わたしは、グレイ

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わたしは、グレイ

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 わたしは、グレイ。
 森に住んでいる。

 わたしが地球にきたのは、地球の暦でいうところの1750年代だったと思う。
 地球はわたし達の先祖が一時期住んでいたと星だ。
 先祖達が好んで暮らしていたのは主にエジプトや日本だったと聞く。
 どちらの国にも何故だか王と呼ばれる人がいてその王が死ぬとやたら大きな建物に財宝や生きた人間と共に埋葬されるのだというから不可思議だ。
 そしてわたし達の先祖もその墓を建てるのに力を貸したというのだからお笑い話である。
 ある時、争いが起きてわたし達の先祖は手をひいた。
 あれから1500年。流石にもう争いもおさまっているだろう。
 私は仲間達と地球に行ってみる事にした。


 宇宙船から地球を見てわたしは息を飲んだ。

 なんと。
 話では聞いていたが蒼く美しい星がそこにはあった。
 まるでプレアデス人の瞳のようではないか。
 わたしも仲間もうっとりとその星を見つめた。

 これほど美しい星なのだ。
 住んでいる生き物もさぞや美しいだろう。
 胸の期待は高まった。
 
 最初に降り立った地はオーストリアという国だった。
 煌びやかな宮殿が建っている。
 そこに生活している者達は裾の長い民族衣装をまとっている。
 女性の衣装はやけに腰の辺りが窮屈そうだが当人達が好んで着ているならそれもよかろう。

 おや、何やら騒々しい。
 隣国からの使者というのが慌ただしく行ったり来たりしている。
 ふむふむ。女が王位を継承したというのが気にいらないらしい。
 攻め入るなら今が絶好のチャンス?くだらない。
 なんて思っていたらあっという間に戦争が始まってしまった。
 おいおい。
 そんなくだらない理由で戦争を始めてしまうのかい。
 しかも兵として戦っている者達は何が理由で戦っているのかよく分かっていないではないか。
 なんという事だ。
 これは確かに先祖が見限ったというのも頷ける。
 なんとも愚かしい生き物だ。

 しかしこれだけで判断しても悪かろう。
 仲間と励まし合い、別の国に移る事にした。
 ポーランドという国に行ってみるとその国の王が追放されるところだった。
 あっという間に別の国の者がやってきて国王の座を乗っ取ってしまった。
 なんという事だ。
 そもそも王制というのが解せない。
 誰が偉くて誰が偉くないだの全くくだらない事である。

 次いでフランスという国に行ってみた。
 ここでもまた煌びやかな宮殿が建っていた。
 おや、しかしよく見ると貧しい者は貧しかった。
 こんなに近くに困っている者がいるというのに宮殿で暮らしている者達はよく気にならないものだな。
 あ!食べる物がなくて死んでいる子どもまでいる!!
 なんという事だ。
 などど悠長に構えていたらここでも革命という名の争いが起こった。
 よく分からない罪状で国王や王妃が次々と処刑されていった。
 人が同じ人を裁くというのか。
 なんて滑稽なんだろう。
 そしてその方法の残酷な事。
 木と木の間に首を固定し、上から刃が降りてくるのだ。

 我々は茫然とした。
 正気の沙汰ではない。
 地球人とはなんと残酷な生き物だろう。

 仲間はすっかり呆れて「星に帰る」と言い出した。
 わたしも一緒に帰ろうか。
 いや、しかしまだほんの数十年しかこの地球を見ていない。
 あと100年、200年すればここも平和になるかも知れない。

「わたしは残るよ」 
 わたしは仲間に言った。
 仲間は一緒に帰ろうとわたしを説得したが、丁重に断った。
 仲間はわたしと握手を交わし、星に帰って行った。
 
 わたしは1人、何か国か歩いてまわった。
 どの国もあまり代り映えしなかった。
 そして悲しい事に1度生け捕りにされかけた事もあった。

「エイリアン!エイリアン!!」
 とわたしを掴んだ彼らは言っていた。
「エイリアン」というのは地球外生命体の事だろう。
 それにしてもわたしの姿はこの星ではそんなに変わっているのだろうか……。

 失望の中、最後に立ち寄ったのが日本だ。
 大奥という謎の制度があり、大きな屋敷に沢山の女性が生活をしていた。
 なんと1人の将軍にこんなにも妻や妻候補がいるのか。
 そんなに男性の数が少ないのだろうか。
 それにしてもこんなに多くの女性が一緒に生活しているのだ。さぞや皆仲が良いのだろう。
 いや、違う。それは表面だけの事だった。
 そしてこの国にも処刑があり、その方法がまた酷い。
 罪人自らが腹を切り裂くという手法を取っていた。
 しかもこれには作法があるらしく自刃マニュアルまであるというから驚きだ。
 
 駄目だ。
 どうしてもわたしには解せない。
 やはり仲間と共に星へ帰るべきだったか。
 そう思った時、星に帰った仲間からテレパシーで語りかけられた。

「そっちはどうだい?我々の星は今日も愛で満ち溢れているよ」

 え……。
 なんだかとてもみじめになった。
 わたしは一体何をしているのだろう。
 しかしわたしは「うん。まあまあさ」とだけ返事をし、またトボトボ歩きだした。
 
 せっかくこんな遠くの星まで来たのだ。
 1つくらい良い思い出を見つけて帰りたい。
 そんな事を思いながら辿り着いたのがこの森だ。
 
 素晴らしい。
 周りが木々で覆われている。
 人間にとっては足場が悪いらしく誰も入ってはこない。
 それ故か人と接触していない鳥や獣が沢山いる。
 そして水や食べ物も豊富ではないか。 
 
 ここだ。
 わたしが探していたのはここだったんだ。

 わたしは暫くここに住む事に決めた。
 なあに、あと数百年住んでみてここに飽きたらまた移動すれば良いさ。
 その時こそ平和になっているかも知れないし、自分の星に帰っても良い。
 
 そうだ。
 いろいろな生き物達とここで暮らすのも悪くない。


 わたしは、グレイ。
 森に住んでいる。 
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