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第一部:追放と再生編
第5話 「勇者の失墜 ― 支援なき勇者パーティの末路」
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黒き森、ダル=ヴァイン。
魔王軍の拠点に通じる危険地帯として知られるその地に、勇者アレンの一行がいた。
「行くぞ、魔族どもを一掃する!」
アレンは勇ましく叫び、剣を抜いた。
だが――
背後の僧侶が青ざめた顔で叫ぶ。
「ま、待ってください! 体力の回復が追いつきません!」
「うるさい! お前の治癒が遅いんだ!」
苛立ちを隠せないアレン。
魔法使いのリナは呪文を詠唱しようとするが、
その魔力の流れは乱れていて、詠唱が途中で途切れた。
「くっ……集中できない……何でだ……!?」
そう、彼らはまだ気づいていなかった。
かつて背後で完璧に魔力の循環を整え、
回復、攻撃、守備すべてのリズムを“支えていた”者が、もういないということに。
⸻
「来るぞ――ッ!」
魔王軍の尖兵、黒鎧のオーガが突進する。
アレンは防御の構えを取るが、その剣筋は重く鈍い。
「ぐっ……!」
一撃で地面に叩きつけられる。
「アレン!」
ミリアが回復魔法を放つが、光は薄く、傷は塞がらない。
「なんで……回復がこんなに遅いの……?」
「支援がないからだよ」
リナが震える声で呟いた。
「レオンがいた時は、こんなこと一度もなかった……」
「黙れ!」
アレンは怒鳴る。だが、怒鳴るほどに空虚だった。
魔族たちは容赦なく迫る。
勇者たちは隊形を崩し、次々と地面に倒れていった。
「撤退だ! 撤退しろ!」
叫びながら逃げるアレン。
勇者の背中は泥にまみれ、プライドは地に落ちていた。
⸻
数時間後。
廃村の一角に身を潜めたアレンたちは、疲弊しきっていた。
ミリアは膝の上で手を組み、静かに祈る。
「……ねぇ、アレン。私たち、間違ってたんじゃない?」
「は?」
「レオンを追放したの、あれは……嫉妬だったんじゃないの?」
アレンは答えられなかった。
あの時、レオンが支援で全員の力を底上げし、
自分たちがどんな魔族にも勝てた。
それが気に入らなかった。
勇者が一番じゃなくなるのが怖かった。
「……バカなことを、した……」
リナが泣きながら呟いたその時、
外の見張りが悲鳴を上げた。
「ま、魔王軍が追ってきたぞ――!!」
⸻
一方その頃、
王都ではレオンが新たな任務を受けていた。
「北方の森で勇者アレン一行が消息を絶ったとの報告がありました」
報告を受けたレオンは、静かに目を閉じた。
「……そうか」
王が問う。
「救援を出すか?」
レオンはわずかに沈黙し、
やがて冷たい声で答えた。
「必要ありません。――彼らはもう、俺の仲間ではありませんから」
その言葉は、冷徹でありながら、どこか哀しげでもあった。
魔王軍の拠点に通じる危険地帯として知られるその地に、勇者アレンの一行がいた。
「行くぞ、魔族どもを一掃する!」
アレンは勇ましく叫び、剣を抜いた。
だが――
背後の僧侶が青ざめた顔で叫ぶ。
「ま、待ってください! 体力の回復が追いつきません!」
「うるさい! お前の治癒が遅いんだ!」
苛立ちを隠せないアレン。
魔法使いのリナは呪文を詠唱しようとするが、
その魔力の流れは乱れていて、詠唱が途中で途切れた。
「くっ……集中できない……何でだ……!?」
そう、彼らはまだ気づいていなかった。
かつて背後で完璧に魔力の循環を整え、
回復、攻撃、守備すべてのリズムを“支えていた”者が、もういないということに。
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「来るぞ――ッ!」
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アレンは防御の構えを取るが、その剣筋は重く鈍い。
「ぐっ……!」
一撃で地面に叩きつけられる。
「アレン!」
ミリアが回復魔法を放つが、光は薄く、傷は塞がらない。
「なんで……回復がこんなに遅いの……?」
「支援がないからだよ」
リナが震える声で呟いた。
「レオンがいた時は、こんなこと一度もなかった……」
「黙れ!」
アレンは怒鳴る。だが、怒鳴るほどに空虚だった。
魔族たちは容赦なく迫る。
勇者たちは隊形を崩し、次々と地面に倒れていった。
「撤退だ! 撤退しろ!」
叫びながら逃げるアレン。
勇者の背中は泥にまみれ、プライドは地に落ちていた。
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数時間後。
廃村の一角に身を潜めたアレンたちは、疲弊しきっていた。
ミリアは膝の上で手を組み、静かに祈る。
「……ねぇ、アレン。私たち、間違ってたんじゃない?」
「は?」
「レオンを追放したの、あれは……嫉妬だったんじゃないの?」
アレンは答えられなかった。
あの時、レオンが支援で全員の力を底上げし、
自分たちがどんな魔族にも勝てた。
それが気に入らなかった。
勇者が一番じゃなくなるのが怖かった。
「……バカなことを、した……」
リナが泣きながら呟いたその時、
外の見張りが悲鳴を上げた。
「ま、魔王軍が追ってきたぞ――!!」
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一方その頃、
王都ではレオンが新たな任務を受けていた。
「北方の森で勇者アレン一行が消息を絶ったとの報告がありました」
報告を受けたレオンは、静かに目を閉じた。
「……そうか」
王が問う。
「救援を出すか?」
レオンはわずかに沈黙し、
やがて冷たい声で答えた。
「必要ありません。――彼らはもう、俺の仲間ではありませんから」
その言葉は、冷徹でありながら、どこか哀しげでもあった。
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