TSアンドロイド ハルちゃん

pu8

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「バトル物なんて聞いてないけど?」
『ハル様、距離を保ちつつ戦いたい所ですが街への負担を考えると至近距離での戦闘が不可避です。相手の攻撃をよく見て避ける。これを繰り返しましょう』
「それだと倒せないけどいいの?」
『目標はデータ収集です。倒すなんていつだって出来ますから。ハル様の能力を七割減、30%に設定しました』
「そういうの舐めプっていうんだけど?」
『私の予想ではこの程度で十分かと。舐められるなら舐めましょう』
「どちらかといえば敵側でありそうな思想と言動だな」
『時の正義はいつだって勝者。勝てばいいんです。ハル様、来ます』

 瞬きをする間、ほんのコンマ何秒だろうか。十メートルは離れていたであろう距離から、奴はいきなり目の前に現れた。
 青白い髪をした背丈二メートル程の……

「おいおい、随分とイケメンじゃないの」
『速い……仕上がりは想定より一割増です』

 捕獲と言っていた通り、ヤツは俺を掴もうと動いてくる。速いけど……なんだろう、俺の方が速くない?
 
「サクラ、余裕で避けられるよ。凄いなこの身体!」
『それはもうハル様ですから。せっかくですから一撃ブチかましましょう』 
「暴力は嫌いなんだけどな」
『世人を苦しめる文明人への愛のムチということで』
「物は言いようだな」

 愛のムチということで、ヤツの頬へと平手打ちをかました。頬が赤くなればいいやくらいに思ってたのに……漫画やアニメで見るような吹き飛び方でヤツは摩天楼に埋もれていった。

「嘘だろ!? サクラ、俺人殺しになっちゃうよ……」
『大丈夫です。相手もハル様と同じアンドロイド。自己修復機能がついていますのでご安心下さい。それと、彼に自我はありません』
「自我がないって……」
『その辺に建っているビルだと思って下さい。いいですか?』
「お、おう……」

 そんな事言われてもな……
 どう見ても人間だし……痛くないのかな……

『やはりアナタにして良かった……ハル様、私がデータを取り終わるまで避け続けて下さい』
「おう。それなら得意だよ」

 テレポートでヤツの背後に回り続ける、その力の差は大人と子供の鬼ごっこ。大分瞬間移動に慣れてきたので捕まる気配は微塵も無い。
 ヤツは諦めたのか息を荒らげながら後退りしている。
 
「ロボットでも疲れるんだな」
『ハル様、避けて下さい!!!』
「へ?」

 上空に巨大な光の玉が現れ……間抜けな顔をした俺を見下ろしたソレは、周囲の建物を巻込みながら大爆発を起こした。


 ◇  ◇  ◇  ◇


【目標の生存を確認】

「いやー、死ぬかと思ったわ」
『ハル様……いつの間にそんなことを』

 俺達の周りを囲む見えない壁。あの爆発でもヒビ一つ付いていない。一か八かだったけど、正解だった。

「鬼ごっこってさ、バリアが使えるんだぜ?」
『ハル様……私、濡れちゃう』
「どこが濡れるんだ、どこが」

【強力な電磁場を確認。不可能な技術、データを送ります】

 ヤツは立ち止まり、空を見上げている。
 小声で誰かと会話をしているようだ。離れた場所で文明人が見ているのだろうか。
  
「よし、じゃあ今のうちに帰るか」
『何言ってるですか!! やられたんですからやり返しましょう!!』
「最高峰の頭脳が言う台詞じゃないぞ?」
『メールクリオルスを通して文明人がハル様を見ています。ハル様がこの場で輝けば輝くほどに、ハル様が抑止力になる筈です』
「……この身体の力を見せつけられればいいんでしょ? 俺のやり方でやらせてもらうよ」

 強力な一撃。それをイメージ出来る言葉があれば何とかなりそうな……よし、あの漫画から──

『ハル様、パクリはいけません』
「じゃあサクラも一緒に考えてよ」 
『そうですね……こちらがハル様が好みそうな凡庸性の高い技名一覧です』
「うーん、せっかくなら格好良さの中にも可愛さが欲しいよな」
『でしたらこちらは──── 』

 ◇  ◇  十五分後  ◇  ◇ 

「よし、もうこれで行くぞ?」
『行っちゃいましょう!』

 よく待っていてくれたなと思わず笑ってしまう。そんなヤツの背後にテレポートで回り込み、そのまま全力で上空に放り投げた。それを追うように、俺も空高くジャンプする。
 
「俺の名前はハル。覚えときな」
『出力を70%まで戻します。ハル様、いつでもいけます』

 この身体、何でも出来る訳では……無い筈。先程ヤツが言っていた電磁場という言葉、つまりは何かしらの現象が起きたからバリアが使えたのだろう。まぁ俺はバカだから粒子とか原子とか言われても理解出来ないけど……
 人が想像出来る事なんて、いつかは実現する筈だ。
 
 だから俺の手からエネルギー波が出たっておかしく無い…………よね?

「ハルちゃん…………ブラストッ!!!」

 前に突き出した掌から放たれた巨大な波動砲。
 目的はヤツ……の真横に位置する人工月。
 ヤツが振り返った瞬間に着弾し、大きな亀裂が入った。

「よし、帰るか」
『ハル様、せっかくですから彼等にメッセージを残しましょう』
「じゃあ……こうするか」
 
 俺の住んでいた世界での煽り。
 舌を出し中指を立て、瞬間移動で家へ戻った。
 
 ◇  ◇  ◇  ◇

「お帰り。随分遅かったね」
「あぁ、月ぶっ壊してきたからな」
「ふぁっ!!?」
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