もう遅い、勇者ども。万能支援職レオンは王国の柱となる

まっちゃ

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第一部:追放と再生編

第2話 追放の朝 ― 崩れた信頼

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冷たい朝の空気が、まだ夜明け前の王都を包んでいた。
宿の広間には、重い沈黙が落ちている。

「……レオン、君をパーティから外す」

勇者アレンのその言葉に、レオンは一瞬、何を言われたのか理解できなかった。
焚き火の音が弾け、静まり返った空気に小さく響く。

「……冗談だろ、アレン?」
「冗談じゃないさ。最近の君は戦いで役に立っていない。支援魔法ばかりで、敵を倒す力もない。俺たちには“前に進む力”が必要なんだ」

その横で、僧侶のリリアが目をそらした。
盗賊のカイルは鼻で笑い、魔術師のセリナは無言で本を閉じる。

「……そうか」
レオンは短く息を吐いた。
冷静に、淡々と。心の奥で何かが静かに崩れていくのを感じながら。

「今まで支えてきたのは俺だ。アレン、お前たちは気づいていない。俺の《全域強化》がなければ、ドラゴンの巣で全滅してたんだぞ」

アレンは肩をすくめた。
「支援なんて誰にでもできる。お前がいなくても、もうやっていける」

その瞬間、リリアが小さく呟いた。
「……ありがとう、レオン。あなたの支援には助けられたわ。でも、もう……」

もう、という言葉の先はなかった。
それだけで十分だった。

レオンは装備を外し、静かに立ち上がる。
「わかった。じゃあ俺は行くよ。……ただ一つ忠告しておく」

振り返ったその目は、氷のように冷たかった。
「この先、お前たちが何を失っても——俺はもう戻らない」

宿の扉が開き、朝の光が差し込む。
その背中を誰も引き止めなかった。

外に出た瞬間、レオンは初めて小さく笑った。
「……“誰にでもできる”ね。じゃあ、見せてやるさ」

遠く、王都の中心では王の使者が動き始めていた。
“支援術の達人”を探しているという噂が、ちょうどその頃、王城に届いていた——。
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