「あまがみのみこと」

あまがみのみこと

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「あまがみのみこと」「アマネレイラとアマネミチカの物語」「銀髪の歌姫」第一章:暁に歌う銀の双子

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夜の闇は静かに沈黙していた漆黒に沈む大空は

まるで時を越えて語る古の書物のようだった、その頁に散りばめられた星々は遠い記憶の断片を映していた

その星の一つに人々は耳を澄ませば歌が聴こえると信じていた科戸の風に揺れる子守歌にも似ていて魂を丁寧にやさしく撫でるような調べ

それが「あまがみのみこと」の名と共に伝わる始まりの歌であった世界を抱きしめる時津風は草木の間を滑るように通り二つの月は遠く

しかし確かに銀色の光を地上に降らせていた、その光の下で一つの命は一つの運命を運び

そして又もう一つの命が同じ空に問いかけるように生まれた

派生した神に至る前の存在「アマネ」一つの名に二つの魂「レイラ」と「ミチカ」銀の髪を持つ双子の姉妹は産声と共に夜を震わせた

その声は月の光を裂き星々を揺らし眠る大地の鼓動を呼び覚ます

幼き双子は、まだ世界の善悪を知らない、だが既に魔王の呪いの影は血の中に潜んでいた呪いは静かに囁く神に至ることは叶わぬと

そして一族の悪意は魂に小さな釘を打つ
「レイラ」の瞳は空を裂く雷鳴のように鋭く強い光を宿していた「ミチカ」の瞳は湖の底を映すように深く

そこに映るものは優しさだけでなく静かな覚悟でも

あった二つの声が重なると世界の裂け目が溶け合う

かのように響き、それは祝福であり同時に禍でも

あった夜の静けさに二つの声は織り成す

だが重なれば重なるほど影は深まり呪いは微かに笑う歌えば世界を救う

だが同時に己を縛る、それが双子の宿命であった

ある夜二人は古びた神殿跡に立っていた石畳は苔むし砕けた柱の影が月光に長く伸びる「レイラ」は膝をつき冷たい石を指先で撫でる

「……融合せし時……道は開かれん……」

碑文の文字は夜風に揺れ囁くように二人の耳に届いた

「ミチカ」は静かに、しかし確かに姉を見つめた
 
「姉様……その言葉を信じているの?……」

「レイラ」は答えず、ただ遠くの二つの月を見上げる

「信じている……というより縋っているのかもしれない……」

月光が髪を染め銀糸のように絡み合う二人の声はまだ重ならず

しかし未来の旋律を予感させた幼いころから双子は歌を愛した「レイラ」の歌は嵐に舞う炎のように激しく「ミチカ」の歌は湖面に落ちる雨のように穏やかだった互いの声を重ねるたび世界は瞬間的に光を帯び

そして同時に影は世界の隅々まで伸びていった

「どうして歌うと……胸が痛むの?……」
 
「レイラ」の問いに「ミチカ」はそっと答えた

「歌は祈りだから……祈りは呪いに近いのかもしれない……」

二人は手を取り合い沈黙の中で月光を浴びる銀の髪は光と影を映し

まるで天上の川のように揺れた村の人々は双子を恐れ同時に憧れた

「この子たちが世界を救うのか……それとも滅ぼすのか……」

答えは誰にも分からなかった、それでも双子は歌う

「私たちは神にはなれない……けれど誰かの孤独を照らすことならできる……」

その声は夜を越え未来を綴り、やがて訪れる融合の瞬間を静かに予告するように銀の月に溶けていった

彼女達の歌は絶望に沈む者を抱きしめ希望の芽を宿し沈む大地を支え

その響きは裂けゆく空を縫い合わせ夜明けを告げる鐘として幾度となく人々を導いていく事になる

銀髪の歌姫は永遠ではなかった幾度目かの戦乱が星を覆った頃に

その歌は唐突に途絶えていった次第に人々は混乱していき祈りを失いながら銷魂に沈んでいった空を仰いでも

もはや始まりの歌はどこにも響かなかった、そのとき人々は初めて知ったのだ「アマネレイラ」と「アマネミチカ」は、ただの神話ではなく確かに、

この広い世界のどこかで在った存在であり銀髪の歌姫が沈黙したということは確かにそれは失われたのだと気づき失われた原因は誰にも分からなかった

時は流れ「アマネレイラ」と「アマネミチカ」の存在はやがて伝説へと変わり人々の記憶から薄れかけ

だが完全に消え去ることはなかった、なぜなら彼女の歌の欠片は幾人かの魂に刻まれたからだ

その欠片を宿した者は夢の中で旋律を聴くという悲しみの夜に耳を澄ませば遠くから光の糸のように声が流れてくる

その銀髪の歌姫の魂の欠片を宿した者の中に一人の少女の名があった「あまがみのみこと」

「あまがみ」が初めてその歌を聴いたのは、まだ幼い頃だった夜中に目を覚まし誰もいない部屋で耳を澄ませたとき確かに声が聴こえた母の声でもなく叔母の声でもない

もっと深く、もっと遠く、しかし確かに優しく寄り添う声だった

その夜、彼女は泣きながら眠った、けれど翌朝、不思議なほどに心は軽くなっていた、その記憶が後に彼女を祈りの継承者と呼ばれる運命へと導いていく銀髪の歌姫という存在は

もはや人の形を持たない「アマネレイラ」と「アマネミチカ」は時の彼方に散り世界の呼吸の中に溶けてしまった

けれど消えてはいない歌は声を失っても旋律は空気の中に残り祈りは大地に刻まれている夜空を見上げれば誰もが

ふと胸の奥で思い出すだろう、この世界はまだ生きるに値すると

その思いこそが銀髪の歌姫の真実であった「アマネレイラ」と「アマネミチカ」という名がもたらす影響は「あまがみ」を中心に

やがて幾千の魂を揺るがしていく銀髪の歌姫の魂の欠片を継いだ者たちが互いに出会い衝突し

そしてまた響き合うことで新たな物語が紡がれるのだ銀髪の歌姫「アマネレイラ」と「アマネミチカ」は黙して語らず

だが、その、しじまの余韻は今もなお世界を揺るがし続けている

それこそが彼女が生きた証であり、これから語られる物語の根幹であった
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