2 / 2
哀愁の町に霧が降るのだ(椎名誠の多伝的バカ話型自伝的エッセイ)
このエッセイは俺の記憶を遡っているので適当極まりなく、年月に至っては平気で数年間違えるかシャッフルされている恐れがあるのだが(まだ一篇しか書いていないけど)、『哀愁の町に霧が降るのだ』を初めて読んだ歳は間違いなく覚えている。
十歳。
小学四年生。
昭和59年。
西暦1984年。
ロサンゼルス五輪の年です。
十二月の夜でありました。
父が俺の部屋に駆け込むや、超興奮しながら「この本は面白いからな! 本当に面白いからな! 本棚のここに置いておくから、読んでみてくれ、本当に、面白いから!」と勝手に大絶賛して、本を三冊、本棚のセンターに置いて去った。
これが『哀愁の町に霧が降るのだ』上・中・下巻。
十歳の俺が、初めて読むエッセイとなる。
題の下には「スーパーエッセイpart2」なる文字まで付いている。
スーパーエッセイである。
スーパーとpart2の意味は分かるが、(; ̄O ̄)セイ(失礼、誤変換)エッセイは初見。
辞書でエッセイを調べ、概念を知ってから本を捲ると、なるほど、著者が気侭に書き連ねていた。
いきなり「書き下ろし」についての蘊蓄から始まり、続いてこの本を書く事になった経緯と、実は全然書けていない経緯と、あまりにも筆が進まないのでカンヅメ(ホテルや旅館で作家や漫画家を仕事に集中させる事)にされた経緯を経ても、未だ筆が進まないという空前絶後の言い訳展開が続き、ひょっとしてこの著者は、ダメな人なのではないかと失礼な事を考えつつも、十歳の俺は笑いながら読進した。
この本を書けずに編集者から逃げ回っているという自虐ネタを振りつつも、著者の近況や心境がニヒルにコミカルにウフフフと進められていき、遂にようやく高校時代からの本編が始まる。
こうして、著者の近況と過去の青春群像劇が混じり合いながら、面白さと哀しさと訳の分からなさが語られていくエッセイが、十歳の俺に注入された。もはや分離不可能。手遅れです。
十歳の俺は、ただただ笑いながら読み耽り、部屋を揺るがす程に爆笑し続けたので、父は「ふっふっふ、あやつめ、読みおったわ」と察した。
読むと爆笑と苦笑が伴うエッセイ『哀愁の町に霧が降るのだ』は愛読書になり、十代の頃は一ヶ月に一度は読み返し、二十代は半年に一度は読み返し、四十五歳の今は電子書籍版で読み直している。
著者がこの本を書いた年齢を越しているせいか、笑いよりも哀愁の成分効果の方に目が行くようになっている。歳食ってんだなあ、俺。
良い作品の常で、読む方の年齢と共に味わいが変わって行くのだ。
つまり、何度でも読める。
喜ばしいのだ。
今回は、このエッセイを書く為に、『哀愁の町に霧が降るのだ』を再読している。
まさかそんな日が来るなんて。
十歳。
小学四年生。
昭和59年。
西暦1984年。
ロサンゼルス五輪の年です。
十二月の夜でありました。
父が俺の部屋に駆け込むや、超興奮しながら「この本は面白いからな! 本当に面白いからな! 本棚のここに置いておくから、読んでみてくれ、本当に、面白いから!」と勝手に大絶賛して、本を三冊、本棚のセンターに置いて去った。
これが『哀愁の町に霧が降るのだ』上・中・下巻。
十歳の俺が、初めて読むエッセイとなる。
題の下には「スーパーエッセイpart2」なる文字まで付いている。
スーパーエッセイである。
スーパーとpart2の意味は分かるが、(; ̄O ̄)セイ(失礼、誤変換)エッセイは初見。
辞書でエッセイを調べ、概念を知ってから本を捲ると、なるほど、著者が気侭に書き連ねていた。
いきなり「書き下ろし」についての蘊蓄から始まり、続いてこの本を書く事になった経緯と、実は全然書けていない経緯と、あまりにも筆が進まないのでカンヅメ(ホテルや旅館で作家や漫画家を仕事に集中させる事)にされた経緯を経ても、未だ筆が進まないという空前絶後の言い訳展開が続き、ひょっとしてこの著者は、ダメな人なのではないかと失礼な事を考えつつも、十歳の俺は笑いながら読進した。
この本を書けずに編集者から逃げ回っているという自虐ネタを振りつつも、著者の近況や心境がニヒルにコミカルにウフフフと進められていき、遂にようやく高校時代からの本編が始まる。
こうして、著者の近況と過去の青春群像劇が混じり合いながら、面白さと哀しさと訳の分からなさが語られていくエッセイが、十歳の俺に注入された。もはや分離不可能。手遅れです。
十歳の俺は、ただただ笑いながら読み耽り、部屋を揺るがす程に爆笑し続けたので、父は「ふっふっふ、あやつめ、読みおったわ」と察した。
読むと爆笑と苦笑が伴うエッセイ『哀愁の町に霧が降るのだ』は愛読書になり、十代の頃は一ヶ月に一度は読み返し、二十代は半年に一度は読み返し、四十五歳の今は電子書籍版で読み直している。
著者がこの本を書いた年齢を越しているせいか、笑いよりも哀愁の成分効果の方に目が行くようになっている。歳食ってんだなあ、俺。
良い作品の常で、読む方の年齢と共に味わいが変わって行くのだ。
つまり、何度でも読める。
喜ばしいのだ。
今回は、このエッセイを書く為に、『哀愁の町に霧が降るのだ』を再読している。
まさかそんな日が来るなんて。
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
アルファポリスであなたの良作を1000人に読んでもらうための25の技
MJ
エッセイ・ノンフィクション
アルファポリスは書いた小説を簡単に投稿でき、世間に公開できる素晴らしいサイトです。しかしながら、アルファポリスに小説を公開すれば必ずしも沢山の人に読んでいただけるとは限りません。
私はアルファポリスで公開されている小説を読んでいて気づいたのが、面白いのに埋もれている小説が沢山あるということです。
すごく丁寧に真面目にいい文章で、面白い作品を書かれているのに評価が低くて心折れてしまっている方が沢山いらっしゃいます。
そんな方に言いたいです。
アルファポリスで評価低いからと言って心折れちゃいけません。
あなたが良い作品をちゃんと書き続けていればきっとこの世界を潤す良いものが出来上がるでしょう。
アルファポリスは本とは違う媒体ですから、みんなに読んでもらうためには普通の本とは違った戦略があります。
書いたまま放ったらかしではいけません。
自分が良いものを書いている自信のある方はぜひここに書いてあることを試してみてください。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------