笑う花

マルゾンビ

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笑う花

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何気ない日常をどうしたものか、
色と言うか、花と言うか、
毎日に何かないか考えていたら、
会社の同僚から突然花の種を貰った。

みんなにこの悩みを言ったことないのに、
偶然なら、粋なことをするな神様も。
同僚は敢えてどんな花が咲くかは育ててみて下さいと言うだけだった。

でも、独り身の男が、
植木鉢を買って土を買って、如雨露を買ってってするか?
申し訳ないが一ヶ月程放置してしまった。

同僚はそんなこと御構い無しに、
育ててる?とか、芽が出た?とか、
すまないが、育ててない。
育てる気がしない、花と言っても本当の花を指しているわけじゃない。
彼女とか、遊びに行ける人とかが欲しい。

その同僚も僕が育てていることを信じており、
「次写真に撮ってきてくださいよ」と凄んで言われた。
困った、それは無理だ。
今更ながらホームセンターに行き、植物を育てきれるものを揃えて、
写真が欲しいと言われたその日から育て始めた。

最初は芽なんて直ぐに出ると思ったが、
無論そんなことはない。
一日二日なら、誤魔化しも効くが、
一週間もかかったら疑いの目も向くのは当然だ。

「まさか、育ててなかったんでしょ?」

いやいや、ちゃんと水あげてるんたけど芽が出てこなくて。

「前は芽が出て、葉っぱも大きくなったって言ってたじゃないですか!」

おいおい、そんなにムキになるなよ、
育ててるのは本当だから、もうちょっと待って。

「うーむ」

同僚は不満げな顔をして業務に戻った。
それから二週間経つと、
芽が出て、小さな葉が土から顔を出していた。

それを写真に撮る、
同僚に見せる、「〆≠×!!!£!!!」
それは言うな謝るよ。

芽が出ると早いもので、
グングン伸びた、
なんか可愛い、愛おしく感じてきた。

すると、
誰かに「おい」と呼ばれた。

え?誰?コワ…

「こっちだよ」

下の階?テレビか?

「コントじゃないんだから、
目の前の葉っぱだよ、こっち見ろ!」

血の気が引いた。

葉っぱが喋ったのだ、紛れもなくこいつであろう。

「ははは!」

笑ってる。
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