もう遅い、勇者ども。万能支援職レオンは王国の柱となる

まっちゃ

文字の大きさ
5 / 50
第一部:追放と再生編

第5話 「勇者の失墜 ― 支援なき勇者パーティの末路」

しおりを挟む
黒き森、ダル=ヴァイン。
魔王軍の拠点に通じる危険地帯として知られるその地に、勇者アレンの一行がいた。

「行くぞ、魔族どもを一掃する!」
アレンは勇ましく叫び、剣を抜いた。
だが――

背後の僧侶が青ざめた顔で叫ぶ。
「ま、待ってください! 体力の回復が追いつきません!」

「うるさい! お前の治癒が遅いんだ!」

苛立ちを隠せないアレン。
魔法使いのリナは呪文を詠唱しようとするが、
その魔力の流れは乱れていて、詠唱が途中で途切れた。

「くっ……集中できない……何でだ……!?」

そう、彼らはまだ気づいていなかった。
かつて背後で完璧に魔力の循環を整え、
回復、攻撃、守備すべてのリズムを“支えていた”者が、もういないということに。



「来るぞ――ッ!」

魔王軍の尖兵、黒鎧のオーガが突進する。
アレンは防御の構えを取るが、その剣筋は重く鈍い。

「ぐっ……!」
一撃で地面に叩きつけられる。

「アレン!」
ミリアが回復魔法を放つが、光は薄く、傷は塞がらない。

「なんで……回復がこんなに遅いの……?」

「支援がないからだよ」
リナが震える声で呟いた。
「レオンがいた時は、こんなこと一度もなかった……」

「黙れ!」
アレンは怒鳴る。だが、怒鳴るほどに空虚だった。

魔族たちは容赦なく迫る。
勇者たちは隊形を崩し、次々と地面に倒れていった。

「撤退だ! 撤退しろ!」

叫びながら逃げるアレン。
勇者の背中は泥にまみれ、プライドは地に落ちていた。



数時間後。
廃村の一角に身を潜めたアレンたちは、疲弊しきっていた。
ミリアは膝の上で手を組み、静かに祈る。

「……ねぇ、アレン。私たち、間違ってたんじゃない?」

「は?」

「レオンを追放したの、あれは……嫉妬だったんじゃないの?」

アレンは答えられなかった。
あの時、レオンが支援で全員の力を底上げし、
自分たちがどんな魔族にも勝てた。

それが気に入らなかった。
勇者が一番じゃなくなるのが怖かった。

「……バカなことを、した……」

リナが泣きながら呟いたその時、
外の見張りが悲鳴を上げた。

「ま、魔王軍が追ってきたぞ――!!」



一方その頃、
王都ではレオンが新たな任務を受けていた。

「北方の森で勇者アレン一行が消息を絶ったとの報告がありました」

報告を受けたレオンは、静かに目を閉じた。
「……そうか」

王が問う。
「救援を出すか?」

レオンはわずかに沈黙し、
やがて冷たい声で答えた。

「必要ありません。――彼らはもう、俺の仲間ではありませんから」

その言葉は、冷徹でありながら、どこか哀しげでもあった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

黒幕の私が転生したら、なぜか勇者パーティ全員に求婚されてます

タマ マコト
ファンタジー
前世で世界を裏から操った黒幕イリスは、死の間際に「次は誰かに必要と言われたい」と願い、村娘リュミエとして転生する。 静かに暮らしたいだけの彼女の前に、勇者アレンたち四人が現れ、出会った瞬間から“理由のない確信”で彼女を特別視する。 リュミエは自覚のないまま戦場級の判断力を発揮し、勇者たちを救ってしまうが、その才能は前世の黒幕〈影蜘蛛〉と同じものだった。 優しさで満ちた日常と、悪夢のように蘇る冷酷な記憶。 “ただの村娘”と“世界を操った黒幕”の狭間で、リュミエの心が揺れ始める――。

異世界ハズレモノ英雄譚〜無能ステータスと言われた俺が、ざまぁ見せつけながらのし上がっていくってよ!〜

mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
【週三日(月・水・金)投稿 基本12:00〜14:00】 異世界にクラスメートと共に召喚された瑛二。 『ハズレモノ』という聞いたこともない称号を得るが、その低スペックなステータスを見て、皆からハズレ称号とバカにされ、それどころか邪魔者扱いされ殺されそうに⋯⋯。 しかし、実は『超チートな称号』であることがわかった瑛二は、そこから自分をバカにした者や殺そうとした者に対して、圧倒的な力を隠しつつ、ざまぁを展開していく。 そして、そのざまぁは図らずも人類の命運を握るまでのものへと発展していくことに⋯⋯。

神スキル【絶対育成】で追放令嬢を餌付けしたら国ができた

黒崎隼人
ファンタジー
過労死した植物研究者が転生したのは、貧しい開拓村の少年アランだった。彼に与えられたのは、あらゆる植物を意のままに操る神スキル【絶対育成】だった。 そんな彼の元に、ある日、王都から追放されてきた「悪役令嬢」セラフィーナがやってくる。 「私があなたの知識となり、盾となりましょう。その代わり、この村を豊かにする力を貸してください」 前世の知識とチートスキルを持つ少年と、気高く理知的な元公爵令嬢。 二人が手を取り合った時、飢えた辺境の村は、やがて世界が羨む豊かで平和な楽園へと姿を変えていく。 辺境から始まる、農業革命ファンタジー&国家創成譚が、ここに開幕する。

【完結】魅了の魔法にかけられて全てを失った俺は、最強の魔法剣士になり時を巻き戻す

金峯蓮華
ファンタジー
戦に負け、国が滅び、俺ひとりだけ生き残った。愛する女を失い、俺は死に場所を求め、傭兵となり各地を漂っていた。そんな時、ある男に声をかけられた。 「よぉ、にいちゃん。お前、魅了魔法がかかってるぜ。それも強烈に強いヤツだ。解いてやろうか?」 魅了魔法? なんだそれは? その男との出会いが俺の人生を変えた。俺は時間をもどし、未来を変える。 R15は死のシーンがあるための保険です。 独自の異世界の物語です。

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

商人でいこう!

八神
ファンタジー
「ようこそ。異世界『バルガルド』へ」

処理中です...