悪党の食卓。 --王妃の実家は、たぶん黒幕説。--

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第二の目的 in王宮内 ○アリス○

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計画実行
王宮・王妃殿下に謁見後
引き続きアリス視点



 王宮内。
 
 とある部屋まで移動する。


「貴女は!?…ジリアン・カルフル伯爵令嬢では、御座いませんよね!?」


「…ええ。アリス・ベルトハイドですわ。ご機嫌よう。アレクシス殿下にお会いしに参りましたの。本日この時間に、お会いする約束を頂いておりますわ」


 笑顔をのせて、言ってのける。


「貴女がなぜ!?何をしにこちらにいらしたのですか!?この時間はジリアン令嬢の…まさか!!別の令嬢の名を使い、王族を謀るなんて、これは立派な偽証罪ですよ!!」


 と、侍従が慌てた様に述べてくる。



 そう。


 私は、アレクシス殿下に会う為に、アレクシス殿下の執務室を訪問していた。


 第一王子派閥の適当な令嬢の名前を借りたものの、正規の手順を踏んで約束を取り付け、約束の時間に訪問したのだ。



 先程大騒ぎしていた、侍従の彼が言うように、別の貴族令嬢の名前を借りて、王族を欺く行為は、立派な偽証罪だ。
 

 当然そんな事は、わかった上でやっている。


 敵対派閥であるベルトハイドの名前を使い、殿下に約束を取り付けて会おうとすれば、大いに警戒されてしまうだろう。私なら警戒する。


 そのせいで、アレクシス殿下に会えない可能性が高まったり、会えたとしても不特定多数に囲まれた状況を、整えられてしまうかもしれない。

 今回の目的を達成する為に、そんな状況は回避したかった。


 因みに令嬢は、名前しか知らない。


 しかし、侍従の反応から、私とは容姿が全く似てなかったのか、殿下とよく会う顔の知れた人物だったのかもしれない。


 残念。


 もし顔が似ていたり、親交が無いのなら、そのまま通れたかもしれないのに…。


 バレてしまったものは仕方が無いので、目の前で騒ぐ侍従をやり過ごすため、目の前の状況に集中する。



「まぁ!犯罪だなんて!
 何か手違いがあったのかしら…不思議ねぇ?

 …けれど私のせいで、ほんの少しだけ、驚かせてしまったかしら…ごめんあそばせ?

 …それで、…アレクシス殿下にお会いしたくて、正規の手順で約束を取り付けて、約束の時間にお伺いしたのですけれど…本日は、お会い頂けるのかしら?

 …もしも、急な体調不良に襲われるご予定でしたら、お早めにお教えくださいませ?」



 と、爽やかに自分の言いたい事だけ述べて、有無を言わせない様な、朗らかな笑みを浮かべる。



「…!?無理に決まっているでしょ!?何を考えているのですか!?即刻お帰りくださいませ!!」


 アレクシス殿下の侍従と思しき彼は、声を荒げ顔を真っ赤にして、帰れと言ってくる。


 きっと正義感が強く、忠誠心の熱い、良い侍従なのだろう…。


 だが、せっかく来たのだ。


 ここで帰るわけがない。


「左様ですか。仕方がありませんわね…。
 殿下にお会いしたくて来たのに…残念ですわ。

 …けれど、よろしいのかしら?

 仮にも公爵令嬢を、主人に確認もせずに、独断で突き返した…とあれば、確実に責任問題になりますわ。

 貴方の為にも、確認だけはしておいた方が、よろしいのではなくて?」


 顔を傾けて、無邪気な笑顔で問う。


「…そ、それは…」

 動揺する侍従に、更に追い込みをかける。



「私はお会い出来なくても構いませんわ。
 もちろん残念ではありますけれど…。

 アレクシス殿下に、正式な手順で約束を取り付けたにも関わらず、無碍に追い返された。

 …という、確かな事実を手に入れる事が出来ますもの。

 その確かな事実を元に、被害者面して誰かに泣きついて、殿下を責め立てる予定ですから…あまり問題はないのだけれど…」



「…でも、もしかしたら、貴方が責められてしまうかもしれませんわね…私のせいで…。

 私は予定を変えるつもりはありませんし…困まりましたわ。

 …本当にお気の毒だわ…。下手したら、職や爵位を失ってしまうかもしれませんもの…私のせいで…」


 顔に手を当て、相手を慮り、思案するような表情を整える。


 そして、しばらく悩んだ素振りをしてから、手を合わせ閃いたかのような仕草を挟み、無邪気に述べる。



「…そうだわ!

 折角の機会ですもの、一緒に楽しみましょ?

 貴方は、私が、誰に、どうやって泣きつくのか、そして、その結果がどうなるのか…。

 存分に予想して、お楽しみくださいませ。
 
 私は貴方に楽しみを提供して、
 貴方は私が提供した状況を楽しむ。

 そうなれば、楽しめた貴方が、私を責める理由は、なくなりますわ。ね、そうでしょ?

 それが良いわぁ!そうしましょう?」



 そう告げて、にこやかに微笑む。

 ポカンと呆けている侍従を前に、更に畳かける。


「泣きつくのは誰がいいかしら?
 お母様?お父様?伯母様?それとも伯父様かしら?
 それに泣きつく理由も重要ね。
 楽しみだわぁ!どんなことが起こるのかしら?」
 


「っ!!!…ぁあ!もー!分かりましたよ!お待ちくださいませ!確認して参ります。期待せずにお待ちくださいませ!」


 そう言って、侍従の彼は、プリプリと怒りながら、主人の元へと確認に向かった。



 …可愛い人。
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