ホワイト・クリスマス

空川億里

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1話完結

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 今日はクリスマス・イブだ。八鍬伊織(やくわ いおり)はサンタクロースの衣装を着て、ソリの形をしたエアカーに乗る。
 八鍬は普段は別の仕事をしてるのだが、この時期はクリスマスイブ・カンパニーの業務についている。
 彼のこの時期の特別な仕事はサンタの格好をして、依頼のあった家庭にクリスマスプレゼントを届ける事だ。八鍬がこの業務に従事するのは、今年が最後である。彼が乗るソリ型のエアカーは2頭のトナカイ型ロボットと人工皮革でできたヒモで繋がれていた。
 トナカイ型ロボットもそれぞれが下部にローターがあり、ローターを回転させて空中に浮上するのだ。
 準備が完了するとプレゼントと八鍬を乗せたソリとトナカイ型ロボットは、東京の夜空に向かって舞い上がる。周囲に雪の降る光景が見えた。やがて眼下に目的の家が見えてくる。すでに子供が、施設の庭で待っている。
 トナカイ型ロボットとソリ型エアカーが庭に着陸すると、1人の少女の姿があった。 多分10歳ぐらいだろう。この家に来るのは、今年が最後になる。少女にプレゼントを渡した。子供を観るのは、久々だ。贈り物を渡した後、空飛ぶソリで、その家をあとにした。
 今夜の職務は、これで終わりだ。この職種自体が今年で終わるのだ。日本は少子高齢化が進み、もう子供自体があまりいないのである。クリスマスを祝う習慣も廃れてしまい、冬休みはメタバースを使用して思い思いの時空で遊ぶ子がほとんどだ。
 元々は日本で生まれたイベントではないし、これも時代の流れなんだろうと八鍬は思う。 一抹の寂しさを味わいながら彼の乗るソリは、クリスマス・カンパニーの会社へ戻る。
 途中で雪が降る映像は消えた。温暖化の進む東京で12月に雪が降るなんて事は、まずない。ホログラムによる演出だった。
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