もう遅い、勇者ども。万能支援職レオンは王国の柱となる

まっちゃ

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第二部 : 英雄と影の支配者編

第28話 「崩壊の聖都と、ひとつの涙」

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――漆黒の雷が落ちた夜、聖都エルディナは、静かに――だが確実に、滅び始めていた。

かつて神の加護を受けた純白の尖塔は、今や黒煙に包まれ、聖堂の鐘は狂ったように鳴り響いている。
神官たちは逃げ惑い、信徒たちは泣き叫び、聖女リリアナの名を呼ぶ。
だが――その本人は、玉座の下、血まみれでひざまずいていた。

「どうして……どうして、こんなことに……」

リリアナの指先は震えていた。
かつての“神の声”はもう聞こえない。
代わりに聞こえるのは、アレンの声――彼女を見下ろす、冷たく澄んだ笑いだった。

「ねぇ、リリアナ。君は“神の意思”を信じて僕を切り捨てた。
それで世界が救われたと思ってた? ――残念、救われなかったね。」

アレンの背後に立つのは、かつて“神罰の槍”と呼ばれた魔具。
だが今は黒く染まり、“堕天の槍”として彼の意のままに動いている。
天へと突き上げられたその先端から、黒い稲妻が空を裂き、聖堂の十字架を粉砕した。

「やめて……アレン! お願い……もう十分よ……!」

リリアナが泣き叫ぶたび、アレンは静かに笑った。
その笑みには怒りも悲しみもなく、ただ空虚な愉悦だけがあった。

「“十分”って言葉、ずいぶん簡単に使うよね。
僕を追放した時も、そう言ってた。“もう十分だ、アレン”。――覚えてる?」

リリアナは言葉を失う。
かつて自分がどんな顔でそう言ったのか、今になって鮮明に蘇る。
軽蔑、冷笑、そして――優越感。

あの時、自分は確かに笑っていた。
「勇者の力など必要ない」と。

アレンはゆっくりと彼女の前に歩み寄り、顔を近づけた。
その瞳には、黒い魔力が渦巻いている。

「神は人を見捨てた。だから僕は、“人を救わない神”を滅ぼすんだ。
――君も、聖女として“神の代弁者”だったね。」

「っ……!」

アレンの指がリリアナの頬に触れる。
その瞬間、光が弾け――聖女の額に刻まれていた“神印”が焼き切れた。

リリアナが悲鳴を上げて崩れ落ちる。
同時に、聖堂全体が揺れた。神の加護が完全に消え去ったのだ。

外の空には、黒い羽根が雪のように舞っている。
それは“堕天した天使たち”――アレンが生み出した影の軍勢。
彼らが街を覆い尽くし、光を喰らい、信仰を奪っていく。

一方その頃、崩壊する聖都の片隅で――セリーヌが膝をついていた。
かつてアレンを信じ、救えなかった女魔導士。
その胸には、アレンがかつて彼女に託した“蒼い魔石”が光っていた。

「アレン……あなたは、どこまで行くつもりなの……」

彼女の手の中の魔石が震え、アレンの声が響く。
『セリーヌ、君はまだ泣いてるの? 僕はただ、正義をやり直してるだけだよ。』

「違う……これは正義じゃない……! これは……復讐よ……!」

『復讐? ああ、そうだね。――でもね、復讐こそが“神の代行”だ。
だって神が裁かないなら、僕がやるしかないだろ?』

その声が途切れると、魔石の光がふっと消えた。
セリーヌは唇を噛み、立ち上がる。
背後で、崩れ落ちる聖堂の鐘楼。
瓦礫の中で泣き叫ぶ子供たちを見て、彼女は静かに決意した。

「――アレン、私はあなたを止める。たとえこの命を燃やしてでも。」

空を見上げたセリーヌの頬を、ひとつの涙が伝った。
それは、まだアレンに“人の心”が残っていると信じたい――最後の祈りだった。

その祈りを嘲笑うかのように、空から再び黒雷が落ち、聖都エルディナは崩壊の炎に包まれた。

そして、玉座の間でアレンは呟いた。

「聖女も神も、人間も――みんな平等に“ざまぁ”を受ければいい。」

その笑みは、まるで神すらも恐れる“終焉の王”の微笑みだった。
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