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ぼくとパパのふしぎなぼうえんきょう
しおりを挟む「おぅい。おみやげあるぞー」
ふとんにもぐってママにえほんをよんでもらっていると、へやのそとからこえがきこえてきた。
「パパだ!」
ぼくはとびおきて、いちもくさんにげんかんにむかった。
ねちゃうまえにパパがかえってくるなんてめずらしい。おみやげっていったいなんだろ。
くつをぬぐパパのよこにかみぶくろがおいてある。
「これ、なに?」
もちあげるとそれはずっしりとおもかった。ぼくはワクワクしてきた。
「もう。ねるとこだったのに」
ママがプリプリおこりながらぼくのあとをついてきたのをみて、パパはかたをすくめた。
「ぼく、これへやにおいてくる。それでもうねるよ」
ぼくははやくちでいった。だってママはいまにも「あけるのはあしたにしなさい」っていいだしそうだったからだ。
「あら、えほんのつづきは?」
「いい。またあしたにする」
かみぶくろをかかえてぼくはへやにもどった。
そしてママにきづかれないようにしずかにかみぶくろをのぞきこんだ。なかにはほうそうしにつつまれたはこがはいっていた。
もう、じれったいなぁ。これじゃなにがはいっているのかわからないじゃないか。
そうっとかみぶくろからはこをだすとうらをひっくりかえし、セロハンテープをゆっくりはがしはじめた。はやくなかがみたいからビリビリにしたいとこだけど、そうするとあとでママがおこるんだ。「もったいない」って。
あ、ちょっとはがしたあとがついちゃった。いいや、きづかなかったことにしよう。ぼくはほうそうしのなかからはこをとりだした。
はこにはほしぞらみたいなえがかいてあった。それからそのまんなかにかいてあるもの、それは。
「ぼうえんきょうだ!」
おもわずさけんでしまったからぼくはあわててじぶんのくちをおさえた。そしてドアのほうをみた。
ママにはきこえてないよね?そうおもったときだった。
ガチャリ。とドアがあいた。
やばい、ママだ!
そうおもって、あわててふとんにもぐろうとおもったんだけど、はいってきたのはパパだった。
「なぁんだ」
ぼくはたちあがりかけてたけどまたこしをおろした。
「なぁんだってことはないだろう」
パパはそういいながらへやのなかにはいり、ドアをしめた。
「ねえ、これどうしたの?」
「かいしゃのひとにもらったんだ」
ぼくのよこにすわりながらパパはいった。なぁんだ、やっぱりかったんじゃないのか。そうだよな。たんじょうびでもないのにパパがこんなプレゼントをくれるわけないもん。
「ねえ、はやくくみたててよ」
ぼくはパパのうでをひっぱった。パパは「しょうがないなぁ」といいながらもうれしそうにはこをあけた。
うわぁ、かっこういいんだ。なかからはあおくてキラキラしたつつがでてきた。
「スマホでさつえいなんてのもできるのか。いまどきのぼうえんきょうはすごいなあ」
パパはかんしんするようにいった。
せつめいしょをみながらパパはすいすいとぼうえんきょうをくみたてていった。そしてビデオカメラにつけるようなさんきゃくをとりつけた。
ぼくはへやのカーテンをあけた。まどのそとはあかるい。ちょうどつきがみえていた。
パパはつきにぼうえんきょうをむけた。そしてぼうえんきょうのしたについているねじをくるくるとまわした。
「おおっ。みえるみえる」
「えっ、どれ?」
ぼくはパパをおしのけてぼうえんきょうにめをひっつけた。
「わあ」
ほんとうだ。つきがみえる。すっごい。ひょうめんのクレーターまでみえるぞ。
そうおもったときだった。
とつぜんつきがさかさまになった――きがした。
ひょっとしたらきがしただけかも。だってつきなんてそもそもまんまるでどっちがうえかわからないもの。
だけどなんだろう。とにかくめのまえがぐるっとしたんだ。
「あれ?」
となりにいるパパをみてぼくはまたへんなかんじがした。
なにかがおかしい。
ぼくたちがいるこのへや、いつものぼくのへやじゃないぞ。だってパパのうしろはただのくろいかべだ。
ぼくはおもわずへやをきょろきょろとみまわした。
やっぱりだ。どこもまっくろ。
へやのかべはしろのはずなのに。それにぼくのおもちゃばこもふとんもどっかにいっちゃったみたいだ。もちろんぼうえんきょうもどこにもないぞ。
パパもそれにきづいたみたいでポカンとしながらぼくをみた。
「な、なぁ。これなんだろう」
パパにいわれてぼくはぎょっとした。だってまっくろなここからみえるまどはいつものカーテンのかかったしかくいまどじゃなくて、ただのまるいあなだ。というかぼくたちはまるでどうくつにいるみたいで、まるいあなはでぐちみたいにみえる。そしてそのまえにはしろっぽいすなみたいなじめんがある。
さっきまでのつきはいったいどこにいったんだろう。いや、このじめんはまるでつきみたいだ。さっきみえたクレーターのもようみたいなのだってついてるもん。しかもさっきよりずっとずっとはっきりと。
とつぜんパパはたちあがった。
「パパ?」
いったいどうしたの?そうきこうとおもったときにはパパはでぐちのまるにむかってジャンプしていた。
「パパ!!」
パパのすがたがきえた。まるのそとにおちたんだ。
え?まるのそと?
「すごいぞ!」
パパのこうふんしたこえ。おそるおそるまるのでぐちをみてぼくはまたびっくりした。
パパはすなのうえにたっていた。
それからうさぎみたいにぴょーんぴょーんとはねてみせた。
ここ、でられるの?ここぼくのへやだよね?いったいどうなっちゃったの?
「ほら、きてみろよ」
パパはすいーっとくうちゅうにうかんだ。
そしてまるのそとからぼくのてをつかむとぼくをそのままひっぱった。
「まってよ。パパ」
「こわいのか?」
「こ、こわくないよ」
うそ。ホントはちょっとこわかった。でもぼくはつよがっていった。そんなぼくをわらうとパパはぼくをまるのそとへつれだした。
「わあっ」
ぼくのからだはちゅうにういた。ぼくはパパにしがみついた。
「す、すごい」
ぼくのからだはゆっくりとすなのうえにおりた。
あしをそっとじめんからはなしてみるとぼくのあしあとがくっきりとついていた。
「うわぁ」
あしにすながつく。サラサラだ。ぼくがいつもいくこうえんのすなとはぜんぜんちがう。
「おい、みてみろよ」
パパがポンとぼくのかたをたたく。かおをあげるととおくにあおいほしがみえた。
これ、しってる。ずかんでみたぞ。『ちきゅう』だ。
え?ってことはここは??
このすなだらけのじめんはつきってこと?
しんじられない!
ぼくはつきにいるんだ!
パパがとびはねるのをみてぼくもジャンプをしてみる。たいしてちからもいれてないのにからだがおおきくはねる。トランポリンともちがう。からだはやけにかるかった。
すごい、すごい。
ぼくはつきにいるんだ!!
ぼくは、つきに……
「ほら、おきて。あさよ」
ハッ。
ぼくはめをさました。
「にちようだからっていつまでねてるの?もう、パパまでこんなところでねちゃって」
ママのいつものこえにきがつくとぼくはいつものふとんにねていた。ぼくのとなりでパパもめをこすっている。
「ぼうえんきょうみながらねちゃったんでしょう」
ママはためいきをつきながらまどのほうをみた。まどぎわにはだしっぱなしのぼうえんきょう。まどもあけっぱなしだ。
なぁんだ、ゆめか。ちぇっ。
がっかりするぼくにパパはママにばれないようにウインクをしてじぶんのあしをゆびさした。パパのあしにはなにかついてるぞ。
あわててふとんをめくるとぼくのあしにもそれはついていた。
すなだ。これって、……もしかして。
「まあ、どうしたの?ふたりとも。にやにやして。はやくあさごはんたべにいらっしゃい」
ママがへやをでていくのをみとどけてからパパとかおをみあわせてわらった。なんだかくすぐったいようなきもちになった。
つきにナゾのちいさなくぼみがいくつかはっけんされて「せいぶつ、はっけんか?」とテレビのニュースばんぐみでわだいになったのはそれからなんにちかあとのことだった。
それがぼくとパパのあしあとだってことはもちろんふたりだけのひみつだ。
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