地球に優しい? 侵略者

空川億里

文字の大きさ
25 / 66

第25話 チャマンカ星へ

しおりを挟む
 ズロッシャイの乗る宇宙艦はチャマンカ星に向かっている。
 艦には彼を入れ、全部で50人のダラパシャイ人が乗っていた。
 ズロッシャイは式典に参加するのを決めたが、まだどうやってワランファ准将を救うのか、計画は立てていない。
 クーデターに乗じるとはいっても、そもそもクーデターを本当にできるのか?
 成功しても、ワランファ救出につなげられるのかわからない。あまりにも行き当たりばったりな話である。
 宇宙艦がチャマンカ星の近くでワープアウトした時ほぼ同時に、別の星系からワープアウトしたスターシップの姿があった。
 チャマンカ製の宇宙船で、非武装である。
 気になって脳内のナノメディアから検索したら、地球とチャマンカを往復する定期便の船だった。
 ズロッシャイは、以前救った2人の地球人の姿を思いだす。
 ひょろ長い体型で体には甲羅がなく、かといってチャマンカ人のような体毛もない異形の姿を。
 甲羅のように身を守る物がなくても生きられるというのが、ズロッシャイには不思議でならない。
 地球がダラパシャイより重力が小さく、落下物のスピードがダラパシャイより小さいのはわかっているが。



 その頃蒼介は、ズロッシャイがちょうど見ていた定期便の宇宙船に、夏映と一緒に乗りこんでいた。
 この定期便は地球人の旅客用の宇宙船で、乗客はチャマンカ星への観光客や、ビジネスで来星する者ばかりのはずだ。
 やがて宇宙船はチャマンカ星の上空に来た。地球人たちはフルフェイスのヘルメットと、全身を覆うスーツを着る。
 背中には酸素ボンベを背負った。そしてマイクロ・ワープで、宇宙港に転送される。
 チャマンカ星は地球より重力が小さいので、ボンベの重さは苦にならない。
 重力が小さいゆえに、地球よりも砂ぼこりがたくさん舞っているように思える。
 地面には、様々な色の長い毛が落ちていたが、これはチャマンカ人の皮膚から落下したのだろう。
 2人はタクシー乗り場に向かう。タクシーの座席には人がいない。組み込まれたAIが操縦してるのだ。
 2人が近づくと後部座席のドアが開く。夏映が慣れた様子で中に入ってシートに座る。
 座席の上にも、チャマンカ人の落とした体毛が散らばっていたので、夏映も蒼介もそれを払って中に座った。
「チャマンカ中央病院へ、お願い」
 夏映は日本語で話したが、それはヘルメットのスピーカーからチャマンカ語で流れた。
「わかりました」
 前部座席の後ろからチャマンカ語で回答が返ってくる。
 が、2人の着るスーツには翻訳機がしこんであるので、内容を理解できた。
 タクシーは地球のSF映画に出てきそうなエア・カーである。
 それは路上から上昇し、地面から1メートルぐらいの空間でストップすると、今度は進行方向へ向かって発進する。
 タクシーはやがて、病院の前に着陸した。料金は、夏映が指紋認証で支払う。
 エア・カーを降り、病院の建物に向かった。
 受付で夏映が、やはり指紋認証で面会の手続きをする。蒼介は連れなので、手続きは不要だ。
 さすがに病院の床は、チャマンカ人の体毛は落ちていない。見るからに清潔だ。
 今も掃除機ロボットが、床を清掃していた。
 やがて、並んだ病室の1つに入る。中に入るとそこは個室で、ベッドが1つだけあった。
 ベッドの上には若い東アジア系の男性の姿がある。男はベッドの上にあるカプセルの中に、パジャマ姿で眠っていた。
 どうやら彼が、夏映の恋人らしい。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【新作】1分で読める! SFショートショート

Grisly
ファンタジー
❤️⭐️感想お願いします。 1分で読める!読切超短編小説 新作短編小説は全てこちらに投稿。 ⭐️忘れずに!コメントお待ちしております。

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

アガルタ・クライシス ―接点―

来栖とむ
SF
神話や物語で語られる異世界は、空想上の世界ではなかった。 九州で発見され盗難された古代の石板には、異世界につながる何かが記されていた。 同時に発見された古い指輪に偶然触れた瞬間、平凡な高校生・結衣は不思議な力に目覚める。 不審な動きをする他国の艦船と怪しい組織。そんな中、異世界からの来訪者が現れる。政府の秘密組織も行動を開始する。 古代から権力者たちによって秘密にされてきた異世界との関係。地球とアガルタ、二つの世界を巻き込む陰謀の渦中で、古代の謎が解き明かされていく。

【戦国時代小説】 甲斐の虎•武田信玄と軍師•山本勘助

蔵屋
歴史・時代
 わたしは、以前、甲斐国を観光旅行したことがある。  何故、甲斐国なのか?  それは、日本を象徴する富士山があるからだ。     さて、今回のわたしが小説の題材にした『甲斐の虎•武田信玄と軍師•山本勘助』はこの甲斐国で殆どの戦国乱世の時代を生き抜いた。そして越後の雄•上杉謙信との死闘は武田信玄、山本勘助にとっては人生そのものであったことだろう。  そんな彼らにわたしはスポットライトを当て読者の皆さんに彼らの素顔を知って頂く為に物語として執筆したものである。  なお、この小説の執筆に当たり『甲陽軍鑑』を参考にしていることを申し述べておく。  それでは、わたしが執筆した小説を最後までお楽しみ下さい。  読者の皆さんの人生において、お役に立てれば幸いです。  

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

「魔物の討伐で拾われた少年――アイト・グレイモント」

(イェイソン・マヌエル・ジーン)
ファンタジー
魔物の討伐中に見つかった黄金の瞳の少年、アイト・グレイモント。 王宮で育てられながらも、本当の冒険を求める彼は7歳で旅に出る。 風の魔法を操り、師匠と幼なじみの少女リリアと共に世界を巡る中、古代の遺跡で隠された力に触れ——。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

処理中です...