きみとは友達にさへなれない(統合)

あきすと

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⑮迎え

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当たり前に思っていた生活が、ここにはある。
両親との団らん。

祖父との食事や1人での孤食に慣れていると、少し照れくささがある。

両親も2人で住んでいるのだから、もしかしたら寂しさを感じる事も
あったのだろうか。
と思うと、箸が止まる。

胸がなんだかいっぱいだ。

子供の頃は、こんな事感じてはいなかった。

あの頃よりは感受性が、より増したのかもしれない。


初秋の侘しさや、静けさは夕方から夜にかけてより感じるものとなる。
日の沈みが早い。
それは、この島においても同じだった。

両親に何かを求めたり、今後の事を相談する気はそれほど
無かったけれど。

身の振り方は考えた方が良いのかもしれない。
祖父を1人にするよりかは、この島に帰島しないものかと
切実に考えてしまう。

明子伯母さんは、きっと移転するだろうから。
いくらなんでも祖父と一緒には暮らさないだろう。
分からない事ばかりで、無意識に眉間に皺が寄る。

でも、きっと自分の中で答えは出ている。

2泊して、何か考えが変わったかと言えば特には無い。

どの家にも生活がある。
と、ひしひしと感じただけ。

帰ってもう一度考えようと思う。

これから何をするのか、誰と関わってどこで生きて行きたいのか。

『口出ししないわよ。雪緒の人生だから。』
帰りのフェリーに乗る前に、母親に背中を軽く叩かれた。
「ぅ、…決まれば、色々と。また、連絡するよ。」
『後悔する様なのは、選ばないようにね…お父さんと私はずっと、ここに居るけど。』
「ん…また、来れたら来る。」
『本の世界も良いけど、現実の…生身の人間の感情は、比べ物にならない事。忘れないで。』

波しぶきが舞う、小さな島に暮らす人々。
こんなにも本島からは離れていても、暮らしている人は数百人と居る。

「変に相談しなくて良かったのかも。」

彼の事を話しても、きっと何の関係も無いと言われるだろう。
確かに、自分でもそう感じている。

フェリーから下船すると、
『千代くん…!』
ここで聞くとは思わなかった声に、呼び止められた。

「…なんで、ココに……」
港で偶然会うだなんて事は、考えにくかった。
もしかしたら、と様々な考えが頭によぎる。

『お爺さんに聞いて…今日、帰るって。』
珍しく、私服姿で現れた彼は妙に
「偶然、じゃないと思った…。」
この前見た、最後の姿や表情からはまるで別人みたいに
爽やかにこの眼には見えていた。

『ゴメン。聞きだしてしまって…ただ、僕は』
「ここじゃ、何なので…どこかで座って話しませんか?」
帰りはバスと電車で帰るつもりだったから、彼が現れて驚いた。
駐車場まで案内され、
『となり、乗って。あ、荷物は後ろに置いて構わないよ。』
深い青色の車のボディに目を奪われる。

エスコートされて、言われるままに助手席に座る。
「……」
『シートベルト、締めたかい?』
「あ、はい…。」
心が落ち着かない。でも、動作は勝手に出来ているから
不可思議だった。

『少し、ここからは遠いけど…。海、好きだから離れがたいね。』
「……あの、」
ゆっくりと走り出す車と、ハンドルを手にする彼がまだまだ
違和感がある。

『言いたい事、聞きたい事…全部聞くから大丈夫だよ。』
「…分かりました。」
『お店、どこでも良い?』
「お任せします。」

『ハーイ。』

船の次は、車と来て俺は正直このまま眠ってしまいたかった。
脳が、少しだけふわ、ふわと揺れているみたいな
心地悪さが伝わって来ている。

少し黙り込んで、座席シートに体を深く預ける。
完全な酔いの一歩手前と言ったところか。

『…大丈夫?あ、もしかしてフェリーで酔っちゃってた?
もし良かったら、お水買ってあるから飲むと良いよ。』
「大丈夫です。」
『ドリンクホルダーにあるでしょ?それ、さっき買ったばかりだから。開けて飲んでいいからね。』

あー、何でこの人は…。
ちゃんとしっかり優しいから、困る。

「有難うございます。」
『眠ってても良いよ。着いたらちゃんと起こしてあげるから。』

彼の声が、遠くに聞こえた。
そこからの記憶は、無かった。
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