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⑤楓視点(過去の描写もあり)
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この地に流れ着き千年はとうに経っていた。
異国の船乗りと共に、とても大きな船で幾日も嵐の海を
航海の果てに、やって来た。
俺の主でもある、術者は学者でもあり占いや咒にも精通している。
ただ、異国で何をするのかはまだ俺は知らされてはいなかった。
見知らぬ土地で、聞きなれぬ不思議な言語。
はじめは、主に連れられておそらくはこの土地の領主などに
挨拶に出向いていたのだろう。
あまり主の用には興味も無かった。
案内された建物の構造や造り、生えている植物や風の香りがとても
独特で俺は、異国の地に居る事を実感する。
よく、分からなかったが主からすればこの地はそもそもの
先祖が生まれ育った土地だから縁があるのだと、言っていた。
『これでやっと、帰れるのだ。』
俺には、何の事か追及する事も無く警護も兼ねてこの地まで同行した。
「千年もずっと昔の話だ。」
『その、主さんって…どうしたの?』
「不慮の事故で、命尽きた。」
『それは、呪いのせいとか…』
今日は、週末に差し掛かり。杏が、わざわざ里帰りをしてくれている。
心では嬉しいのに、あまり露骨に表に出す訳にもいかなくて
なるべく視線を重ねない様にしていた。
「呪いなんてのは己の身をも滅ぼすだけだ。だから墓を2つ掘っておかねばならない。」
『若い、楓会ってみたかったなぁ。』
「外見なんていくらでも変えられるさ。」
『まぁ、そうなんだろうけど…。』
「俺は、主からの霊力を死ぬ前に全て受け継いでいた。多分、死期を本人は悟っていただろうな。そのくらいは出来る人間だった。」
何故か炎天下の外で。
敷地内の畑で、ナスを収穫したいと言った杏。
里帰りして早々に、まさか農作業をしたいと言うとは。
いつもいつも奇想天外で、本当に見ていて飽きないのが自分の伴侶の杏だ。
杏の気が済んで、木陰でひとやすみしつつ水分補給をして
風に吹かれていた。
『付き合わせてゴメン。』
「いや、構わない。どのみちそろそろ収穫の時期だった。」
『うん。ありがとう。』
「なんの手入れもしていないのに…すくすく育っていく。」
『…自然にお任せって事だね。』
汗で額に張り付いた杏の前髪を、そっと離してやる。
「生きているな。」
『うん、もちろん。』
「何か、あっても無くてもここはお前の家だから。いつでも来て良いんだ。」
『そっかぁ、…うん。たまに、心に余裕が無いと忘れそうになるよ。』
「あれだけ、共に時間を過ごしたのにか?」
杏はどこか申し訳なさそうに笑って
『忙殺されてるとね。人の中にいると、誰かの感情を意味なく共有しすぎて疲れたり。』
「俺は、人とはもう…あまり深くは関わらない。」
主の件ばかりではない。
妾の不幸な事故も体験し、人間と関わり続ける事には
少なからず抵抗がある。
浮世を少し離れて、気ままに暮らす方が性に合っている。
『楓は、そうでいいと思うよ。やっぱり持っている能力が大き過ぎて。人間にはあまり影響を
与えたく無いだろうし。逆に、利用目的で近付かれたら困る。』
この世がいつまで続くのかも分からないけれど。
どんな世であっても、杏とのらりくらりと生きて来た。
「半分人間のお前は、丁度良い。」
『気楽に行こうよ。これから先もさ。』
俺は、永く行き過ぎている最中に気が付いてしまった。
知らない方が良かった事に。
人間の食べ物を自分が食する事に、さしたる意味がない事。
いわゆる、栄養と言うものもこの体には影響しない。
空腹の意味がそもそも、人間とは違うのだ。
それでも、杏が丹精込めて作った手料理には
心を感じるし、美味しい事もきちんと伝わって来る。
「人間のフリをする事にも、そろそろ飽きて来たな。」
『羨ましいくらいだよ。こっちは、必死でさ楓にあんな事してもらってまで
人間の姿を保とうって必死なのに~。』
俺をいつでも真っすぐに正面から見て、意気揚々と話す杏。
いかにも人懐こそうなコロンとした瞳に、触れたくなる様な頬。
「お前が俺を求める限り、俺の存在理由が消えない。」
『悔しいけど、確かに。』
この指先で、杏の頬に触れたい。
汗が引き始めて、ひやりとする頬。
両手で感触を堪能する。
「この丸みが、好きなんだ…。」
杏は少しだけ上向いて、じーっと俺を見上げている。
曇りのない瞳は澄んで、俺の姿さえも映し出す。
やんわりと手を離すと、杏が触れていた部分を両手で撫でている。
『楓、色々…あるけどさ。俺と歩いて来てくれたよね。嫌な顔一つしないで、今は確かに
住む場所は離れちゃったけど。本当に辛いなら…俺も、覚悟はできてるよ。』
辛い…?
杏の言った言葉は、あまり身に覚えがない。
今の自分の状況は、辛ささえも無くなっている。
「辛くはない。なんで、そんな話になるんだ?」
『…楓って、いつもどこか遠くを見てる感じだし。なんて言うのかな?遠いんだよね、精神的に。』
「そう言う事か。考え事はしても終わりがない。漠然と、どうしたものかと思い考えるのは俺の性分だ。」
『思い詰める事は無いんだろうな。ってのは、分かるんだけどね。』
人間では無いのに、人間の様に思い悩んでしまう。
これは、俺が昔主から受け継いだ能力と一緒に俺の中に
浸透してしまった人間の性の1つかもしれない。
「万事うまくいっている。お前が案ずるような事は何一つとしてない。」
『…そうだね。せっかく収穫したナス、浅漬けにして食べようよ。』
「じゃあ、鷹の爪を積んで来よう。」
重かった腰を上げるを、先に立ち上がった杏が天を仰ぐ。
『ね、楓。絶対に…雲は止めたらダメだからね。』
「さすがに、それはしない。大丈夫だ。」
畑の一角に栽培している唐辛子をいくつか摘む。
真っ赤によく熟した赤い色味が、さっき覗き込んでいた杏の瞳とよく似た色味だ。
雲を止めるな、と言われて背中がゾクリとした。
時の流れを止めてしまう事は、俺にとっては造作もない事だ。
しかし、その反動が出てしまう事を杏は危惧しているのだろう。
よくよく、俺の事をまだ本能では危険視も出来ているのかと思うと
何故か面白いと感じた。
『楓、そんなにいっぱい要らないよ?少しで良いからね。』
カゴにひしめき合うナスを抱えて、俺のもとに杏はやって来る。
「子供舌だからな、お前は。さ、中に戻るぞ。陽に当たり過ぎた。」
『こんな冷暖房完備、空調管理された家に居たら外はもう鉄板みたいだよね。』
「まぁ、そうだな。そもそもこの空間にあまり居ない。」
『夏なんか地べたがとんでもなく暑くて、目玉焼き作れそうだけどね。』
世俗から離れて、精神の修行をしつつ暮らしている上に
異空間にも好きな様に存在できるとなれば。
この地に縛られつつも、自由に存在できる場所を選べるのだ。
「もっと、夏を楽しめばよかった、な。」
ぽつりと本音が出た。
それを聞き逃すはずの無い、杏。
『そうだよ!!もーっ、辛気臭い顔してぐだぐだ言ってないでさ。でっかい花火をドキドキしながら見上げたり
夏の海で昔みたいに他のみんなも誘ってビーチバレーしたり、BBQとか鉄板焼きしたかったよ。めっちゃ
俺の協力できる分野なのにさ~?妙にしんみりしちゃって!もっと俺を連れ出してよね!疲れさせてくれなきゃ。』
目の輝きが、単純に綺麗だと思って見詰めていた。
そうだ、少し前の俺と杏は、結構色々と出かけたりリア充だったのに。
「お前を、疲れさせては…いけないと心のどこかで思っていた。」
『ぇ?あ~…何となく言いたい事は分かるけど。こんなしんみりしてばっかり居るくらいなら
まだ疲れてる方がマシ。』
相変わらず、しっかりハッキリと言いたい事を言ってくれる。
「分かった。これからは多少の職質をされても(帯刀してるせいで)めげずに出かけよう。」
『でも、その刀って霊力が無いと見えないんだよね。』
「そうだ、何回説明しても理解されない。しかも現代においては所在不明扱いだから…余計に扱いに困るんだ。」
『~…紅葉が色づく頃にはまた必ず、俺から逢いには来るよ。』
少しだけ先の約束をしてくれる杏が、愛おしかった。
『楓、次は~…酢、と塩と…』
杏は器用に、収穫して来たナスを綺麗に台所で水洗いを済ませて
包丁で切っていく。
ただ穏やかにこの時間が過ぎて行けばいいと思っていた。
だが、杏はそれだけでは物足りないのだ。
瞬間瞬間を味わう様に、愉しんで生きていたいのだろう。
杏は半分が人間だ。人知れず、寿命を案ずることもあるのかもしれない。
いつまでも、当たり前の様に一緒に生きて行けるものだと思っていたのは
俺の方だった。
ならば、もっと…杏の生きている時間を慈しみたい。
「ものの数時間で、もう漬けあがったのか?」
『うん、だって浅漬けだもん。』
小さな器に、食べる分だけの水気を切って盛り付けた杏。
「昔を思い出すな…」
『懐かしいね。大変だった時期は畑の野菜も…この辺はもう家も無くなっちゃったけど。皆に
配ってあげてたんだよね。』
「素朴だけれど、美味いな。」
『ちゃんとご飯食べてる?仙人じゃないんだからさ。美味しいもの食べてね。』
杏と居ると、人らしく生きれている気がする。
人間とは何たるものかは今でも計り知れぬが、杏を見ていると
心の在り方が生き様に通じるのではないかと思う。
異国の船乗りと共に、とても大きな船で幾日も嵐の海を
航海の果てに、やって来た。
俺の主でもある、術者は学者でもあり占いや咒にも精通している。
ただ、異国で何をするのかはまだ俺は知らされてはいなかった。
見知らぬ土地で、聞きなれぬ不思議な言語。
はじめは、主に連れられておそらくはこの土地の領主などに
挨拶に出向いていたのだろう。
あまり主の用には興味も無かった。
案内された建物の構造や造り、生えている植物や風の香りがとても
独特で俺は、異国の地に居る事を実感する。
よく、分からなかったが主からすればこの地はそもそもの
先祖が生まれ育った土地だから縁があるのだと、言っていた。
『これでやっと、帰れるのだ。』
俺には、何の事か追及する事も無く警護も兼ねてこの地まで同行した。
「千年もずっと昔の話だ。」
『その、主さんって…どうしたの?』
「不慮の事故で、命尽きた。」
『それは、呪いのせいとか…』
今日は、週末に差し掛かり。杏が、わざわざ里帰りをしてくれている。
心では嬉しいのに、あまり露骨に表に出す訳にもいかなくて
なるべく視線を重ねない様にしていた。
「呪いなんてのは己の身をも滅ぼすだけだ。だから墓を2つ掘っておかねばならない。」
『若い、楓会ってみたかったなぁ。』
「外見なんていくらでも変えられるさ。」
『まぁ、そうなんだろうけど…。』
「俺は、主からの霊力を死ぬ前に全て受け継いでいた。多分、死期を本人は悟っていただろうな。そのくらいは出来る人間だった。」
何故か炎天下の外で。
敷地内の畑で、ナスを収穫したいと言った杏。
里帰りして早々に、まさか農作業をしたいと言うとは。
いつもいつも奇想天外で、本当に見ていて飽きないのが自分の伴侶の杏だ。
杏の気が済んで、木陰でひとやすみしつつ水分補給をして
風に吹かれていた。
『付き合わせてゴメン。』
「いや、構わない。どのみちそろそろ収穫の時期だった。」
『うん。ありがとう。』
「なんの手入れもしていないのに…すくすく育っていく。」
『…自然にお任せって事だね。』
汗で額に張り付いた杏の前髪を、そっと離してやる。
「生きているな。」
『うん、もちろん。』
「何か、あっても無くてもここはお前の家だから。いつでも来て良いんだ。」
『そっかぁ、…うん。たまに、心に余裕が無いと忘れそうになるよ。』
「あれだけ、共に時間を過ごしたのにか?」
杏はどこか申し訳なさそうに笑って
『忙殺されてるとね。人の中にいると、誰かの感情を意味なく共有しすぎて疲れたり。』
「俺は、人とはもう…あまり深くは関わらない。」
主の件ばかりではない。
妾の不幸な事故も体験し、人間と関わり続ける事には
少なからず抵抗がある。
浮世を少し離れて、気ままに暮らす方が性に合っている。
『楓は、そうでいいと思うよ。やっぱり持っている能力が大き過ぎて。人間にはあまり影響を
与えたく無いだろうし。逆に、利用目的で近付かれたら困る。』
この世がいつまで続くのかも分からないけれど。
どんな世であっても、杏とのらりくらりと生きて来た。
「半分人間のお前は、丁度良い。」
『気楽に行こうよ。これから先もさ。』
俺は、永く行き過ぎている最中に気が付いてしまった。
知らない方が良かった事に。
人間の食べ物を自分が食する事に、さしたる意味がない事。
いわゆる、栄養と言うものもこの体には影響しない。
空腹の意味がそもそも、人間とは違うのだ。
それでも、杏が丹精込めて作った手料理には
心を感じるし、美味しい事もきちんと伝わって来る。
「人間のフリをする事にも、そろそろ飽きて来たな。」
『羨ましいくらいだよ。こっちは、必死でさ楓にあんな事してもらってまで
人間の姿を保とうって必死なのに~。』
俺をいつでも真っすぐに正面から見て、意気揚々と話す杏。
いかにも人懐こそうなコロンとした瞳に、触れたくなる様な頬。
「お前が俺を求める限り、俺の存在理由が消えない。」
『悔しいけど、確かに。』
この指先で、杏の頬に触れたい。
汗が引き始めて、ひやりとする頬。
両手で感触を堪能する。
「この丸みが、好きなんだ…。」
杏は少しだけ上向いて、じーっと俺を見上げている。
曇りのない瞳は澄んで、俺の姿さえも映し出す。
やんわりと手を離すと、杏が触れていた部分を両手で撫でている。
『楓、色々…あるけどさ。俺と歩いて来てくれたよね。嫌な顔一つしないで、今は確かに
住む場所は離れちゃったけど。本当に辛いなら…俺も、覚悟はできてるよ。』
辛い…?
杏の言った言葉は、あまり身に覚えがない。
今の自分の状況は、辛ささえも無くなっている。
「辛くはない。なんで、そんな話になるんだ?」
『…楓って、いつもどこか遠くを見てる感じだし。なんて言うのかな?遠いんだよね、精神的に。』
「そう言う事か。考え事はしても終わりがない。漠然と、どうしたものかと思い考えるのは俺の性分だ。」
『思い詰める事は無いんだろうな。ってのは、分かるんだけどね。』
人間では無いのに、人間の様に思い悩んでしまう。
これは、俺が昔主から受け継いだ能力と一緒に俺の中に
浸透してしまった人間の性の1つかもしれない。
「万事うまくいっている。お前が案ずるような事は何一つとしてない。」
『…そうだね。せっかく収穫したナス、浅漬けにして食べようよ。』
「じゃあ、鷹の爪を積んで来よう。」
重かった腰を上げるを、先に立ち上がった杏が天を仰ぐ。
『ね、楓。絶対に…雲は止めたらダメだからね。』
「さすがに、それはしない。大丈夫だ。」
畑の一角に栽培している唐辛子をいくつか摘む。
真っ赤によく熟した赤い色味が、さっき覗き込んでいた杏の瞳とよく似た色味だ。
雲を止めるな、と言われて背中がゾクリとした。
時の流れを止めてしまう事は、俺にとっては造作もない事だ。
しかし、その反動が出てしまう事を杏は危惧しているのだろう。
よくよく、俺の事をまだ本能では危険視も出来ているのかと思うと
何故か面白いと感じた。
『楓、そんなにいっぱい要らないよ?少しで良いからね。』
カゴにひしめき合うナスを抱えて、俺のもとに杏はやって来る。
「子供舌だからな、お前は。さ、中に戻るぞ。陽に当たり過ぎた。」
『こんな冷暖房完備、空調管理された家に居たら外はもう鉄板みたいだよね。』
「まぁ、そうだな。そもそもこの空間にあまり居ない。」
『夏なんか地べたがとんでもなく暑くて、目玉焼き作れそうだけどね。』
世俗から離れて、精神の修行をしつつ暮らしている上に
異空間にも好きな様に存在できるとなれば。
この地に縛られつつも、自由に存在できる場所を選べるのだ。
「もっと、夏を楽しめばよかった、な。」
ぽつりと本音が出た。
それを聞き逃すはずの無い、杏。
『そうだよ!!もーっ、辛気臭い顔してぐだぐだ言ってないでさ。でっかい花火をドキドキしながら見上げたり
夏の海で昔みたいに他のみんなも誘ってビーチバレーしたり、BBQとか鉄板焼きしたかったよ。めっちゃ
俺の協力できる分野なのにさ~?妙にしんみりしちゃって!もっと俺を連れ出してよね!疲れさせてくれなきゃ。』
目の輝きが、単純に綺麗だと思って見詰めていた。
そうだ、少し前の俺と杏は、結構色々と出かけたりリア充だったのに。
「お前を、疲れさせては…いけないと心のどこかで思っていた。」
『ぇ?あ~…何となく言いたい事は分かるけど。こんなしんみりしてばっかり居るくらいなら
まだ疲れてる方がマシ。』
相変わらず、しっかりハッキリと言いたい事を言ってくれる。
「分かった。これからは多少の職質をされても(帯刀してるせいで)めげずに出かけよう。」
『でも、その刀って霊力が無いと見えないんだよね。』
「そうだ、何回説明しても理解されない。しかも現代においては所在不明扱いだから…余計に扱いに困るんだ。」
『~…紅葉が色づく頃にはまた必ず、俺から逢いには来るよ。』
少しだけ先の約束をしてくれる杏が、愛おしかった。
『楓、次は~…酢、と塩と…』
杏は器用に、収穫して来たナスを綺麗に台所で水洗いを済ませて
包丁で切っていく。
ただ穏やかにこの時間が過ぎて行けばいいと思っていた。
だが、杏はそれだけでは物足りないのだ。
瞬間瞬間を味わう様に、愉しんで生きていたいのだろう。
杏は半分が人間だ。人知れず、寿命を案ずることもあるのかもしれない。
いつまでも、当たり前の様に一緒に生きて行けるものだと思っていたのは
俺の方だった。
ならば、もっと…杏の生きている時間を慈しみたい。
「ものの数時間で、もう漬けあがったのか?」
『うん、だって浅漬けだもん。』
小さな器に、食べる分だけの水気を切って盛り付けた杏。
「昔を思い出すな…」
『懐かしいね。大変だった時期は畑の野菜も…この辺はもう家も無くなっちゃったけど。皆に
配ってあげてたんだよね。』
「素朴だけれど、美味いな。」
『ちゃんとご飯食べてる?仙人じゃないんだからさ。美味しいもの食べてね。』
杏と居ると、人らしく生きれている気がする。
人間とは何たるものかは今でも計り知れぬが、杏を見ていると
心の在り方が生き様に通じるのではないかと思う。
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