もう遅い、勇者ども。万能支援職レオンは王国の柱となる

まっちゃ

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第一部:追放と再生編

第24話 墜ちた王の断罪

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闇の塔の頂上、かつてアレンが「世界を救う」と豪語して築いた聖域は、いまや煤けた地獄と化していた。
崩れた柱、黒煙を吐く魔導炉、そして——玉座に縋りつく、見る影もない男。

「……どうして、俺が……俺が裁かれねばならん!」

その声には、かつての威厳は微塵も残っていない。
虚栄と怨嗟だけが、彼の魂を支配していた。

レイナは静かに歩み寄る。
その足取りは揺るぎなく、まるで審判の神が降り立つようだった。

「アレン。あなたが壊したのは、王国じゃない。信頼よ。私たちが信じた“あなた”という人間を、あなた自身が殺したの」

「黙れぇぇぇぇっ!!」
アレンが叫ぶと同時に、魔導炉が悲鳴をあげ、空気がねじれる。
黒い炎が彼の身体を覆い、まるで彼の絶望を具現化するかのようだった。

「俺は王だ! 神に選ばれた男だ! お前たち下賤な者どもに何がわかる!」

だが、レイナの瞳は冷たい。
悲しみの奥に、揺るぎない怒りが燃えていた。

「……そう、神に選ばれた? なら、神に返しなさい。その傲慢な魂ごと。」

彼女が右手を掲げると、光の剣が空間に生まれる。
かつてアレンと共に作り上げた“希望の象徴”——聖剣《エル・セラフィム》。

アレンは笑う。歪んだ笑みを浮かべながら、黒い剣を握り返した。
「いいだろう……最初の仲間にして、最後の敵か。ならば、この命で証明してやる!」

二つの剣が激突した瞬間、世界が閃光に呑まれた。
轟音が空を裂き、塔が崩壊していく。

——何度も、何度も刃を交わす。
そのたびに、アレンの身体は焼け、魂が剥がれていった。
だが彼は、それでも笑った。

「俺は……負けん……! 世界が俺を拒んでも、俺が世界を拒めばいい!」

「それが、あなたの“正義”なのね……」

レイナは涙を流しながら、最後の一撃を放つ。
光が闇を貫いた。

アレンの黒い剣が砕け散り、同時に彼の胸に深々と光が突き刺さる。
その瞬間、魔導炉が爆ぜ、血と炎が舞った。

「……俺は……ただ……誰かに、認めてほしかった……だけ、なのに」

最後の言葉は、幼子のようにか細かった。
彼の瞳から光が消え、黒い霧がゆっくりと天へ昇っていく。
それは、長い闇と罪の終焉だった。

レイナはその場に膝をつき、そっと呟く。
「さよなら、アレン。——もう、苦しまなくていい」

崩壊する塔の中、朝日が差し込んだ。
闇を裂く光は、まるで誰かの魂を救うように、静かで優しかった。

そして——空に漂う灰の中に、一輪の青い花が落ちた。
かつてアレンがレイナに贈った、希望の花。
それは風に揺れながら、静かに地へと還っていった。
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