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春風を連れた帰路
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馬車は彼の田舎への帰路を行く。
そんな道中、姫が不意に窓の外を覗き込んだ。
そして、「あれを摘んではくれぬであろうか。」
指さしたその先にあったのは苺と思しき赤い実が群生していた。
「相、分かった。しかし無断で持ち帰るわけにはいかない。」
そう言うと、若殿はそこらに居たお爺さんへ声を掛けると、心づけを懐から出して、赤く熟れた籠いっぱいの苺を受けとると、姫は気づかぬうちにすぐ横に立っていた。
「ありがとう。お爺さまも若君さまも。」
精一杯の笑顔は若の目にも至極眩しく映り、二人は改めて苺のお礼を口にすると、道中に頂く為に川を探し、そこで清めてから頬張った。
雪解けは近い。
じきに春風を感じる事になるだろう。
そんな予感を携えて、馬車の間から春風が二人の頬を掠める。
それからしばらく行くと、いよいよ近づいてきたところで、子供らの遊び場から賑やかな子供たちの声が聴くともなしに聞こえてきた。
「こんなに沢山の子供は初めて見ましたわ。」
その光景をどう思っているか気になった若殿は、「子供の声は如何様に聞こえますか?」と尋ねる。
すると、「楽し気でとても良い。正直、混ざりたいくらい!」
若殿さまは馬車をそこらの淵へ停めさせると、いそいそと向こう側へ周り、「お手をどうぞ」と極自然にエスコートしていた。
過去にそんなことなど一度たりともしたことが無く、そんな自分の姿に驚いた様子。
そんな彼の様子を横目に見つつ、姫は緑の青々と生えた空気を大きく吸い込む。
そして、春風が桜の花びらを連れてくるのを感じながら、ざわめきながら広がる草原に腰を掛けると、「そういえば貴方の名を尋ねていなかったような」と言うと踵を返し、姫は若殿と向き合って、「私は明楽<あきら>、そなたは……?」
「僕の名前は智秋<ちあき>、改めて宜しくお願い致します。」
智秋がすっと手を出すと、明楽は指をしっかりと絡め、暮れかけた空を仰ぎ、家路を急いだ。
行きにはあった白い息はもう出ない。春を告げる足音がそこまで近づいているらしい。新しい楽しい人生の始まりを告げる。そんな予感。
<終>
そんな道中、姫が不意に窓の外を覗き込んだ。
そして、「あれを摘んではくれぬであろうか。」
指さしたその先にあったのは苺と思しき赤い実が群生していた。
「相、分かった。しかし無断で持ち帰るわけにはいかない。」
そう言うと、若殿はそこらに居たお爺さんへ声を掛けると、心づけを懐から出して、赤く熟れた籠いっぱいの苺を受けとると、姫は気づかぬうちにすぐ横に立っていた。
「ありがとう。お爺さまも若君さまも。」
精一杯の笑顔は若の目にも至極眩しく映り、二人は改めて苺のお礼を口にすると、道中に頂く為に川を探し、そこで清めてから頬張った。
雪解けは近い。
じきに春風を感じる事になるだろう。
そんな予感を携えて、馬車の間から春風が二人の頬を掠める。
それからしばらく行くと、いよいよ近づいてきたところで、子供らの遊び場から賑やかな子供たちの声が聴くともなしに聞こえてきた。
「こんなに沢山の子供は初めて見ましたわ。」
その光景をどう思っているか気になった若殿は、「子供の声は如何様に聞こえますか?」と尋ねる。
すると、「楽し気でとても良い。正直、混ざりたいくらい!」
若殿さまは馬車をそこらの淵へ停めさせると、いそいそと向こう側へ周り、「お手をどうぞ」と極自然にエスコートしていた。
過去にそんなことなど一度たりともしたことが無く、そんな自分の姿に驚いた様子。
そんな彼の様子を横目に見つつ、姫は緑の青々と生えた空気を大きく吸い込む。
そして、春風が桜の花びらを連れてくるのを感じながら、ざわめきながら広がる草原に腰を掛けると、「そういえば貴方の名を尋ねていなかったような」と言うと踵を返し、姫は若殿と向き合って、「私は明楽<あきら>、そなたは……?」
「僕の名前は智秋<ちあき>、改めて宜しくお願い致します。」
智秋がすっと手を出すと、明楽は指をしっかりと絡め、暮れかけた空を仰ぎ、家路を急いだ。
行きにはあった白い息はもう出ない。春を告げる足音がそこまで近づいているらしい。新しい楽しい人生の始まりを告げる。そんな予感。
<終>
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