きみとは友達にさへなれない(統合)

あきすと

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⑬きみのせい(海月視点となります)

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細い透明な糸が切れる感覚を、忘れなかった。
僕は、また間違えたのだろうか?

気持ち悪くて、ずっとずっと飲み込んでしまっていた現実を
事もあろうか、雪ちゃんの前で…我慢できなくて吐露してしまった。

僕は、自分の名前を捨てても良い覚悟を持って高校を卒業後に
母親を探した。
祖父母にも協力をしてもらって、居場所を探していた。
でも、見つけられなかった。

探し始めてから数年後、祖父母のもとへととある病院から連絡があった。
母親は、僕の記憶とは一致しない程の別人になった様だった。
今後、簡単には面会できない事を知らされた。
息子である僕を見ると、なぜか錯乱状態になってしまい
祖父母には、お見舞いする事を遠慮する様に遠回しに言われてしまった。

原因は分からないけれど、家庭の事を思い出す事が
苦痛なのではないかと祖母がぼそりと言った。

浮気していた父に僕が似ているからだろうか?とも思いはしたが
あまりに遣る瀬無くて、考える事をやめた。

僕の周りに、本当ならば多く張り巡らされていたはずの
糸が、音もなく感覚だけ残して切れていく。

僕に、誰が繋がっているのかもう分からない。

もしかしたら、誰も残っていないんじゃ無いかと自棄になった時期があった。

考え、脳が心を丁寧にこれでもかと蝕んでいく。

大学に通っていた頃、急に昼夜逆転生活から始まって
とうとう生活を送る事がしんど過ぎて、休学する事になった。
生活の立て直しをしてくれたのは、とある人物だった。

約一年間。

止まった時計を再び進められる様になるまで、僕はいつも泥の様に眠ったり
過眠を繰り返して、協力者の力を借りてまともな食事を取れる様になった。

失いたくない、喪いたくない。これ以上僕のまわりの大切な人が
誰も欠けない様になるなら…僕は何だってしようとさえ思った。

協力者は、僕のバックボーンを知る人物でもあり
今後の人生を見据えた上で父親に話まで通してくれる
有能な人物だった。

「僕は、魂を売ったんだね。」
『……では、心を売らなければ良いですよ。』

協力者はとても綺麗に冷たい笑みを浮かべた。

言い得て妙だけれど、自分を納得させる術が他には見つからなかった。

あの日から、僕の脚は大学に向かわなくなっていた。
論文も完成したし。後は適当に教授と良い距離感を保ちながら
卒業の春を待つだけだった。

協力者は、今夜も僕の部屋を訪れる。
高層マンションの1室に親の金で住まう大学院生。
なんて嫌味な存在だろうと思う。

僕の部屋に父親の会社から遣わされている、協力者が
ただ1人だけ出入りを許可している。

数年前から僕の会社に入社した協力者と、思わぬ形で再会して
僕は心臓を掴まれた気分だった。

スーツのジャケットを脱いで、シャツブラウスの上から分かる胸の膨らみ。

『海月くん、ほら…』
僕のベッドの上に上がって、ゆっくりと長い髪が綺麗に広がり上体を倒す。

協力者は、時々こんな風にして僕を弄んだり
試して遊んでいる。

胸の奥が、差し込む様に痛いけど。

「良いの?」
『だって、キミが…フフッ』

僕と協力者のややこしい関係は、どう説明したら良いのか分からない。

ベッドに浅く腰を下ろして、リボン結びを解きボタンを1つずつ外していく。
白いレースのあしらわれたキャミソールその奥に、視線を移す。
「……どうして」
『どうして、でしょうね。あの姿ではダメだったから。かな…。』

僕は人生で初めて僕に告白してくれた、元先輩を
ただ分からない思いで見つめた。



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