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第2章

50.俺が口出しすることもなく…

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 「ソルさんこんにちは。俺は依頼が終わったのでその報告に来たんです。」
 「そうか。で、何か揉め事か?遠くからでも声が聞こえてたぞ。」
 そう言いながらソルさんが俺達の間に入り、目の前のパーティに目を向けると皆が緊張した面持おももちで立っていた。

 目を泳がせながらワトグルが話し出した。
 「ソ、ソルさんお久しぶりです!!こ、これは……あれです!!この初心者が調子に乗っていたから注意していたんです。」
 「そうだったのか?ミナトが調子に乗っていたと……。」
 「はい、ソルさんは騙されているんです!!こいつは3ヶ月くらい前から始め出した初心者ですよ。だからソルさん達のパーティにいては足を引っ張るだけだから、身の程をわきまえるようにと。」
 「ほ~、足を引っ張るね……。」
 ソルさんが俺に顔を向けると口元がニヤついてるのが見えた。これは何かたくらんでいそうだな。

 ワトグルからはそれが見えていないのか、更に言葉を続ける。
 「そもそもテイマーだから本人の戦闘力も低いだろうし、テイムしているのもその弱そうな犬っころだし!!」
 そう言いながら俺とハクに向かって指を指してきた。
 「弱そうな犬っころ」と言われたハクは興味もなさそうに欠伸あくびをしている。
 俺はと言うと、ソルさんが何やらウインクをして「あとは任せておけ!」という合図を出してきたので黙って聞いている。しかしこの流れはしかしない……。

 ソルさんは少しずつワトグルを挑発しているように話しかける。
 「テイマーだからって本人が弱いとも限らないだろ?」
 「でも強いテイマーなら、もっと大きくて強そうな魔獣を捕まえますよね?そんな子狼しかテイム出来ないってそいつの魔力も低いってことでしょう?」
 「なら、ワトグルの方がミナトよりも戦闘力に優れていると?」
 「当たり前です!!」
 「じゃあ一対一で勝負してみたらどうだ?ミナトはもうすぐCランク昇格試験を受けることだし、合格すればワトグルと同じ冒険者ランクだ。どれ程の実力差があるか、先輩として教えてやればいい。」
 「分かりました。俺が戦いの何たるかをこいつに知らしめてやります!!」
 「じゃあ午後から俺が試験官でその勝負を見てやろう。またその時間にギルドのスペースに集合だ。」
 「分かりました。失礼します!!」
 俺が言葉をかける間もなく、トントン拍子に話が進んでしまった。俺が昇格試験を受けるのも初耳だし、ワトグルとの勝負を受けるとも言っていない。

 ワトグル達のパーティメンバーがその場を去るとソルさんは振り返り俺にこう伝えた。
 「だ(笑) じゃあまた後で!!」
 「なんであんなこと言ったんですか……。」
 「あいつは言葉で何度言ってもまたミナトに突っかかるだろうと思ってな。それにテイマーだから弱い、初心者だからなどと油断しているといつか足をすくわれる。それを今のあいつに気づかせたかったんだ。」
 面白がって話を進めたんだと思っていたが、ソルさんは俺とワトグルの将来を思って言ってくれていたのか。とことん面倒見のいいソルさんに俺は尊敬の眼差しを向けた。ただ気になることがひとつ……。

 「俺、Cランク昇格試験あるんですか?」
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