王子様、お守りいたします~悪役令嬢は暗部に入ることにした

猫田あや

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1.アクシデント

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マーサ王国は本日も晴天なり。雲一つない青空に、街の石畳を照らす太陽。いい陽気だ。だってのに、なぜ俺は粉まみれで地面に転がってるんだ!?俺、仮にもこの国の第3王子ぞ?第3王子ぞ?
顔を拭い、なんとか立ち上がって体の小麦粉もはたく。ったく自慢の金髪も形無しだ。はらうたびに舞う粉にむせ、青い目をしばたたかせながら、あたりを見回すと、この騒動の元凶である侯爵令嬢がべちゃっと木の空き箱にまみれて倒れていた。

(助けるべきなのか…?いやまあ俺にとってはどうでもいいにしろ、スポンサーの娘だしな…)

無視するのも後を引きそうなので、俺はそのカエルのように倒れこんでいる彼女にかけより、外向きの笑顔で抱き起した。

「カレン嬢は元気だな…だが、前はよく見て歩いたほうが良いと思うぞ?」そう、彼女と連れ立って歩いていた、それがなぜか急に転んでしまった彼女に押されて、俺は小麦粉の袋の山に突っ込んでしまったのだ。
俺自身身分や職業柄、女性にしなだれられたり、不注意を装って抱きつかれることはよくある。でもさっきのあれはあきらかになんか殺意があるのでは!?という勢いだったぞ。

「あ~ごめんなさい、なんかにひっかかっちゃったみたいでぇ。でも、ミシェル様がぁ助けてくれたので、ちょっところんだだけですみましたぁ。ありがとうございますぅ~。」胸の前で手を合わせ、はちみつ色のうるんだ瞳で甘ったるく礼を言うカレン嬢。ピンクのふわふわの髪に、リボンやフリルがたっぷりと付いた可愛らしいワンピースの彼女は、俺が出会った中でも男が守ってあげたいと思う女性ナンバーワンだろう。

カレン嬢は俺たちが今度公演を行う劇場の持ち主である、ベルナー侯爵家のご令嬢で、俺たちの熱烈なファンだ。当主に頼み込んで、視察という名目で俺たちの公演の準備などを間近で見に来たらしい。本来ファンの子との交流はご法度だが、スポンサー関連なので仕方がない。それにフリフリ愛想を振りまいてはいるものの、ご令嬢らしくあまり踏み込んでこないので助かっている。

「とにかく、早く他の連中と合流しよう。俺たち最近厄介なものを見たせいで、狙われているらしいから…」この俺たち、というのは所属する劇団のメンバー全員のことだ。俺は第3王子ながら、歌劇団に所属してこの国だけでなく大陸中を渡り歩いている。ちなみに一番人気が俺だから、覚えておくように。

「きっと、悪い人もミシェル様にはかないませんよ~。でもみんな困ってるでしょうし、早く合流しちゃいましょうねぇ。」あっちの角を曲がったところから、キラキラしい波動を感じるのできっとあちらですよ~とカレン嬢にいざなわれるまま歩いていると、本当に俺の仲間たちがいたので驚いたが、まだ白い俺を見て爆笑する彼らを怒っていたらどうでもよくなった。もう二度と、カレン嬢とは2人きりにはなるまい。
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