「あまがみのみこと」

あまがみのみこと

文字の大きさ
35 / 67

「あまがみのみこと」「激闘の日々」「土の魔法」第一章:大地に育まれた少年と誓いの証

しおりを挟む
ベガディスの星その真ん中にグロリア村は土の恵みで生きてきた夕暮れの風は黄金色した麦畑の穂が

まるで大河のごとし棚引き果てしない広漠は美しい悠久の大平原で豊かに人々を育み抱く

豊饒の沃野で大地の広袤に根を張り佇む一人の少年「ジャタ」十七の若者だが魔王の影は根を枯らし戦士たちは還らなかったのだ

夕暮れの田園に土の匂いが満ちていた「ジャタ」は鍬を握る手を止め鍬を置き耕した

ばかりの彼は両の掌で土を掬い上げた、しっとりとした粒子は生きている様に温もりが手掌に伝わる彼は目を閉じ

その土に宿る脈動を感じ胸奥に響いた幼い頃から聞こえていた地母神様からの低い囁き土は眠らない春に芽を押し出し夏に根を深くし秋に実を結び冬に抱く

彼は鍬を持ち父を想った父は戦士として魔王の軍勢に挑み、だが大地の奥で眠り帰らなかった

「「ジャタ」お前の力は村を守る為にある土は裏切らない踏みしめろ……いつもそこにある……」

亡き父の言葉が彼の胸に残っていた夕暮れの鐘が鳴る畑を見渡すと母が戸口に立ち心配そうに、こちらを見ていた母は泣いて止めた

「「ジャタ」無理に行かなくてもいいのよ大地はおまえを奪う……もう誰も行くな……まだ若いのだから……あなたまで失いたくない……」

けれど「ジャタ」は応えた

「母さん父さんが果たせなかったなら……俺が行かねば……この根は枯れてしまう……俺がやるしかない……」

あたかも「ジャタ」の声は天女が微笑み麦の穂が広がる耕土に吸い込まれた彼の声には迷いがない

だがその胸には恐怖が渦巻いていた土は語る恐れも根の一部だ根は闇を越えて伸びると母なる土壌を揺るがす程の敵に一人で挑む愚かさは理解している

けれど土は教えてくれた芽は殻を破ってこそ伸びると言葉は風に消える

けれど土は聞いていた重く静かに深くいさぎよく

夜明け前に村は、まだ眠りの中で彼は一人だけ目を覚まし「ジャタ」は村を出る支度をした

と言っても小さな袋と古びた鍬を剣代わりに背負っているだけ

それは父の形見であり誓いそのものだった少年は畑に膝をつき土に額をつけ

たなごころ土を掬う指の隙間から零れるたびに大地の鼓動が彼の胸に沈んでいく祈る様に囁いた天の恵みは眠らない芽吹きも嵐も死さえも抱きながら息づいて

「父さん俺も行くよ俺を導いてくれ大地よ」

その瞬間その祈りに応じて足元の生命の源は僅かに震えた大地の粒子が光を帯びて彼を包んだ

それは誓いの証だった大地は囁く土に生まれ根となり根を張れ闇と恐れを越え息吹をもたらせ歩け踏みしめた分だけ力となる土に還る者たちよ

「ジャタ」は立ち上がり、東の地平線を睨んだ

そこに待つのは絶望か、それとも希望か一歩踏み出すごとに足裏に伝わる律動が強くなる彼の鼓動と重なり合い

まるで星そのものが彼の旅を後押し、している様だった土の上に刻まれた

その影は、さながら天壌そのものが形をとり土に育まれ守られた少年が大地その物の運命を担い歩き始める

「ジャタ」は嚆矢を刻む、その一足が彼自身の芽吹きだった

この日より土の少年の旅は始まった人は後に歌う「根を張りし者は揺るがぬ大地を纏い影を打ち砕く勇者」と
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

踏み台(王女)にも事情はある

mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。 聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。 王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。

愛されない妻は死を望む

ルー
恋愛
タイトルの通りの内容です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

二十年仕えた王女が私を敵に売った。それでも守ることにした

セッシー
ファンタジー
二十年間、王女殿下の護衛騎士として仕えた。その殿下が、私を敵に売った。 牢の中で事実を知り、一分考えて——逃げることにした。殿下の目的を、まだ果たしていないから。 裏切りの真相を確かめるため、一人王都へ戻る護衛騎士の話。

処理中です...