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まるで、生き写し。
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人間違い、だと思った。あまりにも同じ背格好。余ってる足の長さに
黒髪は、サラッとしていて。帰宅する時間がたまたま同じになったのかと思い、
俺は、クソ彼氏の背後に立ってそーっとスーツの裾を引っ張った。
「…誰?」
いやいや、まさか俺が朔を見間違えるなんて。というか、似すぎじゃないか?
『…いや、アンタこそ誰や?』
顔立ちも似てはいるけど、相手は朔よりもやや表情も強くて程よいヘラヘラ感は
見受けられなかった。
途端に、恥ずかしくなって俺は手を裾から離したけど、パシッと手首を掴まれて
「す、すみません!人間違いしちゃって…」
俺は、どことなく恐怖を覚えながら手を振りほどこうとする。
でも全然離してくれない。
『誰や思うて、俺に近づいたん?』
「…と、友達!友達です…」
『はーん?友達って、男友達やろ。男相手に…こんな裾なんか引いて、女みたいに気ぃ
引いたりするもんなん?』
早口でまくしたてられるわ、周りからの注目が痛いわで…俺は顔が熱くて熱くて
瀕死の精神状態だった。
「だから、ごめんなさいってば…。もぉ、離してください!」
思い切り、手を振りほどいて何とか逃げ出せた。
最近、電車がらみで良い事がない。
バスでしばらく通おうかとさえ思う。
人間違いした人は、いつの間にかホームには居なくなってた。
ちょうど、電車が到着してくれたから安堵して、車内に乗り込み。
警戒しながら、座席に座った。目を閉じて、降車駅まで無心に過ごす。
あー、でも朔に似てるけどすごい関西?方言きつくて…
ちょっと怖かったけど。カッコよかったなぁ。
30代前半かな?スーツだったけど会社員っぽくない。
どっちかと言えばもっと、裏の世界に足を踏み込んでそうな…
危険さも感じさせる男だった。
朔も、どうかすれば似た雰囲気を持っているだけに笑えなかった。
帰宅してから、どうやら朔も家に帰ったらしく
隣の部屋だけあって、物音が聞こえてくる。
しばらくして、俺の部屋のチャイムが鳴った。
「はーい…」
玄関先に行って、ドアロックを解除していつもの様に朔を迎え入れる。
『央未、しばらくここに完全に住ませて』
「…おかえり。?いいよ、まぁ、そんなような生活はしてるんだし。どうかしたの?」
朔は苦虫を嚙み潰したような顔で
『本家の、クズが来た。』
「本家の…?あぁ、なんだっけ、バツイチでロクなモンじゃなくて、甘やかされて育ったボンボンだっけ?」
『悪かったなぁ…』
「…え?」
『央未、隣に…居るのよ。本人が。』
俺は、ドアが全開し朔の隣に立つ男を見てこの世の終わりを悟った。
「…さっきの、朔そっくりな人!!」
『お前か…朔のツレってのは』
『…さっぱりなんだけど、央未、コイツにさっき会ったんだ?』
「電車待ってる時に、朔だと思って…そしたら人違いだったんだけど」
『この兄ちゃん、俺のスーツの裾くいくい引っ張るもんやから…どこの可愛いらしい女がこんなん
するんかと思ったら…男やって。まぁ、びっくりしたわ。』
「謝ったんだけどね~…しつこかった」
『俺、こいつと似てないけど…。』
「雰囲気が、どことなく似てるだけだよ」
『ショック~、38歳と似てるなんて…』
「ぁ、そうなんだ。朔は将来似ると思うけど。だって、従兄弟なんでしょ?」
『ヤメテ―!こんなロクデナシと俺には何の関わりも無いから。』
「一緒に居ると、親子か兄弟でしょ。」
ま、とりあえず2人を部屋にあげて夕食が出来上がると3人で食卓を囲んだ。
『下手な女より可愛いなぁ、央未くん』
「…ぇと。名前何て呼べば…」
『俺は、光冥(こうめい)』
「響きが、なんとなくそれっぽい」
『俺も、このロクデナシも、名づけは同じジー様だからさ。』
「あれ?でも本家も朔の家と同じで」
『ロクデナシは、家追い出されたの?』
『は?違うし。朔の家に用があって来たんだよ。もう、お前の姉さんにも叔父さんにもあって来た。』
光冥さんは、話す時少しだけ照れくさそうに話す。
朔との会話には、そうでもないけど。俺に受け答えする時は
気まずいのだろうか?
『じゃー、もう帰ってくんない?ってか、何で一緒に夕飯食べてんだよ~』
朔は、面白くなさそうでさっきから拗ねている。
「あんまり、光冥さんにつらく当たるなよ?」
『!?』
『央未くん、優しい~。そうやろ?朔は料簡が狭いんやわ…。ほんまに。』
「光冥さんも、遠慮なく上がってくださいね。っても、お口に合うか分かりませんけど」
トマトチーズ鍋を3人で食べていると、お酒の入った光冥さんが
『久しぶりに、こんな…ほーっとご飯食べれて嬉しいわ』
「……」
『央未が、反応に困ってるだろ?オッサン。』
『ホンマに?ぁーでも、気にせんといてね。君等の一回りも長く生きてたら、まぁ…色々とあるんやわ。』
『ほら、オッサン!ゼロになっちゃえ~…飲んで飲んで』
朔が悪乗りをして、光冥さんに酎ハイを勧める。
「いやいや、それ結構度数高い奴じゃん…」
『いいんだよ、央未!光冥の人生…確かにゼロになった方が良さそうなんだからさ』
『朔…お前、ホンマすぐに調子ノるなぁ?央未くん居らんかったら…シメるとこやぞ』
俺からすれば、朔も光冥さんも同じ様に見えていた。
と、思ったけど。
光冥さんが、酔いつぶれた後に朔は俺に話してくれた。
光冥さんには、随分と前から想い人が居た事。
別れた奥さんは、それを承知で結婚を光冥さんに望み
子供を授かったけれど、夫婦関係がどうにも続かずに離縁した事。
光冥さんの想い人は、同性であり今は深い眠りの中を
さまよっている状態だと聞かされた。
俺は、朔の顔を見上げて言葉が出てこなくて
ただ、朔にそっくりな光冥さんの人生を想うと胸が痛むばかりだった。
黒髪は、サラッとしていて。帰宅する時間がたまたま同じになったのかと思い、
俺は、クソ彼氏の背後に立ってそーっとスーツの裾を引っ張った。
「…誰?」
いやいや、まさか俺が朔を見間違えるなんて。というか、似すぎじゃないか?
『…いや、アンタこそ誰や?』
顔立ちも似てはいるけど、相手は朔よりもやや表情も強くて程よいヘラヘラ感は
見受けられなかった。
途端に、恥ずかしくなって俺は手を裾から離したけど、パシッと手首を掴まれて
「す、すみません!人間違いしちゃって…」
俺は、どことなく恐怖を覚えながら手を振りほどこうとする。
でも全然離してくれない。
『誰や思うて、俺に近づいたん?』
「…と、友達!友達です…」
『はーん?友達って、男友達やろ。男相手に…こんな裾なんか引いて、女みたいに気ぃ
引いたりするもんなん?』
早口でまくしたてられるわ、周りからの注目が痛いわで…俺は顔が熱くて熱くて
瀕死の精神状態だった。
「だから、ごめんなさいってば…。もぉ、離してください!」
思い切り、手を振りほどいて何とか逃げ出せた。
最近、電車がらみで良い事がない。
バスでしばらく通おうかとさえ思う。
人間違いした人は、いつの間にかホームには居なくなってた。
ちょうど、電車が到着してくれたから安堵して、車内に乗り込み。
警戒しながら、座席に座った。目を閉じて、降車駅まで無心に過ごす。
あー、でも朔に似てるけどすごい関西?方言きつくて…
ちょっと怖かったけど。カッコよかったなぁ。
30代前半かな?スーツだったけど会社員っぽくない。
どっちかと言えばもっと、裏の世界に足を踏み込んでそうな…
危険さも感じさせる男だった。
朔も、どうかすれば似た雰囲気を持っているだけに笑えなかった。
帰宅してから、どうやら朔も家に帰ったらしく
隣の部屋だけあって、物音が聞こえてくる。
しばらくして、俺の部屋のチャイムが鳴った。
「はーい…」
玄関先に行って、ドアロックを解除していつもの様に朔を迎え入れる。
『央未、しばらくここに完全に住ませて』
「…おかえり。?いいよ、まぁ、そんなような生活はしてるんだし。どうかしたの?」
朔は苦虫を嚙み潰したような顔で
『本家の、クズが来た。』
「本家の…?あぁ、なんだっけ、バツイチでロクなモンじゃなくて、甘やかされて育ったボンボンだっけ?」
『悪かったなぁ…』
「…え?」
『央未、隣に…居るのよ。本人が。』
俺は、ドアが全開し朔の隣に立つ男を見てこの世の終わりを悟った。
「…さっきの、朔そっくりな人!!」
『お前か…朔のツレってのは』
『…さっぱりなんだけど、央未、コイツにさっき会ったんだ?』
「電車待ってる時に、朔だと思って…そしたら人違いだったんだけど」
『この兄ちゃん、俺のスーツの裾くいくい引っ張るもんやから…どこの可愛いらしい女がこんなん
するんかと思ったら…男やって。まぁ、びっくりしたわ。』
「謝ったんだけどね~…しつこかった」
『俺、こいつと似てないけど…。』
「雰囲気が、どことなく似てるだけだよ」
『ショック~、38歳と似てるなんて…』
「ぁ、そうなんだ。朔は将来似ると思うけど。だって、従兄弟なんでしょ?」
『ヤメテ―!こんなロクデナシと俺には何の関わりも無いから。』
「一緒に居ると、親子か兄弟でしょ。」
ま、とりあえず2人を部屋にあげて夕食が出来上がると3人で食卓を囲んだ。
『下手な女より可愛いなぁ、央未くん』
「…ぇと。名前何て呼べば…」
『俺は、光冥(こうめい)』
「響きが、なんとなくそれっぽい」
『俺も、このロクデナシも、名づけは同じジー様だからさ。』
「あれ?でも本家も朔の家と同じで」
『ロクデナシは、家追い出されたの?』
『は?違うし。朔の家に用があって来たんだよ。もう、お前の姉さんにも叔父さんにもあって来た。』
光冥さんは、話す時少しだけ照れくさそうに話す。
朔との会話には、そうでもないけど。俺に受け答えする時は
気まずいのだろうか?
『じゃー、もう帰ってくんない?ってか、何で一緒に夕飯食べてんだよ~』
朔は、面白くなさそうでさっきから拗ねている。
「あんまり、光冥さんにつらく当たるなよ?」
『!?』
『央未くん、優しい~。そうやろ?朔は料簡が狭いんやわ…。ほんまに。』
「光冥さんも、遠慮なく上がってくださいね。っても、お口に合うか分かりませんけど」
トマトチーズ鍋を3人で食べていると、お酒の入った光冥さんが
『久しぶりに、こんな…ほーっとご飯食べれて嬉しいわ』
「……」
『央未が、反応に困ってるだろ?オッサン。』
『ホンマに?ぁーでも、気にせんといてね。君等の一回りも長く生きてたら、まぁ…色々とあるんやわ。』
『ほら、オッサン!ゼロになっちゃえ~…飲んで飲んで』
朔が悪乗りをして、光冥さんに酎ハイを勧める。
「いやいや、それ結構度数高い奴じゃん…」
『いいんだよ、央未!光冥の人生…確かにゼロになった方が良さそうなんだからさ』
『朔…お前、ホンマすぐに調子ノるなぁ?央未くん居らんかったら…シメるとこやぞ』
俺からすれば、朔も光冥さんも同じ様に見えていた。
と、思ったけど。
光冥さんが、酔いつぶれた後に朔は俺に話してくれた。
光冥さんには、随分と前から想い人が居た事。
別れた奥さんは、それを承知で結婚を光冥さんに望み
子供を授かったけれど、夫婦関係がどうにも続かずに離縁した事。
光冥さんの想い人は、同性であり今は深い眠りの中を
さまよっている状態だと聞かされた。
俺は、朔の顔を見上げて言葉が出てこなくて
ただ、朔にそっくりな光冥さんの人生を想うと胸が痛むばかりだった。
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