能しないみたいだ」
「これは……桜よ」
「わざわざ桜を咲かせたのか?」
「そうよ」
「……優しいやつだな」
そして僕は愛羅に言う
「僕、死にたくねぇよ……。こんな体じゃなかったら僕はアイツらと……」
僕の頬にはいつの間にか涙が流れていた。
「こんな最後……嫌すぎるだろ……!」
そして僕は一言言う
「でも僕はアイツらと会えて、幸せだったよ……」


瞬間、彼から生力が感じられなくなった。おそらく、逝ってしまったのだろう。私の目尻には何故か涙が溜まっていた。そして私は彼に届くようにそっと言葉を発す。
「私も君と出会えて良かったよ……榊真冬……」



私は、旅行以来元気が無くなった。彼が、もうこの世にはいないと知り、死にたくなった。でも、自分で死ぬことは出来ず、きっと、彼もまだ私に死んで欲しくないだろう。
そんなこんな私は学校を休み、1人繁華街でフラフラと歩いていた。そして私は湖のほとりまで来た。
「私、どうしたらいいんだろ……」
「前を向いて、生きていけばいいだろ」
私は絶句した。大好きだった声、今となってはもう聞けなかった声、1番聞きたかった声、そして私は振り返る。
「ま…ふ…ゆ…」
「待たせてごめんな?香澄」
「……うん……」
涙が溢れた。我慢できなかった。感動と喜びで頭がいっぱいになった。
そして、彼は言った。その一言を。
「僕はお前が好きだ。だから、付き合ってくれないか?」

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