九情承太郎の「この映画を勧めるぜ」

ジョジョ・ラビット

ジョジョ・ラビット 前編 ジョジョの奇妙な敗戦

　コメディです。
　第二次世界大戦末期のドイツが舞台で、十歳の少年がヒトラーユーゲントナチス専用青少年洗脳団に入り、妄想の友達アドルフ・ヒトラーから助言をもらいながらがんばり続けるという、炎上案件しかないような設定の映画ですが、コメディです。
　疑わないで。
　コメディです。
　超魅力的な母親が反戦運動に励み、自宅の天井裏にユダヤ人少女が隠れ潜み、監督がアドルフ・ヒトラー役で主人公並みに走って踊ってヘイトスピーチかましますが、コメディです。
　完璧なコメディです。

　脚本を読んだ関係者が尽く惚れ込むのも当然の完成度でした。

　特にスカーレット・ヨハンソンが「完璧に美しく描かれた、宝石のような脚本」とまで絶賛。主人公を大きな心で見守り導く母親役を、カラフルにパワフルにナチュラルに演じています。
　アカデミー賞助演女優賞ノミネートは確実。

「ゴジラ（ハリウッド版のツナ食いゴジラ）を作ったスタッフなら、面白い作品を作るに違いないわ」と言って迂闊に「スパイダーパニック！」に出演した頃とは違う、円熟味を感じますね。

　主人公ジョジョ役のローマン・グリフィス・デイビスが、これまた規格外の演技力を持つ子役でして。
　おそらく今後、一二年に一度の頻度で、この名前を聞く事になるでしょう。映画に興味を持つ限りは。

　ローマン・グリフィス・デイビス。

　このエッセイを読むような奇特な趣味の人間であれば、遅かれ早かれ覚える事になる人名です。
　ガンダムで例えると、ガンダム三号機デンドロビウム並の演技力です。
　たぶん今世紀中に、オスカーを２０～２５回くらい取ると思う。俺は四十五歳なので、この予測を全て見届けるのは難しいだろうけれど、それでも１５回くらいは墓に入る前に確認出来ると思う。
　
　もう冒頭から攻めまくる展開で、褒める所しかないパーフェクト映画ですが、イチオシはサム・ロックウェル演じるクレンツェンドルフ大尉。自称キャプテンK。
　これから軍事訓練を施す子供達を前にした挨拶で、「ドイツ軍は敗色濃厚だけど、表向きは順調だから」「女性団員は、妊娠の仕方を覚えてね」とか言ってしまう正直な人。子供達がドン引きしているのに、正直さが止まらない。つーか、敗戦間近で開き直っているキャラです。仕事中に、飲酒するし。恋人とキックオフするし。
　こんな破天荒なクレンツェンドルフ大尉が…ネタバレになるから言わないもんね！
　この先はー、いつものアレだからー

　この先は、くれぐれも、映画を観た後で、後編へ進んでね。
　警告したからね？
　警告したからね？