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番外編 鈴屋八右衛門と楓
鈴屋が、やってきたのは
もう
どのくらい昔だったか。
東西に有名な鈴を作る奴らがいると聞いた。
もしかしたらの噂で、人間じゃあないかもしれないという。
まさか、自分達以外にも
そんな存在があるというのか。
にわかに信じ難い。
遣いの者を、その工房へと
向かわせた。
「で、私めに何の御用でしょ?」
山あいの村に、その工房は密かにあった。
小さな工房の一角に、愛らしい猫のような?
いや、しかし彼は立つ、
歩く、話せる。
やはり、妖怪の類か?
「お客さんは、誰かに頼まれてやって来た。それは、お見通し。さぁ、用件は何だい?…と言ってもウチは鈴屋だから。鈴と組紐しか無いんだよ。鈴は本業、組紐は趣味みたいなもんで。お金は取らない。」
『これは、驚いた。素晴らしい…美しい色合いに、鈴は音色から形、大きさまで様々で。あぁ、困った。実は、私の主が鈴を求めているのです。魔除けになるような鈴をいただきたいのだが…あまりに数がある。これでは、直ぐには決められないし』
遣いの者を見た猫は笑った。
「この、鈴屋 八右衛門の鈴に魔除けがある事を知ってるなんて…主は、なかなか見聞が広い。いつかは、帝に献上するのが夢なんだ。」
八右衛門は、意外そうに遣いの者を見て
それでも嬉しそうに笑う。
『その夢、叶うかもしれません。私の主は、帝とも…呼ばれています。』
その言葉を聴いた時の
八右衛門の顔ときたら…。
もし、本当に帝さんが
ウチなんかに
いらっしゃると言うなら
次は、帝さんを連れて来て貰いたいと言われた。
今日のところは、一旦煌龍殿に帰ることにした。
帰って早々に、楓さまに
全てをお伝えした。
『化け猫が、つくる鈴か…面白い。鈴屋八右衛門。次は俺一人で赴こう。』
タロー様を寝かしつけながら、楓さまは不敵な笑みを浮かべる。
あくる日、楓はどこに行くのかと不審がるタローを置いて、八右衛門の工房へと一人で向かった。
腰には太刀を差して、
予測も出来ない何かに
備えて、村へと歩く。
村が見えて来たのは、
半刻も歩いた程の頃だ。
『案外近いのだな。』
村の地蔵に手を合わせてから、八右衛門の小さな工房を訪ねる。
『御免、鈴屋はここで間違いないだろうか?』
障子戸をガラリと開ける。
「あ…」
『妖怪か⁈』
「わわわゎゎゎ!ひいぃ!切らないで…いかにも、鈴屋八右衛門の工房は、ここで間違いないです。」
持っていた器を、驚きの余り落として割ってしまった八右衛門。
『すまない、驚かせたようだな。大丈夫か?』
欠片を八右衛門と一緒に拾い上げる。
「はっ、ハイ。帝様!」
『帝…?あぁ、俺は三千院楓だ。帝と呼ばないでくれ。今は、ただの客だ。』
「では、楓様。魔除けに持たれる鈴をお探しとの事で?」
昨日遣いをやったから
話は早い。
『あぁ、うちの子供がな…どうも先立った母親がわりの女人に、乗り移られたりしたから。これは、どうにかしないと、また狙われてしまうのでは、と心配している。』
かしこまった猫背の八右衛門は、真面目に話を聞いている。
「取り憑かれてしまうのは、優しい人ばかりなんですよ。きっと、大好きだったのでしょうね。お子様は。その人が…」
『別れは、覚悟していたが、こんな事になるとは。』
「分かりました…そんな優しいお子様を守るような力を持った鈴!必ずや拵えてみせます。が、一週間時間をいただきたいのです。何しろ、強力な力を封じ込めますので…何卒ご理解をいただきたく。」
深々と頭を下げる
八右衛門に楓が頷く。
『わかった、では一週間後に改めて顔を出そう。よろしく頼む。』
これが、鈴を交換する行事の発端になったお話でした。
もう
どのくらい昔だったか。
東西に有名な鈴を作る奴らがいると聞いた。
もしかしたらの噂で、人間じゃあないかもしれないという。
まさか、自分達以外にも
そんな存在があるというのか。
にわかに信じ難い。
遣いの者を、その工房へと
向かわせた。
「で、私めに何の御用でしょ?」
山あいの村に、その工房は密かにあった。
小さな工房の一角に、愛らしい猫のような?
いや、しかし彼は立つ、
歩く、話せる。
やはり、妖怪の類か?
「お客さんは、誰かに頼まれてやって来た。それは、お見通し。さぁ、用件は何だい?…と言ってもウチは鈴屋だから。鈴と組紐しか無いんだよ。鈴は本業、組紐は趣味みたいなもんで。お金は取らない。」
『これは、驚いた。素晴らしい…美しい色合いに、鈴は音色から形、大きさまで様々で。あぁ、困った。実は、私の主が鈴を求めているのです。魔除けになるような鈴をいただきたいのだが…あまりに数がある。これでは、直ぐには決められないし』
遣いの者を見た猫は笑った。
「この、鈴屋 八右衛門の鈴に魔除けがある事を知ってるなんて…主は、なかなか見聞が広い。いつかは、帝に献上するのが夢なんだ。」
八右衛門は、意外そうに遣いの者を見て
それでも嬉しそうに笑う。
『その夢、叶うかもしれません。私の主は、帝とも…呼ばれています。』
その言葉を聴いた時の
八右衛門の顔ときたら…。
もし、本当に帝さんが
ウチなんかに
いらっしゃると言うなら
次は、帝さんを連れて来て貰いたいと言われた。
今日のところは、一旦煌龍殿に帰ることにした。
帰って早々に、楓さまに
全てをお伝えした。
『化け猫が、つくる鈴か…面白い。鈴屋八右衛門。次は俺一人で赴こう。』
タロー様を寝かしつけながら、楓さまは不敵な笑みを浮かべる。
あくる日、楓はどこに行くのかと不審がるタローを置いて、八右衛門の工房へと一人で向かった。
腰には太刀を差して、
予測も出来ない何かに
備えて、村へと歩く。
村が見えて来たのは、
半刻も歩いた程の頃だ。
『案外近いのだな。』
村の地蔵に手を合わせてから、八右衛門の小さな工房を訪ねる。
『御免、鈴屋はここで間違いないだろうか?』
障子戸をガラリと開ける。
「あ…」
『妖怪か⁈』
「わわわゎゎゎ!ひいぃ!切らないで…いかにも、鈴屋八右衛門の工房は、ここで間違いないです。」
持っていた器を、驚きの余り落として割ってしまった八右衛門。
『すまない、驚かせたようだな。大丈夫か?』
欠片を八右衛門と一緒に拾い上げる。
「はっ、ハイ。帝様!」
『帝…?あぁ、俺は三千院楓だ。帝と呼ばないでくれ。今は、ただの客だ。』
「では、楓様。魔除けに持たれる鈴をお探しとの事で?」
昨日遣いをやったから
話は早い。
『あぁ、うちの子供がな…どうも先立った母親がわりの女人に、乗り移られたりしたから。これは、どうにかしないと、また狙われてしまうのでは、と心配している。』
かしこまった猫背の八右衛門は、真面目に話を聞いている。
「取り憑かれてしまうのは、優しい人ばかりなんですよ。きっと、大好きだったのでしょうね。お子様は。その人が…」
『別れは、覚悟していたが、こんな事になるとは。』
「分かりました…そんな優しいお子様を守るような力を持った鈴!必ずや拵えてみせます。が、一週間時間をいただきたいのです。何しろ、強力な力を封じ込めますので…何卒ご理解をいただきたく。」
深々と頭を下げる
八右衛門に楓が頷く。
『わかった、では一週間後に改めて顔を出そう。よろしく頼む。』
これが、鈴を交換する行事の発端になったお話でした。
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