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戀は、曲者。(転生するお話なので、男体から女体)
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ゲスト紹介
葵
全ての糸引き役でもあり
裏から國を見つめている者。
性別にとらわれず、永きを
生きている。
守護職の総まとめ役でもある。
夜の闇に翻った、絹糸のような髪…。
満月を背負い、神々しい程の雰囲気の中。
剣気が発せられ、自ずとこちらも、構えに入る。
その刹那…
『俺は、男だ…!』
昔を思い出していた。
「そうだ、けど…あの時は本当に女だと勘違いしていた。まさか、あの有名な剣士がこんな餓鬼だなんて…」
腰まである髪を頭の高い位置で結わえた美祢の姿は今も美しい。
『髪は…切らないことと決めているから。』
「なんだ、願掛けか?」
子供らしい。
『違う…昔から切らないんだ。毛の先くらいしか。髪には力が宿るって言われたから、切れない。』
よく分からないことを言う‥。
だから、餓鬼は苦手だ。
よりにもよって…そんな餓鬼と同じ任務をする事になり、寝食を共にするようになった。
あまり、四六時中一緒なのも辛いだろうと思って…俺は、極力…夜は呑みに出て遅くに帰るようにしていた。
安心しきった寝顔を見ていると、心のどこかがスッとする。
美祢の寝顔に、少し安らぎを感じた瞬間だった。
夜が明けて…目を覚ますと、すぐ横に美祢の寝顔があった。
清らかで…無垢な美祢。
何故こんなに美しいお前が人を殺めたりするのか。國のために、その若さでなぜこうまでできるのか…、不思議だった。
美祢…俺は、お前という人間が知りたい。
そういえば…
美祢は、早く大人になりたがっていた。
今は、まだ葵の手駒でしかない美祢は大人になって自分の故郷を守りたいと、いや…この國のために…できることをしたいらしい。
俺には、全く『無い』考えだった。
一つの組織に長年いると、人は…朱に交われば…というヤツだろう。
いつかは、今の隊も無くなる。そしたらまた、身の振り方を考えなければ…。
何時なんどき、何がどうなるかなんて、誰にも分からない。
だから、程好い所で切り上げてしまうつもりだ。
悪いな、‥美祢。
俺は、お前との任務が終れば…國に帰って、また次に備える。元より俺は、そういう立ち位置なんだ。
仲間ごっこには、不向きなんだ。
明くる朝…目を覚ますと、美祢が起きていた。
咎めるような眼で俺を見下ろす。
昨晩の気持ちの高ぶりのせいかと、些か心配になりながら…どうしたかと尋ねる。
『安芸…俺、知ってる。』
「はぁ…?何をだ」
『このまま…いなくなるんだろ?俺には、分かる。あんたは、ここに留まるような人間じゃないことくらい分かる。』
なんだ…
見る眼、あるんじゃないか…餓鬼のクセして。
「そうだ。今日中には出ていくつもりだった。」
美祢は、ただ呆けている。
『敵に…なるのか?』
「それは、分からない。でも、可能性は低い。」
『少しでも、可能性があるなら…今ここで殺す。』!?
正気か?
布団の上に乗っかってきた美祢を突き飛ばすと、呆気なく襖へと転げる美祢。
どうしたってんだ?
「あっ…スマン…つい…。大丈夫か?美祢。」
『お前なんかに…出会わなければ…』
美祢、苦しんでいる。
もしかしたら、
俺も美祢と同じ気持ちなのかもしれないな。
「頼む、‥静かに送り出してくれないか?俺は、お前の障壁にはならない。約束する。だから、美祢…今は、さよならだ。」
俺は、な…
お前みたいなのに
殺されるんなら、
本望だ。
時代が変わったら、
美祢…
必ずお前を迎えに来る。
今より少し大人になったお前と…酒を酌み交わして、下らない話をして
みたいもんだ。
あれから…半年程が経ったある日、こちらに葵が来ていた。
「美祢…どうしてる?元気か?」
葵に気安く話し掛けられるのは、ここでは俺だけだ。
『美祢…?あ、あぁ…あの子供か。残念ながら、死んだ。』
シんダ?
こいつ、何言ってやがる…
「死なないだろ、病気でもしたか?それとも…誰かに斬られた…?」
『私が殺したよ。』
葵が…美祢を
こ
ろ
し
た
?
頭の中で…整理できない。認めたくない。
美祢が…美祢が…
殺された?
脳味噌が痛い。
頭ん中、
めちゃくちゃ…
重くて、ズキッと痛い。
『美祢には、とある地方の守護を任せた。その為に神格を与える事がある、美祢は元々、人間だったから。神格を与えるために一度死んでもらった。』
―神格。
それは、人から神へと姿を変え、守護を命ぜられること。国家鎮守、統治なんかの意味もある。
神格化されるのが人間である場合、一度禊を行い…然るべき地位の者、或は術者が対象者に行う。
ただし、神格化された場合永久を生きる事になり…容姿は老いる事が無くなる。
ある程度の神力がある者であれば、自らの姿を自由に変えられる場合がある。
老いは来ずとも、ある方法で人間のように死ぬこともできる。が、それには、相思相愛の伴侶が必要。
愛する者の手によって、殺された場合は人間に戻る。または、伴侶の思念が憎悪に満ちていた場合、無限地獄に落とされる場合もある。
神が、憎まれて死ぬと…
助けようが無いのである。
神とは…人のため、
万物の命のためにある。
それは、国が変わろうが時代が変わろうが不変の事実である。『神格化の手引き書…』
布団に寝転がる。
心臓が痛い。
葵様に突き刺された箇所がまだ
痛んでいた。
傷口に葵様が、口付けてきたのに…一番びっくりした。
綺麗な笑顔で、
「こうすると、治りが早くなる。」
身動きが取れずに、横になって…頭の中でぐるぐるした、安芸への気持ちを思い出すんだ。
いきなり、殺されて…
次は生き返らされて…
土地の守護を命ぜられて。
色んな事が短期間で変わっていくし。
心が、なんだかついていけてないけど…
また、安芸に逢える。
それだけで…ちょっと嬉しい。
「あぁ、言い忘れていたが…どういう事か、美祢を蘇生させた際に、何の力が影響したかは不明だが…女になる体として蘇ってしまったから。気を付けろ。まぁ、妊娠するかまでは知らんが。」え…?
女…として、蘇った!?
え、意味わかんない。
『な、なんでですか…?』
「不明だ。あ、いや…実は、少し心当たりがあるような…」
『教えてください…』
「そうだな、強いて言うなら…月のせいだな。私も月の影響を受けている。ツクヨミの子として…美祢も、私とは違う月の神の…」
『俺は、捨て子でした。森の大木の根本に捨てられていて…育ての親が満月の晩に俺を拾ったそうです。』
「お前は、見るからに月の民のようだ。美しく、儚げで…さぁ、話はこのくらいにしよう。ゆっくり休め。」
神格化されてから、初めて口にするものは…御神酒だと言われて、少し躊躇いながら体を起こして盃の御神酒を口に含む。
喉を熱くさせながら、酒が胃に落ちていく。『ふぅ…』
心なしか、美味しいと感じている。
今までは、酒など飲んだことも無かったが…
乾いていたなにかを満たすように、染み渡るように酒は不思議と、口に合った。
「そういえば…隣の安芸の事なんだが…」
その名前を聞くだけで、なぜか胸が震える。
なんだろう?
『参ったな、あやつに何と申し開きしようか…おそらくお前を深く心配していたから、言うのが怖いな。例え神格化されたと説明しても…安芸はお前を私が殺した事実に、狂ったように怒るだろうな。当たり前だが。」
『そうなんですか…?でも、ちょっと嬉しいかもしれません。想われてるのかな?そう思いたくなる。』
しぜんと笑顔が零れる。
「想われている…あの安芸が、やっと見つけた宝物だ。」
一度俺は、
美祢を失いかけた…
まさか、アイツがあんな汚いやり方をするなんて思ってもみなかった。
何も知らない美祢は、あれから泥のように眠っていた。
生きている…
よかった…。
美祢、お前は笑うかもしれないけど…俺は、お前が可愛いんだ。
若く、大志を抱いて…けれども葵や上の奴等に良いように利用されて。
憐れなお前が愛しい。
いや、憐れというよりも
神格化されて…俺は心内で喜んでいたんだ。
やっと…お前を失わずに済むと…。
永久を生きられる。
『逢いたかった…安芸!』
葵の術を受けてから再会を果たした美祢と俺。
あ…?
少し見ない間に、なんだか美祢が大人っぽくうつる。
優しい眼差しと、控え目な微笑みに…今までには感じなかった、色香のようなものを感じる。ひしっ、と抱きつかれて相変わらず絹糸のように綺麗な髪を優しく撫でて抱き寄せる。
ふわりと広がる、ほのかな香りに勝手に目が綻ぶ。
「美祢…?なんか、体…柔らかくないか?」
感触というか…抱き心地が前とは違う気がした。
凄く柔らかくて、なんだか頼りない。
そうだ、
まるで…女の体みたいなんだ。
『えっ?あ、あぁ…もう気づいた?なんか、理由がいまいちハッキリしないんだけど…蘇生して貰うときに何かの力が作用して、女の子の体になるように変わったみたいなんだ。』
何と言うか…
慰めるのもおかしいし、
励ますのも違う気がした。
困ったように微笑む美祢が、なんだか愛しくて…布団の上で、くちづけた。
頬を赤く染めて、恥ずかしさでどうしたらいいのか困惑している美祢の背中を撫でる。大丈夫…
例えどんな美祢になったとしても、俺は美祢が大切なんだ。
長年…生きてきたけど、こんなにも真っ直ぐで不器用な魂を持った人間を初めて見た。
一緒にいると、心が洗われる気になる。
こんな汚い世界で…お前だけは、信じたくなる。
その中でお前を守るために…ついでにセカイとやらも一緒に面倒みてやるだけだ。
少しでも、
お前が…幸せとかいうものに触れられるように。
殺されたのに、
変な話だろう?
けど…
愛する者のためなら、
そう思うんだな。
本当…な、
戀っていうのは
曲者だ。
そこに愛まで加われば…
もっと人を狂わせる。
戀していると
脳内には、麻薬と似たような物質が出るらしい。
末恐ろしい話だ。
「一体、どうやったらそんな次から次と波乱万丈な人生になるんだ…」
葵との関わりがある以上…仕方ないのかもしれないが。
女って…
ナァ…?
男だから、良いなんてわけも無いし…女になってほしいとも思っていなかったから、ただ驚くばっかりで。
柔らかな美祢の手が、俺の手を取って、自らの胸へと導く。
優しい弾力が掌に返ってくる。
あぁ、正に
女。だな。
美化するつもりも無いが、やっぱり神聖なものに触れている気がしてならない。
性としてでは無くて、
もっと、違う…母性とでもいうのか?
そんな、温もりにつつまれた瞬間だった。
別に、俺は母親なんか知らないが…。
ひだまりみたいに温かで、優しい存在なんだろうと思う。まぁ、海みたいに深く広かろうが…大地みたいだろうが、それは拘らないが。
『俺は、その都度…真剣だよ。現実がこうなってても。』
葵
全ての糸引き役でもあり
裏から國を見つめている者。
性別にとらわれず、永きを
生きている。
守護職の総まとめ役でもある。
夜の闇に翻った、絹糸のような髪…。
満月を背負い、神々しい程の雰囲気の中。
剣気が発せられ、自ずとこちらも、構えに入る。
その刹那…
『俺は、男だ…!』
昔を思い出していた。
「そうだ、けど…あの時は本当に女だと勘違いしていた。まさか、あの有名な剣士がこんな餓鬼だなんて…」
腰まである髪を頭の高い位置で結わえた美祢の姿は今も美しい。
『髪は…切らないことと決めているから。』
「なんだ、願掛けか?」
子供らしい。
『違う…昔から切らないんだ。毛の先くらいしか。髪には力が宿るって言われたから、切れない。』
よく分からないことを言う‥。
だから、餓鬼は苦手だ。
よりにもよって…そんな餓鬼と同じ任務をする事になり、寝食を共にするようになった。
あまり、四六時中一緒なのも辛いだろうと思って…俺は、極力…夜は呑みに出て遅くに帰るようにしていた。
安心しきった寝顔を見ていると、心のどこかがスッとする。
美祢の寝顔に、少し安らぎを感じた瞬間だった。
夜が明けて…目を覚ますと、すぐ横に美祢の寝顔があった。
清らかで…無垢な美祢。
何故こんなに美しいお前が人を殺めたりするのか。國のために、その若さでなぜこうまでできるのか…、不思議だった。
美祢…俺は、お前という人間が知りたい。
そういえば…
美祢は、早く大人になりたがっていた。
今は、まだ葵の手駒でしかない美祢は大人になって自分の故郷を守りたいと、いや…この國のために…できることをしたいらしい。
俺には、全く『無い』考えだった。
一つの組織に長年いると、人は…朱に交われば…というヤツだろう。
いつかは、今の隊も無くなる。そしたらまた、身の振り方を考えなければ…。
何時なんどき、何がどうなるかなんて、誰にも分からない。
だから、程好い所で切り上げてしまうつもりだ。
悪いな、‥美祢。
俺は、お前との任務が終れば…國に帰って、また次に備える。元より俺は、そういう立ち位置なんだ。
仲間ごっこには、不向きなんだ。
明くる朝…目を覚ますと、美祢が起きていた。
咎めるような眼で俺を見下ろす。
昨晩の気持ちの高ぶりのせいかと、些か心配になりながら…どうしたかと尋ねる。
『安芸…俺、知ってる。』
「はぁ…?何をだ」
『このまま…いなくなるんだろ?俺には、分かる。あんたは、ここに留まるような人間じゃないことくらい分かる。』
なんだ…
見る眼、あるんじゃないか…餓鬼のクセして。
「そうだ。今日中には出ていくつもりだった。」
美祢は、ただ呆けている。
『敵に…なるのか?』
「それは、分からない。でも、可能性は低い。」
『少しでも、可能性があるなら…今ここで殺す。』!?
正気か?
布団の上に乗っかってきた美祢を突き飛ばすと、呆気なく襖へと転げる美祢。
どうしたってんだ?
「あっ…スマン…つい…。大丈夫か?美祢。」
『お前なんかに…出会わなければ…』
美祢、苦しんでいる。
もしかしたら、
俺も美祢と同じ気持ちなのかもしれないな。
「頼む、‥静かに送り出してくれないか?俺は、お前の障壁にはならない。約束する。だから、美祢…今は、さよならだ。」
俺は、な…
お前みたいなのに
殺されるんなら、
本望だ。
時代が変わったら、
美祢…
必ずお前を迎えに来る。
今より少し大人になったお前と…酒を酌み交わして、下らない話をして
みたいもんだ。
あれから…半年程が経ったある日、こちらに葵が来ていた。
「美祢…どうしてる?元気か?」
葵に気安く話し掛けられるのは、ここでは俺だけだ。
『美祢…?あ、あぁ…あの子供か。残念ながら、死んだ。』
シんダ?
こいつ、何言ってやがる…
「死なないだろ、病気でもしたか?それとも…誰かに斬られた…?」
『私が殺したよ。』
葵が…美祢を
こ
ろ
し
た
?
頭の中で…整理できない。認めたくない。
美祢が…美祢が…
殺された?
脳味噌が痛い。
頭ん中、
めちゃくちゃ…
重くて、ズキッと痛い。
『美祢には、とある地方の守護を任せた。その為に神格を与える事がある、美祢は元々、人間だったから。神格を与えるために一度死んでもらった。』
―神格。
それは、人から神へと姿を変え、守護を命ぜられること。国家鎮守、統治なんかの意味もある。
神格化されるのが人間である場合、一度禊を行い…然るべき地位の者、或は術者が対象者に行う。
ただし、神格化された場合永久を生きる事になり…容姿は老いる事が無くなる。
ある程度の神力がある者であれば、自らの姿を自由に変えられる場合がある。
老いは来ずとも、ある方法で人間のように死ぬこともできる。が、それには、相思相愛の伴侶が必要。
愛する者の手によって、殺された場合は人間に戻る。または、伴侶の思念が憎悪に満ちていた場合、無限地獄に落とされる場合もある。
神が、憎まれて死ぬと…
助けようが無いのである。
神とは…人のため、
万物の命のためにある。
それは、国が変わろうが時代が変わろうが不変の事実である。『神格化の手引き書…』
布団に寝転がる。
心臓が痛い。
葵様に突き刺された箇所がまだ
痛んでいた。
傷口に葵様が、口付けてきたのに…一番びっくりした。
綺麗な笑顔で、
「こうすると、治りが早くなる。」
身動きが取れずに、横になって…頭の中でぐるぐるした、安芸への気持ちを思い出すんだ。
いきなり、殺されて…
次は生き返らされて…
土地の守護を命ぜられて。
色んな事が短期間で変わっていくし。
心が、なんだかついていけてないけど…
また、安芸に逢える。
それだけで…ちょっと嬉しい。
「あぁ、言い忘れていたが…どういう事か、美祢を蘇生させた際に、何の力が影響したかは不明だが…女になる体として蘇ってしまったから。気を付けろ。まぁ、妊娠するかまでは知らんが。」え…?
女…として、蘇った!?
え、意味わかんない。
『な、なんでですか…?』
「不明だ。あ、いや…実は、少し心当たりがあるような…」
『教えてください…』
「そうだな、強いて言うなら…月のせいだな。私も月の影響を受けている。ツクヨミの子として…美祢も、私とは違う月の神の…」
『俺は、捨て子でした。森の大木の根本に捨てられていて…育ての親が満月の晩に俺を拾ったそうです。』
「お前は、見るからに月の民のようだ。美しく、儚げで…さぁ、話はこのくらいにしよう。ゆっくり休め。」
神格化されてから、初めて口にするものは…御神酒だと言われて、少し躊躇いながら体を起こして盃の御神酒を口に含む。
喉を熱くさせながら、酒が胃に落ちていく。『ふぅ…』
心なしか、美味しいと感じている。
今までは、酒など飲んだことも無かったが…
乾いていたなにかを満たすように、染み渡るように酒は不思議と、口に合った。
「そういえば…隣の安芸の事なんだが…」
その名前を聞くだけで、なぜか胸が震える。
なんだろう?
『参ったな、あやつに何と申し開きしようか…おそらくお前を深く心配していたから、言うのが怖いな。例え神格化されたと説明しても…安芸はお前を私が殺した事実に、狂ったように怒るだろうな。当たり前だが。」
『そうなんですか…?でも、ちょっと嬉しいかもしれません。想われてるのかな?そう思いたくなる。』
しぜんと笑顔が零れる。
「想われている…あの安芸が、やっと見つけた宝物だ。」
一度俺は、
美祢を失いかけた…
まさか、アイツがあんな汚いやり方をするなんて思ってもみなかった。
何も知らない美祢は、あれから泥のように眠っていた。
生きている…
よかった…。
美祢、お前は笑うかもしれないけど…俺は、お前が可愛いんだ。
若く、大志を抱いて…けれども葵や上の奴等に良いように利用されて。
憐れなお前が愛しい。
いや、憐れというよりも
神格化されて…俺は心内で喜んでいたんだ。
やっと…お前を失わずに済むと…。
永久を生きられる。
『逢いたかった…安芸!』
葵の術を受けてから再会を果たした美祢と俺。
あ…?
少し見ない間に、なんだか美祢が大人っぽくうつる。
優しい眼差しと、控え目な微笑みに…今までには感じなかった、色香のようなものを感じる。ひしっ、と抱きつかれて相変わらず絹糸のように綺麗な髪を優しく撫でて抱き寄せる。
ふわりと広がる、ほのかな香りに勝手に目が綻ぶ。
「美祢…?なんか、体…柔らかくないか?」
感触というか…抱き心地が前とは違う気がした。
凄く柔らかくて、なんだか頼りない。
そうだ、
まるで…女の体みたいなんだ。
『えっ?あ、あぁ…もう気づいた?なんか、理由がいまいちハッキリしないんだけど…蘇生して貰うときに何かの力が作用して、女の子の体になるように変わったみたいなんだ。』
何と言うか…
慰めるのもおかしいし、
励ますのも違う気がした。
困ったように微笑む美祢が、なんだか愛しくて…布団の上で、くちづけた。
頬を赤く染めて、恥ずかしさでどうしたらいいのか困惑している美祢の背中を撫でる。大丈夫…
例えどんな美祢になったとしても、俺は美祢が大切なんだ。
長年…生きてきたけど、こんなにも真っ直ぐで不器用な魂を持った人間を初めて見た。
一緒にいると、心が洗われる気になる。
こんな汚い世界で…お前だけは、信じたくなる。
その中でお前を守るために…ついでにセカイとやらも一緒に面倒みてやるだけだ。
少しでも、
お前が…幸せとかいうものに触れられるように。
殺されたのに、
変な話だろう?
けど…
愛する者のためなら、
そう思うんだな。
本当…な、
戀っていうのは
曲者だ。
そこに愛まで加われば…
もっと人を狂わせる。
戀していると
脳内には、麻薬と似たような物質が出るらしい。
末恐ろしい話だ。
「一体、どうやったらそんな次から次と波乱万丈な人生になるんだ…」
葵との関わりがある以上…仕方ないのかもしれないが。
女って…
ナァ…?
男だから、良いなんてわけも無いし…女になってほしいとも思っていなかったから、ただ驚くばっかりで。
柔らかな美祢の手が、俺の手を取って、自らの胸へと導く。
優しい弾力が掌に返ってくる。
あぁ、正に
女。だな。
美化するつもりも無いが、やっぱり神聖なものに触れている気がしてならない。
性としてでは無くて、
もっと、違う…母性とでもいうのか?
そんな、温もりにつつまれた瞬間だった。
別に、俺は母親なんか知らないが…。
ひだまりみたいに温かで、優しい存在なんだろうと思う。まぁ、海みたいに深く広かろうが…大地みたいだろうが、それは拘らないが。
『俺は、その都度…真剣だよ。現実がこうなってても。』
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