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14話:異世界古書店⑥
しおりを挟む【お前が会った奴はどんな奴だった?】
真っ直ぐに自分を見つめてくるブラフマに、柳は慌てて首を振った。
「あってない、会ってないです!!」
【そうか?なのにさっきからなにを怖がってる?】
「そりゃあ怖いですよ!人間を鴉頭に変えちゃう神様なんて!」
『鴉??』
柳の言葉に、その場にいた全員が声を揃えた。
そしてブラフマだけが、その赤い瞳を大きく見開き、戸惑いに揺らした。
柳の言う"鴉"がなにを指すのか理解出来たのはブラフマだけだったからだ。
【その鴉は執事服を着て、人の言葉を喋ったか?】
確かめるような口調のブラフマに、柳は頷く。
【そうか。お前は最悪な神の領域に一度招かれた人間なんだな?】
「あ…え…」
しどろもどろになる柳に、ブラフマは念を押すように顔を覗き込んだ。
【なるほど、だからお前に"2日"という制約をルーラーは課したのか。長く留まれば居場所を特定されかねないからな】
「?ちょっと待って、どういうこと?」
眉を寄せる若葉に、ブラフマは黒い爪を木のカウンターに立てた。
【お前達2人の目的は知らんが、ルーラーにとってお前達2人の組み合わせは好都合だったんだろう。鴉の主は"死にたがり"を毛嫌いするからな】
「なっ…!」
ブラフマの言葉に若葉は反論しようとしたが、すぐにブラフマが遮る。
【お前に寄り道させたい理由は他にもあるだろうが、概ねこんなものだろう】
ブラフマは何故だか勝ち誇ったように笑うと、急に立ち上がった。
【そうと分かれば悪いがココにお前達を長く留めることは出来ない。今すぐ狭間に戻れ】
「ええ!?よく分かんないけど急な手のひら返し!?」
ブラフマの言葉に目を剥いたのは翡翠だった。
【こやつらはこの世界にとっても危険だ。そしてココに居続けることも、こやつらにとって危険なのだから追い出すしかあるまい】
「マジか……」
驚く翡翠を他所に、ブラフマは両手に軽々と若葉と柳の首根っこを掴んで持ち上げると、黒い暗幕に隠された窓辺へと移動した。
暗幕に覆われた窓は3つあり、その中の左端にあたる窓の幕を勢いよく開け放つブラフマ。
開け放たれた窓からは美しい月が正面にあり、窓辺に向かって真っ直ぐに月の光の筋が伸びている。
【よし】
ブラフマは一度月を見上げると、窓を開け、最初に若葉を掴んでいる方の腕を振り上げた。
「ええ!?いや"よし"ってなに!?10秒待って!!10秒であの人が来るから!!」
【10秒など待っていられん、貴様らなどこのままポイだ】
そう言うとブラフマは窓から月明かりに向かって若葉と柳を放り投げてしまった。
『おぉー!!ふざけんなぁ~!!!!!!』
2人の叫び声が響いたかと思うと、すぐに大きな月が輝き、その光によって包まれた2人はそのまま姿を消した。
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