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最終話
しおりを挟むミズキが消えた後、ミズキを形作っていたハナミズキの花びらがピアノ周辺に散らばり、私はその花びらを一枚残らず拾い集めた。
そしてその花びらの一部を栞にし、残りは全て箱にしまい、母に託した。
「私のお葬式の時、この箱の中のものを一緒に燃やして欲しいの」
「ひな…でもコレ…その時には腐ってるかもしれないし…」
「それでも良いの。コレじゃないと私にとって意味がないから」
怪訝そうにする母に、私はキッパリと言い切り、タブレットへと視線を戻した。
見ていたのは"陽乃 瑞希"が過去に行ったコンサートや参加したコンクールの映像だった。
この映像を見て、彼と同じ曲を演奏することで、繰り返し、彼の存在を感じることが出来るような気がしたからだ。
もう、あのハナミズキの木も無く、残されたのはピアノと私一人。
それでも、私は残りの時間も彼を想いながらピアノを弾き続けることにした。
きっと彼と出会わなければ母の言いなりになって触れることさえしなくなっていたピアノに今も触れている。
私のタイムリミットも着々と近付いてくる中で、私はそれでも少しでも彼に近付こうと思った。
また会えた日に、2人で肩を並べてピアノを奏られるように。
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