俺達のヴォーカルが死んだ

空秋

文字の大きさ
7 / 15

7話

しおりを挟む


夏休みが明け、10月の文化祭に向けて学校全体が動き始めた頃には、Violetの新曲も仕上がりがみえてきた。


その日の午後は文化祭実行委員に企画を提出したり、クラスの出し物を決める時間となっていた。


晶のクラスはタピオカ屋をやることになり、販売係のシフトやクラスTシャツのデザインなどの話題で盛り上がっていた。


「ねぇねぇ、町田くんてViolet入ったんでしょー?当日演奏するの?」



「するよ」


町田の顔をした晶に話しかけてきたのは割と初期の頃からVioletを気に入ってくれている女子生徒だった為、晶は"町田っぽさ"を意識して少し引きつった笑いを浮かべた。


「えっと…ヴォーカルは朝陽くんが…って噂で聞いたんだけど…ほんと?」


「ほんと。晶ほどしゃないけど、朝陽も上手いから応援してあげて」


「う、うん!分かった!今年もVioletのオリジナルTシャツ販売あるなら私、絶対買うから!」


「まじ?ありがとう、暖に確認してみるわー」


女子との会話が終わり、晶が再び手元の紙に視線を戻すと、「お、おい…町田」と震える男子生徒の声がした。


「ん?」


顔を上げると、そこには元いじめっ子の生徒がおり、引きつった表情で「軽音部が呼んでる…」と廊下を指さした。


「ああ、ありがとう」


晶は廊下に確かに見慣れた3人の姿があるのを確認すると、わざと雑に立ち上がり、左耳に付けたピアスを弄りながら、ついでにギリギリのところで男子生徒にわざとぶつかりながら歩き出した。


「今からステージ発表の順番決めるらしいんだけど、誰が行く?」


「暖で良いんじゃね?一番イカついし。勿論大トリもぎ取ってこいよ♡」


教室の入口付近で派手な4人組が固まっているだけで目立つというのに、よりによって新人の町田が一番イカつい暖に馴れ馴れしくするものだから、周囲の生徒達は内心ハラハラとしていた。


が、そんな外野の心配も他所に、暖は素直に「じゃあ行ってくる」と1人で生徒会室へと向かって行った。


「てか、お前クラスメイトに相当怖がられてるっぽいな…大丈夫なのか?」


元いじめっ子の反応を見た朝陽が晶に耳打ちする。


「大丈夫ってなにが?別にもう誰も何もしてこねーけど?」


「いや…それは良いんだけどさ…町田に戻った時、大丈夫なのかってことだよ」


「は?大丈夫って?」


「報復とかさ」


「それはお前らが庇えよ、仲間なんだから。コイツが居なくなったらVioletの曲は生まれないんだからな。ちゃんと守れよ」


相変わらず押し付けがましい物言いの晶に、朝陽がため息を付く一方で、樹は「守る」と素直に頷いた。


「え、マジかよ…どうした樹?」


「朝陽も町田を認めて。Violetと晶の為に」


「認めるもなにも、晶が言い出したら曲げらんねーのは知ってるから拒絶なんてしねーよ。俺だって本気でVioletしてるんだ」


「本気で…Violetしてる…?朝陽、その日本語はちょっとおかしい」


真剣にバンドの話をしていると思いきや、朝陽の言葉遣いに樹が疑問を呈した辺で3人はとうとう笑いを堪えきれなくなり、同時に吹き出した。







しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

鷹鷲高校執事科

三石成
青春
経済社会が崩壊した後に、貴族制度が生まれた近未来。 東京都内に広大な敷地を持つ全寮制の鷹鷲高校には、貴族の子息が所属する帝王科と、そんな貴族に仕える、優秀な執事を育成するための執事科が設立されている。 物語の中心となるのは、鷹鷲高校男子部の三年生。 各々に悩みや望みを抱えた彼らは、高校三年生という貴重な一年間で、学校の行事や事件を通して、生涯の主人と執事を見つけていく。 表紙イラスト:燈実 黙(@off_the_lamp)

妹の仇 兄の復讐

MisakiNonagase
青春
神奈川県の海に近い住宅街。夏の終わりが、夕焼けに溶けていく季節だった。 僕、寺内勇人は高校三年生。妹の茜は高校一年生。父と母との四人暮らし。ごく普通の家庭で、僕と茜は、ブラコンやシスコンと騒がれるほどではないが、それなりに仲の良い兄妹だった。茜は少し内気で、真面目な顔をしているが、家族の前ではよく笑う。特に、幼馴染で僕の交際相手でもある佑香が来ると、姉のように慕って明るくなる。 その平穏が、ほんの些細な噂によって、静かに、しかし深く切り裂かれようとは、その時はまだ知らなかった。

小学生をもう一度

廣瀬純七
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜

遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった! 木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。 「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」 そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。

俺は陰キャだったはずなのに……なぜか学園内でモテ期が到来した件

こうたろ
青春
友人も恋人も居ないボッチ学生だった山田拓海が何故かモテだしてしまう。 ・学園一の美人で、男女問わず憧れの的。 ・陸上部のエースで、明るく活発なスポーツ女子。 ・物静かで儚げな美術部員。 ・アメリカから来た金髪碧眼でハイテンションな留学生。 ・幼稚園から中学まで毎朝一緒に登校していた幼馴染。 拓海の生活はどうなるのか!?

カオルとカオリ

廣瀬純七
青春
一つの体に男女の双子の魂が混在する高校生の中田薫と中田香織の意外と壮大な話です。

処理中です...