暁を喰らう者

あきすと

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暗闇から産み落とされた、一縷の望み。
まばゆい暁の神は対となる宵の神と別たれるものとして信仰を集める。

古代よりももっと昔、此の世が誕生してからの原初の存在。

「目隠しなど、必要なのですか?」
これから連れて行かれるのは、村の山道を越えた先にあるご来光が
拝めると言う山頂。

元日の、未明頃から村人数人に背負われながら約束の場所へと向かう途中
私は思わず、来た道を振り返ろうとした。
が、村長の言っていた言葉をふと思い出した。

絶対に、道中は目隠しを取ったり来た道を振り返らない事を厳しく言われた。

一年に一度だけ、ご来光と共に現れる神として人々に畏敬の念を抱かれる
ものの、その神の姿を見たものは身を焼かれてしまうと言う言い伝えがある。

贄がこの役目を負う事で、村からは年に一人【暁の子】と称するていの良い生贄を
差し出す事で、一年の村の繁栄存続といった願いを聞き届けてもらおうとしていた。

奇習だと、皆思いながらも人の力ではどうしようもない事に関しては
頭を悩ませて、これで藁にでもすがる思いでつづけているのだから。

夜明け前にまで、山の上の祭壇に到着すると村人は私を置いて
すぐに下山していった。

暁の子は、一度この祭壇に座すればご来光と共に
潰える命とされている。
教え込まれる作法さえも無い。
ただ、低頭に徹し少しでも命の時間稼ぎをするだけだろうと。

これまでの慣例としては、若い村の娘ばかりが選ばれてきたが
今年は、違った。

私は、先程の村に住んでいたのは数年間だけで上手くなじめずにいたのだ。
トコヨノムラと呼ばれる、今はもう廃れた村から減り続ける村人たちと
散り散りになって、流れついたのが今の、アケノムラ。

私も、阿保ながらに気が付いていた。
トコヨノムラの者が、アケノムラの村の娘と一緒になられては都合が悪いと
言い出したものが居たのだろう。
大方、見当はついていた。

カタチだけ、と着せられた婚礼衣裳。
唇に引いた紅も、化粧も全てが一瞬にして無駄になるだろう。
昔から、黒目が大きく目鼻立ちも女顔だと言われるのが何となく多く
その度に、自己の揺らぎを感じていた。

流行り病で親を早くに亡くし、ただ生きるために毎日働く働く日々。
なので、村長が少し前の寄り合いの帰りに私を呼び止めた時に
予感はしていたのだ。

たった一人、目隠しされたままで
恐らくは人生最後の夜明けを目にすることも無く
自分は消えてしまうのだろうと考えると
無情すぎて、零れ落ちるものさえも無い。

約束通り、何も知らぬ振りをして暁の光に身を差し出すだけ。
視覚を奪われたままでは、何の感知もできないかと思っていたが
頬をかすめる、真冬の風が鼻腔を冷たくしていく。
肺の底まで冷えていた。
雪も降らぬが、凍てつく寒さに間違いない。

東の空が紅く染まるまで、あとどのくらい待てばいいのか。

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