菅原一月短編集R-18

菅原一月

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「黙秘します」

「黙秘します」

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重たいアルバムをめくる。


水着姿の二人の写真。
青の水着とゴーグルを身につけ、顔だけ振り向く幼い私。
その隣で、ひょろガリで、平泳ぎのポーズをとる短パン姿の篤兄。

自分のキラキラとした笑顔と、篤兄の得意げなニヤけ顔。


確か幼稚園に入る前だったと思う。
篤兄は、私の家からちょうど200メートル離れた所に越してきた。

少々、離れているご近所さんではあったが、親同士が馬が合ったのであろう。なんだか一緒にいることが多かった。幼稚園のお迎えに、親ではなく小学校から帰ってきた3歳上の篤兄が迎えにきた時はびっくりした。

そして、篤兄に手をつながれて帰るのだ。

篤兄は割合とても付き合いが良いほうで、
3月には、分厚い木蓮モクレンの花を拾って潰して香水モドキを作ったり。
4月には、花弁を集めて、泥を丸めて、葉っぱを添え、弁当モドキを作った。

私も付き合いが良いほうだったので、
6月には角だせ!槍だせ!頭だせ!で、どっちがより大きいカタツムリを見つけられるか勝負し。
8月には、コオロギを小さいダンボールに集めては二人で飼って遊んだ。

帰っている間に、二人でよく草笛をふいた。
トゲトゲしている葉っぱを唇につけるのは痛かった。
篤兄は、小さな桜の花びらで笛を拭こうと何度も挑戦していた。


私が小学生に上がっても変わらなくて、
学校から少し遠い、通学路が一緒な篤兄と私は二人で遊びながら帰った。
わざとあぜ道を通って帰り、ドングリを拾ったり、キノコを観察したり、木苺をぱくっと食べたね。
私が木の根っこに引っかかって転んだ時は、珍しく戦慄した顔をしておぶってくれた。
骨が少し折れていたようで、私が一時的に車登校になった時、しばらくの間別々で下校になった。



小学生5年生になると、まるで影のように篤兄の身長はのびてきて。
がっちりしてきた浅黒い腕。
篤兄は、遊びの師匠で私のあこがれだった。
だけど、いつからか篤兄と目が合うたび、ほんの少しドキドキして。


二人で草むらに雑誌が落ちていたのを興味シンシンでみたら、18禁のエロまんが雑誌で二人でイケないことした気分になったね。私、仄かに性的に興奮していたかも。

―あつ兄ぃ。キスってどういう感じなの。
そういったら、唇にやわらかいものが当たった。
篤兄はその後、素知らぬ顔してテレビでやっているアニメの話をしていた。


篤兄のおうちに遊びにいった時は、ジャガイモを乱切りにして篤兄のお母さんがよくフライドポテトを作ってくれたのを思い出す。美味しかったなぁ。小学校にしては篤兄のガタイが良かったのは、芋をよく食べていたからかな。二人で桑の実をたくさん採って、篤兄のお母さんに渡してジャムを作ってもらったね。


そんな篤兄が中学生に足を踏み込んで、中学校が反対の方向で。
私は一人で下校になった。

ばったり、学ラン姿の篤兄と会ったこともあったけど、
私は、すっかり大人の風貌をしている篤兄にたじろいでしまって、
篤兄はおそらく思春期の始まりだったんだろう。

挨拶すら上手にできなくて、お互い方位磁石の同じ極のように離れていく。
家に戻って、ベッドに横になるとさっき会った篤兄を思い出す。

身長はぐんぐん伸びて、180cmいっただろうか。
男らしい精悍なフェイスライン。

大人の男性みたいで、ドキドキした。

篤兄は、うちの母情報だとアメフト部のキャプテンをしているらしい。
そりゃあ、驚くほどガタイが良くなるはずだ。
自分の全身を鏡でみる。
スカートからでる足は子どもの健脚で、ちっとも色気がなかった。
そりゃそうだ。子どもだもの…と今だったら思える。

まぁ、つまりは篤兄は私を置いてドンドン大人の世界に羽ばたいてしまった。
篤兄母から、「篤ったら、バレンタインチョコたんまりもらってきて。」ときいた時は、さらに距離を感じた。

私も、親離れならぬ。篤兄離れする時がきたのである。

なのに、うちの母は何を気遣ってか。
「あんた。今年篤くんにチョコあげてなかったでしょ。お母さんあんたからって渡しといたから。」
とニヘラ笑いをしながら驚愕の事実をいった。


そしたら、篤兄はわざわざ私の家に白い手提げ袋を持ってきた。
「これ、オフクロがって。」と白い手提げ袋を強引に渡してくる。
変声期がきているのだろう、出ずらそうな低い声で。

でた。オフクロ同士の応酬である。


それから、久しぶりに二人で歩いて公園にいく。
隣に立つ姿は以前とはまったく別人で、でも顔をみると篤兄でなんだか不思議な気分だった。
何度も二人で歩いた道を歩いているのに。


夕焼け空に金木犀の秋の香りが漂う。

ブランコに座って、篤兄は手を組む。

「まだ、本決定ではないけど。俺、寮にはいることになる。」
篤兄からでた高校名は私の知らないもので。

――どうやら。篤兄は本当に遠くに旅立ってしまうらしい。
ということだけは分かった。


「そっか。」
日が暮れて、辺りが暗くなってきたところでブランコから降り帰路を辿る。


じゃあまた。


家に帰ったら母が、
「あつしくん、一人暮らしするみたいね。」と話してくる。
私は、うん。そう。と適当に返事する。



最後にあったのは、
篤兄が引っ越すためのダンボールを車に運び入れている時、

「あ、あつ兄!」
咄嗟に呼び止めてしまったけど、次の言葉がつなげなくて。
何秒程、静止したのだろうか。
真剣にこちらを見つめるあつ兄の眼差しに「いってらっしゃい。」と小さくつぶやいた。
篤兄はぶっきらぼうに「いってきます。」と返す。





時間はどんどん進んでいく。変わらないものなんてない。


篤兄と小さな竹の子を掘った竹やぶの上には新築の物件がたっているし。
ところどころ湧き水がでてブクブク水溜りがあった場所は大きな道路になっている。
私たちがよく蛍をとりにいったあぜ道では、蛍祭りが行われなくなり、遺跡が発見されたせいで1/2程度に山が減った。



私も、外でどろんこになって遊ぶようではなくなって。
蚊に刺されることも減っていった。

そして、制服をきて、また違う制服をきて。それを脱ぐ。





高校を卒業して。

――鏡でみる自分は少しは大人になってみえた。


そんな私は、慣れた田舎を離れ都内の大学に通うためダンボールを積み込む。
私を見送る祖父母は涙を流して、母は「すぐ帰ってくるのに何泣いているのよ。」と声を上擦らせた。

大学生活は思ったより気疲れしないものであった。
幸運なことに、良い友人とバイト先に恵まれ――


「もう、ちゃんと聞いてる?友香っていまだ男性とお付き合いしたことないんでしょ?もったいないよ。干物になっちゃうよ。」
私からすると恋愛のプロの朱美ちゃんが捲くし立てる。
「だから、今日は合コンいくよ!ただ見ているだけでも勉強になるんだからね。」
と、言い切られてしまった。

運が悪く、その日はバイトがなかったので、朱美ちゃんに私は連行された。
少しお値段の高いおしゃれな洋服屋さんで、色鮮やかに描かれた花のモチーフが印象的な大人向けのワンピースを購入した。
朱美ちゃんは「大人攻めワンピ!」とはしゃいでいた。


今日の合コンは少し大人のメンズを呼びましたと、朱美ちゃんが可愛くウィンクをして親指をたてる。

初めての合コンなのに、ドキドキしない自分はやはり干物なのか。
そうメンツをみて思った。なんだか自分以外みんなニヤついている感じ。
覚えたてのお酒をもっと覚えようと知らない名前のお酒を注文する。


「悪い。遅れた。」




スーツで入ってきたサラリーマン。
その人は――




見間違えじゃないだろうか。
と再び、その仕立ての良いスーツをきたガタイの良い男性をみやる。
顔の造形から、少し硬そうな黒い髪まで。


――やっぱり、篤兄だ。



「なんだ。遅かったなぁ。」

「すまん。クライエントに離してもらえなくて…。」

「この遅刻してきた男前が、高城篤。」

「高城でも、篤でもどちらでも良いから呼んでね。」
と申し訳なさそうに座り、ビールのハーフ&ハーフを頼む。
そして、ドリンクメニューから目線を上げ、思いっきし目があう。




「お、おま。」

そう驚いた顔で篤兄が思わず声を上げる。

社会勉強で訪れたこの場で、まさか篤兄と会うなんて。


ここで、知り合いなのがバレると面倒そうとお互い思ったのか押し黙る。
周りの話に適当に相槌をうちながら篤兄を見やる。

大人っぽくなったなぁ。
これは、スーツだからなのか。
落ち着いた大人っぽさに爽やかさが混在している。

こんな所にきているくらいだから、彼女はいないのかなぁ。

ビールをグビグビ飲んでいるのど仏を思わずみやる。
そしたら、また目が合った。



なんだか、全身がカーっと熱くなってしまって、
私は「酔ってきた」みたいと言うと篤兄の隣に座る男性が


「俺送ろうか?車できたし。」と手をあげる。
大丈夫。夏だから暑いのかな、と私が返答すると



「――俺が送る。」
と篤兄の重低音の声が響く。
隣の男性は、でも篤、車じゃないじゃんと言った。


その時、空気が大きく揺れ、緊張感が半径20mを駆け巡った。



「俺が送るから。」
そう篤兄がなお一層低い声で話すと、楽しい会はそれでお開きになった。





篤兄は私の手首を握って、地下鉄まで歩く。

「ちょっと、早いよ。もう、早いって!」
私は、無言でスタスタ歩く篤兄の手を振りほどいた。
足のコンパスが違いすぎることは置いても、
慣れないヒールを履いているせいで、靴擦れがひどい。
そう告げると、篤兄はスマートフォンを出し、どこかに電話をした。

ものの数分でタクシーがきて、私は静かに連行される。
駅から5分の割り合い素敵なマンションの前に二人で降り立つ。


「東京にきてたんだ。」

「うん。○○大学に通ってる。」

「そうか。」

そういって沈黙が訪れて。


ヘクションっと私がくしゃみをすると、スーツを肩からかけてくれ
とりあえず、話そうっとマンションまで連行される。



「で、なんであんな所にきてたんだ。」
そう、対面式に座らされて私は説教されている。

「あんな所って、篤兄もきていたじゃない。」
そう言い返すと、俺は男だからいいと返される。

「しかも、そんな丈の短いワンピースきて。危ないだろ。」
そういって、私のスカートをちらりと見る。

やば。足広げていたよ。
私は慌てて足を閉じると、心なしか篤兄の顔が赤い。
パンツ見られちゃったかな…。


とりあえず、これを履けとスウェットをぽんと投げてくる。
それを大人しく履いて
「いえいえ、昔だってパンツがみえるぐらいの丈のスカートはいていたじゃない。」
と強気に言い返す。

今のところ勝率、私7対篤兄3だろうか。
「それは子どもだったからだろう。」
そう篤兄が呟く。



――変わんないもん。
と私が不貞腐れて言うと、確かにお転婆なのは変わっていないなと笑った。

「そうよ。篤兄だって。夜な夜な怪気炎をあげているんでしょ?」

「ふん。お前だって、これから怪気炎をあげようとしていただろう。」
ワイシャツをめくった腕からは血管が浮かんでいる。

「違うよ。私は行きたくなかったけど、社会勉強のために…。」

「ああやって男を侍らすのが社会の勉強になると?」

久々に会えたのに、篤兄はいじわるだ。
今までこんなにいじわるだったことはあっただろうか。
ホロホロ涙がでると、篤兄はこれまでなかったぐらいオロオロしだした。

「…びどい…よぉ、久々にあえでうれしかっだのに……。」
そういって、私はバッグをとり、玄関先までいく。

本当散々である。
久しぶりに好きな人にあったら、コレ。

涙と嗚咽がとまらなくて苦しい。私は玄関のドアをあけて外に出ようとした。
そうすると、後ろから強く抱きしめられた。

熱い。
熱いなって思った。
篤兄のでかい体が私を抱きしめる。

「違う。大事だから…心配だった。」
そう呟かれて、私は再びダイニングテーブルの前に座らされる。

そこで何を間違ってか前と状況は同じになる。
何故か、男はいかに危ないかの教育をされた。

「そんな、男にホイホイ着いていかないよ…。」
「でも、こうして俺の部屋にきてるじゃないか。」

「そんなの!篤兄が連れてきたからじゃない。」
「俺だって、男だぞ。牙を向くかもしれないし。」

嘘。牙なんて向かないよ。
と、顔を上げてみると、そこには


肉食獣の目をした


「なぁ。俺、今どれだけ我慢していると思う?」




「とても、そのワンピース似合ってる。久々にあって、綺麗になってびっくりした。」

近所のお兄さんでも、
世話係でもない。

私を見つめる視線は、もっと甘美で――

力強い腕が優しく私を押し倒す。



「俺のこと軽蔑するか?」
ちょっと疲れた感じの目元が色っぽい。
篤兄はネクタイを緩めながら、ゆっくりと近づいてくる。
ちらちら覗く鎖骨にどきっとした。



「なぁ、ずっと昔から俺はこういう目でしか…お前をみれていない。」



そうふわっと抱きしめられると、
ドキドキして、緊張して、なんだか安心して。

「なぁ、抱いていいか。」
と言われた時、私は小さく頷いた。



どうやら篤兄は体力がすごくあるらしい。
お酒を飲んでいるというのに。

ベッドに私を軽々お姫様だっこで連れて行く。
そしてあっと言う間に、履かせたスウェットも、ワンピースも脱がせられてしまう。
その動作だけで、くすぐったくて身をよじる。

「私だけじゃヤダ。」
そういうと、篤兄はYシャツを脱ぐ。
立派な均整のとれた筋肉質な体があらわになる。


そして、お互い裸になったわけだけど、なんだか恥ずかしくて私はシーツで体を隠す。

「こら、隠さない。」
とシーツをはがされる。


無言でじろじろみないでくれ。
全部、全部みられている。


「なぁ。俺のこと好き?」
そう問いかけられる。
私は好きと聞こえるか聞こえないかの小さな声で返す。

「…やっば…。」
篤兄は何かをぶつぶつ呟きながら、

「なぁ、友香って今何年生?」

「も、もうすぐ四年生だけど。」
そっか。あと一年で卒業かと一人で合点している。


「俺が友香にしたいこと全部していい?」
そう首筋にキスを繰り返しながら、耳元で囁かれる。
私は、熱くかかる少しアルコールの混じった息に反応して、コクンと頷くと、篤兄はニヤリと笑った。


ここも、ここも大人になったね。
そうやって、胸、お尻、ありとあらゆる曲線をなぞられる。

今からここに、俺のをいれるよ?っと、まるで悪戯をするように言われる。
そんな重要な場面なのに、昔花火を一緒にしてきたとき、お互いの花火をかけ合わせてみようと誘われた時に似ていると思った。


二人とも大人になった。
だけど、変わっていない。

それに気付いて私は嬉しくなって、うん!と頷く。




「なぁ、友香。自分でここ慰めてた?ちょっと俺、こんなに狭いとすぐいっちゃいそう」
そう濡れた蜜口に一物を少しいれた所で、篤兄は荒く息をはく。

「え、慰めたことない。」

「え、慰めたことないの?一回も?」
何か、おかしいのだろうか。
だって、男の人はマスターベージョンするけど、女の人は何もでないじゃない。
と言い返すと、ずるりと奥に篤兄の重量をもった一物が入る。

私はその深さに、呼吸をするのを忘れた。

篤兄は
「じゃぁ、友香のここは、俺が本当に本当初めてなんだね。」
と満足げに笑ってる。

私は、一物が膣壁を圧迫するのに返事もまともにできなくて、苦しげに喘ぐことしかできなかった。
やがて、行き止まりまで一物がはいると、そのまま篤兄は停止した。

「…気持ちいい。」

初めての私を労わってか。
自分の快感のためか。
篤兄は腰をそのまま密着させ動かず、だけど私の胸を甘く噛む。

私は最初は痛かったけど、なんだか奥の奥まで篤兄の一物が入っているという事実に変に興奮してしまい、胸を柔く噛まれては、やっと馴染んできた篤兄の一物を締め上げてしまう。


「これだけで、逝きそう。」

そういって、膣が大きさになれたのを確認して腰を動かす。

「んっあ・・ああっ・・・。」
腰の動きに応じて、自然と出てくるヤラシイ声を抑えられない。
逃げそうになる腰を、篤兄はしっかりと押さえ込む。

知らなかった。
こんな、性行為が――

口腔内の奥まで、
お腹の奥まで、

篤兄と深くつながってる。


――愛してるっ!!
そういって、篤兄は出し入れではなく何度も奥を執拗について、


私の一番奥で爆せた。

これが欲しかったのっと一生懸命それを受け入れ、体をビクビクさせてしまう私に気付いて、
「逝ったの?」とがっしりと抱きしめられ囁かれる。

その後も大丈夫そうだねと何回も執拗に愛撫され、また何度も深く繋がった。

私のまたから漏れる白い精液をすくっては、
「これがなんだか分かる?」
と羞恥プレイをされてしまう。

「実家に帰ったら、友香はこっちの大学にきているというし。会えなくて寂しかった。」
と少ししおらしく言葉をつむぐ。

「今度あって――お互い変わってなかったら告白したいって。」
全然変わってないしと笑って、また息を吹き返した一物を自分の愛液だけではなく、重く白く濡れた蜜口に押し付けられる。
何度も開いた花弁は閉じることもできず、その容量を飲み込み、愛する篤兄のすべてを受け入れるのであった。



なんだか、お腹が重たいな。
と思って下腹部をさすりながら篤兄に話してみたら、

「まさか!」
と嬉しそうな篤兄とドラッグストアにいき妊娠検査薬を購入した。

そして、篤兄のマンションで調べてみると、青い線。


そうして、篤兄と一緒に里帰りという名ばかりの妊娠の報告、順番を間違えすみません。入籍を許して下さいと私の親に言いにいく。

そんな私の指には、エタニティのダイヤモンドがキラキラひかる婚約指輪。
目の前の両親は心なしかニヤニヤ笑ってる。

「友香と、篤くんがねぇ~。」
もうからかう気マンマン。

お父さんなんて、
「篤くんとはいえ、順番は守るべき。」
とだらけた顔を、厳しそうな顔にシフトして父親らしい発言をしようと模索してみている。


からかう気100%の親と結納と結婚式の話をした後、その後は宴会だった。
篤くん(兄っていうのは背徳感あるから止めてといわれました。)の両親もひょっとこ踊りを踊っている。
両家両親ともベロベロで酷い有様である。
畳には空のビール瓶が何本も落ちている。


そして、つわりがひどく、自分の部屋に下がると、心配そうに篤くんは着いてくる。


優しくて。
昔から私と一緒にいてくれる。


「篤くんは、いつから私のこと好きだったの?」
そうおなかを優しく撫でてくれる篤兄に問いかける。


「黙秘します。」

エエー。
なんで。こんな。子どもまでお腹にいるのに。
結婚して夫婦になるのに。

「いいじゃん。教えてよー。」
そう私が駄々をこねると――


「いや、バラしちゃうと犯罪者だと思われるので、黙秘します。」

そう、チャーミングに笑った。


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