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8話
しおりを挟む『決まりだな。なら早速行き先を決めろ』
そう言って満月が月白色の着物の袖を大きく振ると、星の煌めきを帯びながらあらゆる形の月が数え切れないほど星空に現れた。
「すごい…なんだこれぇ…」
頭上に浮かぶ月を見上げながら柳が感嘆の声を上げると、満月は『ふん、美しいだろ?』と自慢げに微笑む。
『これが全て異世界への入口になっている。一つの世界に居続けられるのはせいぜい2日だ。一度入ったら2日以内には戻れ、そして今浸かってる水を飲んでから次の世界へ移動しろ。いいな?』
「待って、入り方は分かったけど、戻る時はどうすれば良いの?」
早々に説明を終わらせてしまいそうな満月に、柳は慌てて確認する。
『戻り方なら簡単だ、僕を見上げれば良い』
「ん…?僕を見上げる…?」
真剣に首を傾げて考える柳に、満月は『まだ気が付かないのか』と小さくため息をつく。
『僕は月の化身だ。現世でも、異世界でも月は等しく存在する。だから僕が管理者なんてやっている訳だ。で、戻る時は月を見上げて10秒目を閉じればいい。そうしたら僕が引き上げてやる』
「マジか、超簡単」
『まあ、僕は完璧だからな』
「分かったからもう行っていい?」
自画自賛する満月に無意識に拍手を送っている柳の横から今度は若葉が声を上げた。
「あ、待ってよ!まだ色々聞いておかないと!」
「それはあんた一人で聞いてよ、私は別にココに戻って来れなくても良いし」
そう言って若葉はスタスタと自分の正面にある半分欠けた月へと進んでいく。
「若葉!待ってってば!」
呼び止めに応じない若葉の後を追って、柳もバシャバシャと水しぶきを上げながら走り出す。
そしつ満月が見守る中、2人は半分欠けた月の中へと入って行った。
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