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第13話【語り合う】
しおりを挟む洋子のマンションに着くと、幸はちょっとしたおつまみを作るため、キッチンに立った。
「嬉しいな。幸の料理が食べられるなんて。幸って、昔から料理上手だよね。何を食べても美味しいもんね」
洋子はそう言いながら、嬉しそうに幸の周りをうろうろしている。
「小さい頃から、お母さんに教えてもらってたからね」
幸が微笑みながら答えると、洋子は頷いて言った。
「綾乃ママも料理上手だよね。っていうか、綾乃ママって、なんでもできるよね」
「そうなの。お母さんが何でもできる人だったからか、小さい頃からいろんな習い事をさせられてたんだよね。
でも、いま思えば、あの頃いろんな経験ができたのは良かったかもしれない。
スパルタだったけど、それなりに楽しかったからね」
会話を交わしながら、料理は次々と仕上がっていく。
お酒のおつまみにぴったりな料理を五品ほど作り、幸はそれらをテーブルへと運んだ。
幸はテーブルの上を整え、洋子が、慣れた手つきでワインのコルクを抜く。
軽やかな音とともに、芳醇な香りがふわりと広がった。
テーブルの上には、幸が作った料理が五品。
その隣に置かれたワインのボトルには、「シャトー・モンペラ」の文字が輝いている。
「これ、ずっと開けるタイミングを探してたんだ。今日がちょうどいいかなって」
洋子はそう言いながら、幸のグラスにゆっくりとワインを注ぐ。
「いい香り……さすが洋子セレクト」
幸が微笑むと、洋子も満足そうに笑った。
「今日はとことん語ろうね」
グラスを軽く合わせると、やわらかな音が部屋の中に響いた。
そこからは、飲みながら食べながら、二人の時間がゆるやかに流れていく。
幸は、これまでのこと、そして今日あった出来事を、包み隠さず洋子に話した。
話を聞き終えた洋子は、頭から湯気が出るのではないかというほど怒りを爆発させた。
「そんな男、さっさと捨てたほうがいいって!
自分から“見た目を悪くしろ”なんて言っておいて、
『あまりにも見た目が酷くて秘書として連れて歩けない』って、どういう神経してるのよ。
しかも、浮気相手を会社に連れてくるなんて……最低にもほどがあるよ!」
洋子の怒っている姿を見て、幸は、圭吾が本当に最低な男なのだと、あらためて痛感した。
「でもさ、『他の男が寄ってこないように見た目を悪くしろ』とか、『俺を不安にさせないでくれ』とか……。
圭吾は、自分の言葉を覚えてないのかな」
幸が苦笑まじりに呟くと、洋子はすぐさま眉を吊り上げた。
「覚えてるに決まってるでしょ。自分で言ったんだから。
それよりも、付き合ってることを隠してたのが、そもそもの間違いよ。
幸は昔っからモテるんだから、彼氏がいなきゃ男が寄ってくるのは当然でしょ!」
幸は、スタイルもよく、たぐいまれなる容姿の持ち主だった。
そのため、圭吾に付き添って会社周りをすると、いろんな男性からアプローチを受けていた。
それが気に入らない圭吾は、幸に見た目をどうにかしろと頼み込んだのだ。
幸は、圭吾に言われた通りにしただけ。
それなのに、この言われよう――。
その後も、幸と洋子は、ワインを傾けながら朝方まで語り合った。
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