もう遅い、勇者ども。万能支援職レオンは王国の柱となる

まっちゃ

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第一部:追放と再生編

第22話 王国動乱──『支援王』レオン、政に立つ

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 勇者アレンとその仲間たちが灰と化したその翌日。
 王国は、かつてないほどの混乱に包まれていた。

 「勇者が……死んだだと……!?」
 「魔王軍が再び進軍を!?」
 「誰がこの国を守るというのだ!」

 城中に怒号と悲鳴が飛び交い、貴族たちは右往左往していた。
 だが、その混沌の中でただ一人、静かに立つ男がいた。
 ――レオン。

 王の間。
 黄金の絨毯の上に立つ彼の姿は、まるで神殿の守護者のようだった。

 「陛下。勇者アレンの死を受け、今こそこの国の“本当の再建”を行うべきです」

 王は沈痛な面持ちで頷いた。
 「レオン……お前がいなければ、我らはとうに滅んでいた。
  もはや、お前の言葉こそが王国の支えだ」

 その瞬間、玉座の間にいたすべての文官と騎士たちが、ざわめいた。
 支援職だった男が、今や王政の中心に立とうとしているのだ。

 しかし、当然ながら反発もあった。
 「陛下! この者は“追放者”にございます! 過去に勇者から見捨てられた――」
 「黙れ」
 レオンの低い声が、空気を切り裂いた。

 魔力がほんの少し漏れるだけで、重臣たちは膝をつく。
 「お前たちが“勇者の判断”に盲従した結果、国は崩壊しかけた。
  その責任を取る覚悟があるのか?」

 誰も答えなかった。
 沈黙。冷たい視線。
 レオンの瞳は、まるで氷の刃のように光っていた。

 「俺は復讐のために立ったわけじゃない。
  だが――“無能な権力者”を放置するほど、もう甘くはない」

 王がゆっくりと立ち上がり、宣言する。
 「これより、レオン=アルディアを王国評議会の筆頭補佐官とする!」

 その瞬間、場内に緊張が走る。
 誰も逆らえない。
 なぜなら、彼こそが“唯一魔王軍を退けた男”だからだ。

 *

 それから数日。
 レオンは怒涛の勢いで国の改革を始めた。

 第一に――腐敗した貴族の粛清。
 第二に――軍の再編と、支援術士の育成。
 第三に――“勇者制度”の完全廃止。

 「勇者がいなければ国は守れぬ、だと? 笑わせるな。
  この国は“支え合う者”によって守られるのだ」

 その言葉は瞬く間に国中に広まり、民たちは歓喜した。
 “支援王レオン”――そう呼ばれるようになったのは、この頃からだ。

 しかし、全てが順調というわけではなかった。
 影の中では、失脚した貴族たちが密かに牙を研いでいたのだ。

 「レオンとかいう成り上がりめ……!」
 「支援職風情が我らに命令するなど許されぬ!」

 その夜、王都の裏路地で暗殺者たちが動いた。
 黒い外套の男が、短剣を手に低く呟く。
 「依頼は“支援王”の首だ。報酬は金貨五千」

 だが――彼らの前に現れたのは、闇夜の守護者。
 レオン直属の影の部隊《ヴェール》。

 「“支援王”に刃を向けた時点で、貴様らの命は支援対象外だ」

 数秒後、裏路地に立っていたのはレオンの影兵だけだった。
 暗殺者たちは跡形もなく消え、ただ冷たい風だけが吹き抜けた。

 *

 翌朝。
 王国の広場では、レオンが新たな政策を発表していた。

 「これより、国のすべての魔法体系を“共助”の理に統一する。
  戦う者も、癒す者も、支える者も、皆が同じ価値を持つ世界に」

 民衆が歓声を上げる。
 「レオン様、万歳!」
 「これぞ本物の王の器だ!」

 その声を背に、レオンはふと空を見上げた。
 風が穏やかに吹き抜ける。
 どこか遠くで、アレンたちが笑っていた日々が、かすかに脳裏をよぎった。

 (……お前らが壊したものを、俺は立て直す。
  二度と、この国が“裏切り”に沈まぬように)

 レオンの拳が静かに握られる。
 その背に、まばゆい光が降り注いでいた。
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