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意地悪。
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「そろそろ、帰らないと…。お邪魔しました。カジマグ」
陽も落ち切った所で、俺は椅子から下りる。
『アゲートさん、その今夜は一緒にしませんか?』
カジマグは、多分精一杯の勇気を必要としたんだと思う。
一緒に、コラボライブを
との事なんだけど。うーん、なんで一緒に居るの?とか勘繰られてしまうのが
正直面倒でもあり。カジマグは平気なのかな、と気にはなるところだ。
でも、せっかく家にまで招いてくれたのだから、と頭の中でグルグル考えてると
『あ、じゃ今日は…やめときますね。もっとこう打ち解けてからにした方がいいか。』
「別に、打ち解けてない訳じゃないと思う。一緒にいるのが…知られるの、ちょっと照れくさい
って言うのかな?」
俺もまー、相変わらずのふわっとした事しか言えてないけど。
少なくとも、聞かれて困るような相手じゃない。もう少し、黙っておくのが自分としても
気が楽。そもそもが、まったく知らない人じゃなかったのだし。
「カジマグ、覚えてる?俺、いつだったかの雨の日にお店で派手にスっ転んだの」
あはは、と思い出して笑っていると眉をひそめて
『はい。鮮明に…滅茶苦茶心配しました。あれから、どこか痛みなどはないですか?』
真剣に聞き返してくれるから、やっぱりカジマグは良い奴でしかない。
「年上相手なのに、本当に…この呼び方で大丈夫か?失礼じゃない?」
カウンターの向こう側で、カジマグはコーヒーを淹れている。
本当に、好きなんだなぁ。と、見つめていると
『呼びたい様に、どうぞ。俺は、あんまり指定するのも好きじゃないんで』
「じゃ、…藍さん、で」
『で、帰るんですか?春秋』
「ゎ、急にリアルで呼ぶなよ…。帰んない、もうちょっと」
『落ち着かないんで、座ってくれるかな?』
「もぉ~、やっぱり藍さん怖いって…」
『普通ですよ。俺ね、優しさは春秋に分けてもらっていたので。』
座りにくい、カウンターに合わせた高さの椅子にまた座ってみた。
「背もたれないと、安定しないね。」
『俺の部屋で、長居する奴が居なかったせい、かな。むしろ酒飲みが多いから
さっさと帰って欲しいってのはあったかも』
「めっちゃ、意地悪…」
『世の中には、遠慮なしの人もいるからね。対策しないと。自分の生活を保てないんですよ?』
藍さんが俺の頭を撫でる。嫌じゃないから困る。藍さんはカジマグなのに
やっぱりどこか違う。優しく見えて、ちょっと怖くて、意地悪くもある。
きっとバランスが良いのかな。
俺は、俺のまんまだ。どこ行っても、何してても。
けど、藍さんは違う顔もあって大人で…不思議な魅力がある。
「どうしよ、話す事ない…」
『んじゃ、黙ってればいいよ?』
「ぇ~?」
『何をするか、も大事だけど。誰と過ごすかに意味がある気がする。』
「難しい、」
『聞くけど、春秋はここにどうしているの?』
カップに注いだコーヒーをカウンターから勧められて、俺は頭を下げた。
「どうしているの?って、藍さんと話がしたかったはず、なんだけど。どこからどこまで聞いて良いのか
悩んでる。」
『答えたくない事は、答えないから。何の心配もいらないと思う』
「そういうものかぁ…」
『俺から、聞いてみようかな。春秋は、俺と話意外に何がしたい?』
ドキッとする質問が来た。何となく、心のどこかでは期待していた問いだ。
こんな時に聞いて来るなんて、ずるい。
「俺さ、藍さんの朗読がすき。できれば、俺だけの為に物語を読んで欲しいなぁって…そんな
おかしなコト考えたりしてた。」
『他には?』
「ぇ…、藍さんは知ってると思うけど。俺、とある声優さんのファンでしょ?で、その人は
その人で、勿論好きなんだけど…藍さんのその落ち着いた声も大好きで、時々寝る前に朗読の
収録を掛けながら寝てる。なんだろう、守られてる気がして、でもお腹の奥の方があったかく
なる感じもあって…。同性の声に、こんな風に思うのってやっぱりおかしいかな?」
藍さんは、黙って首を横に振って
『おかしくは、ない。けど、物好きだなぁと思う』
苦笑いしている藍さんを見てると、何かおかしなコトでも言ったかな?と
急に、恥ずかしくなる。
「好きな声は、ずっと聴いてたいものでしょ?」
『そういうものかも、しれないね。』
当り障りのない話をしようとしても、知りたいのはプライベートな事ばかりだ。
話題選びは、気を使う。
「藍さんは、今好きな人とかいないんですか?」
『今…、は…気になる存在はいるかな』
「…ぇ、そうなんですか。」
『春秋は、俺でしょ?』
図星は、辞めて欲しかったかなぁ。俺は、何にも言えないし耳が熱い。
視線を感じる。バレバレなんだろうなぁ。
「やっぱり、無理!帰る…こんなの耐えられない」
ガタっと、立ち上がってハンガーに掛けられたジャケットをひっつかんで
玄関に向かった。
藍さんは、俺の方を向いて手を振っている。
『気をつけて帰れよ~、傘、忘れてかないようにな』
「お邪魔しました…。」
『後悔しないようにね、春秋。』
ドアを開けて、キッ、と藍さんを睨んで俺は部屋を後にした。
後悔なんて、毎日してる。あきらめも肝心だ。
何がいけない?俺はまた今日も、何を悔いるんだろう。
でも、慣れっこだ。カジマグのくせに…、なんかムカついて来た。
なーにが、優しさを分けてもらっただよ。
ん?待って、これは…どういう意味だろう。
優しくされると、…優しくしたくなる。もしかして、こういう意味かな?
俺が、優しくないから。素直に話さないから
藍さんは、暗にこの事を言いたいのか?
まだ、知り合って間もないほぼ他人何だから、気は使う。
廊下を出て、我に返る。
エレベーターまであと少し。
藍さんの連絡先も、俺は知らない。
まだ、他人で居たいならこのままでもいいとは思う。
「そんなのは、イヤだ…」
情けない、本当に情けない事だと思うけど。
俺は、藍さんの部屋に引き返した。
ドアを開けると、藍さんが立っていて抱き締められた。ゆっくりと閉まるドアに背中を預けて
俺は、藍さんからのキスに目を閉じた。
陽も落ち切った所で、俺は椅子から下りる。
『アゲートさん、その今夜は一緒にしませんか?』
カジマグは、多分精一杯の勇気を必要としたんだと思う。
一緒に、コラボライブを
との事なんだけど。うーん、なんで一緒に居るの?とか勘繰られてしまうのが
正直面倒でもあり。カジマグは平気なのかな、と気にはなるところだ。
でも、せっかく家にまで招いてくれたのだから、と頭の中でグルグル考えてると
『あ、じゃ今日は…やめときますね。もっとこう打ち解けてからにした方がいいか。』
「別に、打ち解けてない訳じゃないと思う。一緒にいるのが…知られるの、ちょっと照れくさい
って言うのかな?」
俺もまー、相変わらずのふわっとした事しか言えてないけど。
少なくとも、聞かれて困るような相手じゃない。もう少し、黙っておくのが自分としても
気が楽。そもそもが、まったく知らない人じゃなかったのだし。
「カジマグ、覚えてる?俺、いつだったかの雨の日にお店で派手にスっ転んだの」
あはは、と思い出して笑っていると眉をひそめて
『はい。鮮明に…滅茶苦茶心配しました。あれから、どこか痛みなどはないですか?』
真剣に聞き返してくれるから、やっぱりカジマグは良い奴でしかない。
「年上相手なのに、本当に…この呼び方で大丈夫か?失礼じゃない?」
カウンターの向こう側で、カジマグはコーヒーを淹れている。
本当に、好きなんだなぁ。と、見つめていると
『呼びたい様に、どうぞ。俺は、あんまり指定するのも好きじゃないんで』
「じゃ、…藍さん、で」
『で、帰るんですか?春秋』
「ゎ、急にリアルで呼ぶなよ…。帰んない、もうちょっと」
『落ち着かないんで、座ってくれるかな?』
「もぉ~、やっぱり藍さん怖いって…」
『普通ですよ。俺ね、優しさは春秋に分けてもらっていたので。』
座りにくい、カウンターに合わせた高さの椅子にまた座ってみた。
「背もたれないと、安定しないね。」
『俺の部屋で、長居する奴が居なかったせい、かな。むしろ酒飲みが多いから
さっさと帰って欲しいってのはあったかも』
「めっちゃ、意地悪…」
『世の中には、遠慮なしの人もいるからね。対策しないと。自分の生活を保てないんですよ?』
藍さんが俺の頭を撫でる。嫌じゃないから困る。藍さんはカジマグなのに
やっぱりどこか違う。優しく見えて、ちょっと怖くて、意地悪くもある。
きっとバランスが良いのかな。
俺は、俺のまんまだ。どこ行っても、何してても。
けど、藍さんは違う顔もあって大人で…不思議な魅力がある。
「どうしよ、話す事ない…」
『んじゃ、黙ってればいいよ?』
「ぇ~?」
『何をするか、も大事だけど。誰と過ごすかに意味がある気がする。』
「難しい、」
『聞くけど、春秋はここにどうしているの?』
カップに注いだコーヒーをカウンターから勧められて、俺は頭を下げた。
「どうしているの?って、藍さんと話がしたかったはず、なんだけど。どこからどこまで聞いて良いのか
悩んでる。」
『答えたくない事は、答えないから。何の心配もいらないと思う』
「そういうものかぁ…」
『俺から、聞いてみようかな。春秋は、俺と話意外に何がしたい?』
ドキッとする質問が来た。何となく、心のどこかでは期待していた問いだ。
こんな時に聞いて来るなんて、ずるい。
「俺さ、藍さんの朗読がすき。できれば、俺だけの為に物語を読んで欲しいなぁって…そんな
おかしなコト考えたりしてた。」
『他には?』
「ぇ…、藍さんは知ってると思うけど。俺、とある声優さんのファンでしょ?で、その人は
その人で、勿論好きなんだけど…藍さんのその落ち着いた声も大好きで、時々寝る前に朗読の
収録を掛けながら寝てる。なんだろう、守られてる気がして、でもお腹の奥の方があったかく
なる感じもあって…。同性の声に、こんな風に思うのってやっぱりおかしいかな?」
藍さんは、黙って首を横に振って
『おかしくは、ない。けど、物好きだなぁと思う』
苦笑いしている藍さんを見てると、何かおかしなコトでも言ったかな?と
急に、恥ずかしくなる。
「好きな声は、ずっと聴いてたいものでしょ?」
『そういうものかも、しれないね。』
当り障りのない話をしようとしても、知りたいのはプライベートな事ばかりだ。
話題選びは、気を使う。
「藍さんは、今好きな人とかいないんですか?」
『今…、は…気になる存在はいるかな』
「…ぇ、そうなんですか。」
『春秋は、俺でしょ?』
図星は、辞めて欲しかったかなぁ。俺は、何にも言えないし耳が熱い。
視線を感じる。バレバレなんだろうなぁ。
「やっぱり、無理!帰る…こんなの耐えられない」
ガタっと、立ち上がってハンガーに掛けられたジャケットをひっつかんで
玄関に向かった。
藍さんは、俺の方を向いて手を振っている。
『気をつけて帰れよ~、傘、忘れてかないようにな』
「お邪魔しました…。」
『後悔しないようにね、春秋。』
ドアを開けて、キッ、と藍さんを睨んで俺は部屋を後にした。
後悔なんて、毎日してる。あきらめも肝心だ。
何がいけない?俺はまた今日も、何を悔いるんだろう。
でも、慣れっこだ。カジマグのくせに…、なんかムカついて来た。
なーにが、優しさを分けてもらっただよ。
ん?待って、これは…どういう意味だろう。
優しくされると、…優しくしたくなる。もしかして、こういう意味かな?
俺が、優しくないから。素直に話さないから
藍さんは、暗にこの事を言いたいのか?
まだ、知り合って間もないほぼ他人何だから、気は使う。
廊下を出て、我に返る。
エレベーターまであと少し。
藍さんの連絡先も、俺は知らない。
まだ、他人で居たいならこのままでもいいとは思う。
「そんなのは、イヤだ…」
情けない、本当に情けない事だと思うけど。
俺は、藍さんの部屋に引き返した。
ドアを開けると、藍さんが立っていて抱き締められた。ゆっくりと閉まるドアに背中を預けて
俺は、藍さんからのキスに目を閉じた。
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