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第5話 美男美女
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「ともかく今度のカジノの件でも、博士の協力に期待してる」
「当ったり前じゃ。大船に乗ったつもりで任しとけ」
雲村は大言壮語をのたまった。美山は研究所を出ると、再び自分の愛車に乗りこんだ。
去りぎわに、先程美山の車を狙った機関砲が出てきた場所に目をやったが、背の高い草むらが続くばかりで、予備知識がなければとてもじゃないがそんな物が隠れているとは思えない。
その後美山は、車を都心に向けた。次の目的地は渋谷のカフェだ。そこで仲間と待ち合わせしているのである。
渋谷の駐車場に車を止めた後、目的のカフェに歩きで向かった。
そこにはすでに1組の男女がいた。二人とも20代で、絵に描いたような美男美女である。ちなみに2人共整形ではない。実際街を歩いていると、よくスカウトされるらしい。
そして2人はカップルでもなかった。それぞれ別の恋人がいるらしいが、よくは知らない。仕事仲間のプライベートは詮索しない主義なのだ。
「悪ぃ。すっかり待たせたね。雲村博士の家から来るのに思ったより時間がかかっちまった。なんか食い物でも奢るわ。事故のせいで、道路が渋滞してたもんでね」
「気にしないで……それよりも、ずいぶんひさしぶりじゃない」
艶のある声で女が言った。2つの目が、嬉しそうにこちらを見ている。
女の名は立岡愛梨(たちおか あいり)。スラリと両肩から伸びた、天然のマニピュレーターの指先を組みあわせて、優雅に美山を待っていた。
初雪のように白い肌は、もしも触れたらどんな素敵な感触がするのだろうか。それを想像しただけで胸が躍った。男の方は富口海夢(とみぐち かいむ)。背は190センチもある。
体型は見事なマッチョで、ギリシャ彫刻のようだった。2人共まるで神が選び抜いた、常人とは異質な分子で構成されてるかのようだ。
愛梨も海夢も、全身から輝きを放っているかのようである。
カフェの中を通る少なからぬ人達が、すれ違いざま2人男女を振り返って見るほどだった。
「お元気そうですね」
富口海夢が、人好きのする笑みを浮かべた。このそよ風のような笑顔と甘やかな声で、一体何人の女性を喜ばせ、また泣かしてきたのだろうかと、ふと考えた。
「君らに来てもらったのは言うまでもない。また新しいプロジェクトに挑戦するから、参加してもらいたいんだ」
「どんなヤマなの」
愛梨が目を輝かせた。その瞳はまるで宝石のようで、見てるだけで吸いこまれそうな、一つの宇宙のようでもある。
「国営カジノと、隣接した美術館に収蔵してある古代の王冠を襲うつもりだ」
美山は答えた。2人の男女には今まで、主としてハニー・トラップで活躍してもらっていたが、他にも様々な特技を持っている。ハニー・トラップは古今東西、諜報機関がよく使う手だ。
諜報部員が色じかけで、敵国の重要人物から情報を入手したりする方法だ。2人に任せれば、大概の人間は落とせるだろう。
「古代の王冠なんて素敵ね……でも、どうしようかな」
愛梨が迷うような口調で言ったが、これは彼女のいつものパターンで、大抵の場合最終的には協力するのがお決まりの展開だ。
「まず最初に話だけでも聞かせてくれませんか」
海夢がそう言葉を放つ。
「いつも通り、分け前は全員で等分する。詳しい話はいくら何でもここではできない。おれの自宅で話そう」
周囲を見ながら美山は答えた。美山は2人を後部座席に座らせて、アジトの1つに向かう。
それは最初に今回の依頼を電話で受けた、世田谷区内の一戸建てだった。リモコン操作で駐車場のゲートが左右に開いていき、美山は車を中に入れる。
庭のあちこちに防犯カメラが設置してあり、常時録画中だった。
「相変わらず豪勢な家ですね」
ため息と共に海夢が言葉を発した。
「盗んだ金で建てた家だ。さしずめ盗人御殿だな」
美山は答えた。彼は2人を応接室に案内した。広々とした部屋には、高級な絨毯がしきつめられており、庭に面したサッシからは陽光が降り注いでいる。サッシの窓は防弾ガラスでできていた。
「南美島の国営カジノですか。いいわね……。以前行ったけど、海が綺麗」
その時の情景を思い出したかのように、愛梨がうっとりと目を細めた。
「遊びじゃないぞ」
美山は諭す口調で話した。
「でも、いい所だよ。サーフィン、スキューバ、ドライブ、ヨット、カジノ、バーベキュー……何をするにもいい場所じゃない」
愛梨がそう反論する。
「狙いはそれだけじゃない。カジノには美術館も併設されているんだが、海底から引き上げられた謎の王冠もターゲットだ」
「その王冠なら知ってます。テレビの報道番組で、特集してました。ムー大陸と関係あるんじゃないかとか、王冠に刻まれた文字のような物が、神代文字じゃないかとか、様々な説があるようですね」
海夢はまるでストラディバリウスから流れでたような、甘い音色の声で話す。結局2人は最終的に今度の依頼を請けてくれた。
「ムー大陸うんぬんは別としても、書かれた文字が何かの暗号で、財宝のありかを示している可能性はあるからな。頭からバカにしたもんでもないさ。詳しい計画が決定したら連絡する」
上を見あげれば、どこまでも広がる青い空。眼前には、どこまでも澄みきった青い海。白い砂浜、灼熱の太陽、水着姿の観光客、頬をなでる優しい潮風……陳腐な表現だが、まさに南国の楽園か。
南美島の白いビーチでパラソルの陰に寝そべりながら、美山は南国の昼下がりを堪能していた。
清武からカジノ襲撃計画を持ちだされてから、すでに半年が経過していた。やがてパラソルのそばに、見しらぬ女が近づいてきた。
真っ白なビキニ、小麦色の若い肌、ショートカットの黒い髪、茶色いサングラスをかけている。女はまっすぐに美山のそばへ歩いてきた。
「何の用だい」
美山が聞いた。女がサングラスを外した。その顔に見覚えがある。姫崎瀬戸菜(ひめさき せとな)だ。日本版FBIとして立ちあげられた全国警察の警部補である。
その名の通り全国警察は、都道府県の垣根を越えて、広域犯罪を捜査する組織だ。
彼女のすぐ後ろから、身長180センチぐらいの体格のいい男が続いて現れた。多分、こいつが部下の刑事だ。
「これはこれは姫崎警部補。相変わらずお美しい」
「あんたのお世辞を聞きに来たわけじゃないわ」
瀬戸菜が唇を尖らせた。
「ミスティー・ナイツのメンバーが南美島に潜入してるとの情報を得て、ここに来たの」
「ちょっと待ってくださいよ」
美山は右手を顔の前で振ってみせた。
「ぼくはれっきとした会社の会長です。確かに売れないお笑い芸人をやっていた若い頃、泥棒でパクられてムショに入った経験があります。でも今は、まじめに暮らしてるんですから姫崎さんに色々言われる筋あいはないですよ。天下を騒がしてるミスティー・ナイツのような大泥棒は、ぼくとは無縁な存在です」
「本当かしらね。ミスティー・ナイツを捜査してると、周囲にチラチラ、あなたの存在が現れるんだけど」
じと目で瀬戸菜が、美山を見た。その視線がレーザーのように彼を射ぬく。
「本当ですって。いくらぼくを疑おうと、証拠と令状がなければ逮捕できないでしょう」
「いつか証拠をあげてやるわ。覚えてなさい」
捨て台詞を残すと、瀬戸菜と男はその場を去った。手の内をさらしてどうするんだと思ったが、すでにこっちは警察の張りこみに気づいてるのを向こうもわかっているのだ。
自分達が監視してるとクギを刺しておきたいのだろう。しかし瀬戸菜はいい女だと、改めて彼女の美貌に感じ入る。デカにするのはもったいない。
全国警察が今回の件で動くのは、元々織りこみ済だった。
すでにかれらは、何度もミスティー・ナイツに煮え湯を飲まされていたのだから。どこかで挽回したいのだろう。
日本全国の主な美術館や銀行は、一般の泥棒はもちろんだが、ミスティー・ナイツの犯行を恐れて、十重二十重に警備を固めているのである。
「当ったり前じゃ。大船に乗ったつもりで任しとけ」
雲村は大言壮語をのたまった。美山は研究所を出ると、再び自分の愛車に乗りこんだ。
去りぎわに、先程美山の車を狙った機関砲が出てきた場所に目をやったが、背の高い草むらが続くばかりで、予備知識がなければとてもじゃないがそんな物が隠れているとは思えない。
その後美山は、車を都心に向けた。次の目的地は渋谷のカフェだ。そこで仲間と待ち合わせしているのである。
渋谷の駐車場に車を止めた後、目的のカフェに歩きで向かった。
そこにはすでに1組の男女がいた。二人とも20代で、絵に描いたような美男美女である。ちなみに2人共整形ではない。実際街を歩いていると、よくスカウトされるらしい。
そして2人はカップルでもなかった。それぞれ別の恋人がいるらしいが、よくは知らない。仕事仲間のプライベートは詮索しない主義なのだ。
「悪ぃ。すっかり待たせたね。雲村博士の家から来るのに思ったより時間がかかっちまった。なんか食い物でも奢るわ。事故のせいで、道路が渋滞してたもんでね」
「気にしないで……それよりも、ずいぶんひさしぶりじゃない」
艶のある声で女が言った。2つの目が、嬉しそうにこちらを見ている。
女の名は立岡愛梨(たちおか あいり)。スラリと両肩から伸びた、天然のマニピュレーターの指先を組みあわせて、優雅に美山を待っていた。
初雪のように白い肌は、もしも触れたらどんな素敵な感触がするのだろうか。それを想像しただけで胸が躍った。男の方は富口海夢(とみぐち かいむ)。背は190センチもある。
体型は見事なマッチョで、ギリシャ彫刻のようだった。2人共まるで神が選び抜いた、常人とは異質な分子で構成されてるかのようだ。
愛梨も海夢も、全身から輝きを放っているかのようである。
カフェの中を通る少なからぬ人達が、すれ違いざま2人男女を振り返って見るほどだった。
「お元気そうですね」
富口海夢が、人好きのする笑みを浮かべた。このそよ風のような笑顔と甘やかな声で、一体何人の女性を喜ばせ、また泣かしてきたのだろうかと、ふと考えた。
「君らに来てもらったのは言うまでもない。また新しいプロジェクトに挑戦するから、参加してもらいたいんだ」
「どんなヤマなの」
愛梨が目を輝かせた。その瞳はまるで宝石のようで、見てるだけで吸いこまれそうな、一つの宇宙のようでもある。
「国営カジノと、隣接した美術館に収蔵してある古代の王冠を襲うつもりだ」
美山は答えた。2人の男女には今まで、主としてハニー・トラップで活躍してもらっていたが、他にも様々な特技を持っている。ハニー・トラップは古今東西、諜報機関がよく使う手だ。
諜報部員が色じかけで、敵国の重要人物から情報を入手したりする方法だ。2人に任せれば、大概の人間は落とせるだろう。
「古代の王冠なんて素敵ね……でも、どうしようかな」
愛梨が迷うような口調で言ったが、これは彼女のいつものパターンで、大抵の場合最終的には協力するのがお決まりの展開だ。
「まず最初に話だけでも聞かせてくれませんか」
海夢がそう言葉を放つ。
「いつも通り、分け前は全員で等分する。詳しい話はいくら何でもここではできない。おれの自宅で話そう」
周囲を見ながら美山は答えた。美山は2人を後部座席に座らせて、アジトの1つに向かう。
それは最初に今回の依頼を電話で受けた、世田谷区内の一戸建てだった。リモコン操作で駐車場のゲートが左右に開いていき、美山は車を中に入れる。
庭のあちこちに防犯カメラが設置してあり、常時録画中だった。
「相変わらず豪勢な家ですね」
ため息と共に海夢が言葉を発した。
「盗んだ金で建てた家だ。さしずめ盗人御殿だな」
美山は答えた。彼は2人を応接室に案内した。広々とした部屋には、高級な絨毯がしきつめられており、庭に面したサッシからは陽光が降り注いでいる。サッシの窓は防弾ガラスでできていた。
「南美島の国営カジノですか。いいわね……。以前行ったけど、海が綺麗」
その時の情景を思い出したかのように、愛梨がうっとりと目を細めた。
「遊びじゃないぞ」
美山は諭す口調で話した。
「でも、いい所だよ。サーフィン、スキューバ、ドライブ、ヨット、カジノ、バーベキュー……何をするにもいい場所じゃない」
愛梨がそう反論する。
「狙いはそれだけじゃない。カジノには美術館も併設されているんだが、海底から引き上げられた謎の王冠もターゲットだ」
「その王冠なら知ってます。テレビの報道番組で、特集してました。ムー大陸と関係あるんじゃないかとか、王冠に刻まれた文字のような物が、神代文字じゃないかとか、様々な説があるようですね」
海夢はまるでストラディバリウスから流れでたような、甘い音色の声で話す。結局2人は最終的に今度の依頼を請けてくれた。
「ムー大陸うんぬんは別としても、書かれた文字が何かの暗号で、財宝のありかを示している可能性はあるからな。頭からバカにしたもんでもないさ。詳しい計画が決定したら連絡する」
上を見あげれば、どこまでも広がる青い空。眼前には、どこまでも澄みきった青い海。白い砂浜、灼熱の太陽、水着姿の観光客、頬をなでる優しい潮風……陳腐な表現だが、まさに南国の楽園か。
南美島の白いビーチでパラソルの陰に寝そべりながら、美山は南国の昼下がりを堪能していた。
清武からカジノ襲撃計画を持ちだされてから、すでに半年が経過していた。やがてパラソルのそばに、見しらぬ女が近づいてきた。
真っ白なビキニ、小麦色の若い肌、ショートカットの黒い髪、茶色いサングラスをかけている。女はまっすぐに美山のそばへ歩いてきた。
「何の用だい」
美山が聞いた。女がサングラスを外した。その顔に見覚えがある。姫崎瀬戸菜(ひめさき せとな)だ。日本版FBIとして立ちあげられた全国警察の警部補である。
その名の通り全国警察は、都道府県の垣根を越えて、広域犯罪を捜査する組織だ。
彼女のすぐ後ろから、身長180センチぐらいの体格のいい男が続いて現れた。多分、こいつが部下の刑事だ。
「これはこれは姫崎警部補。相変わらずお美しい」
「あんたのお世辞を聞きに来たわけじゃないわ」
瀬戸菜が唇を尖らせた。
「ミスティー・ナイツのメンバーが南美島に潜入してるとの情報を得て、ここに来たの」
「ちょっと待ってくださいよ」
美山は右手を顔の前で振ってみせた。
「ぼくはれっきとした会社の会長です。確かに売れないお笑い芸人をやっていた若い頃、泥棒でパクられてムショに入った経験があります。でも今は、まじめに暮らしてるんですから姫崎さんに色々言われる筋あいはないですよ。天下を騒がしてるミスティー・ナイツのような大泥棒は、ぼくとは無縁な存在です」
「本当かしらね。ミスティー・ナイツを捜査してると、周囲にチラチラ、あなたの存在が現れるんだけど」
じと目で瀬戸菜が、美山を見た。その視線がレーザーのように彼を射ぬく。
「本当ですって。いくらぼくを疑おうと、証拠と令状がなければ逮捕できないでしょう」
「いつか証拠をあげてやるわ。覚えてなさい」
捨て台詞を残すと、瀬戸菜と男はその場を去った。手の内をさらしてどうするんだと思ったが、すでにこっちは警察の張りこみに気づいてるのを向こうもわかっているのだ。
自分達が監視してるとクギを刺しておきたいのだろう。しかし瀬戸菜はいい女だと、改めて彼女の美貌に感じ入る。デカにするのはもったいない。
全国警察が今回の件で動くのは、元々織りこみ済だった。
すでにかれらは、何度もミスティー・ナイツに煮え湯を飲まされていたのだから。どこかで挽回したいのだろう。
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