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マルシェに初めて参加したのは、アカデミアに入学し
寮の生活にも慣れ始めて来た頃。
初めは、お店を出す側になるまでに何度かマルシェにも
買う側として参加していた。
資材や機材の購入には地味にお金が掛かる事を
痛感しながら、お世辞にも多いとは言えない軍資金を
手にして一軒一軒の個人のお店から、地元の有名な
老舗のお店を見て回っていた。
なにせ、人が多かった。
片田舎出身の僕からすれば、小さなマルシェには
馴染みがあったけれど、区外の広場で開かれる規模にまでなると
人の多さに圧倒された。
何度か、幼馴染のユークレースも同伴してくれていたものの
予定が合わなくて、来られない時には一人で見物していた。
広場の外れには、警備の人がちゃんと配置されていて
治安維持は適切に行われている。
皆が安心して楽しめる催し物、と言った認識だった。
ただ、時々は人の多さに乗じてスリや、置き引き・盗みを
働くそんな悲しい事案もある事を、僕は後にユークレースから
教えて貰った。
確かに、警戒心は少し持っていた方が良いのかもしれない。
しばらく、出店計画を考えてユークレースにも相談をしながら
僕は、一応アカデミアにも許可申請を出して
認可が下りてからの出店参加となった。
夏の暑さがまだまだ落ち着かない初秋。
いくつものお菓子のレシピから量産をして、鮮度管理も魔法で
行いながらの出店。
この日は、少し遅れてユークレースが警備に加わる事を聞かされた。
広場で自分のお店の設営を朝から行いつつ、ずっと販売するための
商品の鮮度を魔法で管理している。
暑い、頭がぼーっとしそうで慌てて気を引き締めなければ!と
自分に言い聞かせる。
人が段々と広場に集まり始め、マルシェは開幕された。
この日までに準備していた釣銭や、包装資材も売れていくたびに
当たり前だけれど無くなっていく。
お店の商品は売れている。
特に、魔力で冷やす炭酸水の瓶がよく売れている。
暑さと人の熱気で、僕は知らず知らずの内に疲労が
自分に蓄積している事に気が付いた。
隣のお店のおばさんが、僕を気遣って椅子を貸してくれた。
「有難うございます。」
お昼頃には、少しだけユークレースがお店を見に来てくれた。
『魔力切れに気をつけろよ。休憩しなくても大丈夫なのか?』
「ココ、空けられないし。3時までだから大丈夫だよ。」
いくら善意で参加しているとは言え、ユークレースの手を
煩わせることは避けたい。
『…1人で参加するのは大変なのが分かったな。』
「ホントだね。でも、喜んでくれるんだよ?僕の作った魔法の炭酸水で」
『今日は暑いから、あまり無理はするな。顔が青白いんだよお前…。』
そう言えば、今日はまだ思ったよりも汗が出てない気がする。
妙に自分の息があったかい。
あんまり気にしない様にしてた。
「だ、大丈夫…。」
『早くに引き上げる店もある。帰る支度だったら手伝うから。』
「もう少し、だけ…」
僕は結局、椅子に座る前にその場で熱あたりを起こし
倒れてしまった。
寮の生活にも慣れ始めて来た頃。
初めは、お店を出す側になるまでに何度かマルシェにも
買う側として参加していた。
資材や機材の購入には地味にお金が掛かる事を
痛感しながら、お世辞にも多いとは言えない軍資金を
手にして一軒一軒の個人のお店から、地元の有名な
老舗のお店を見て回っていた。
なにせ、人が多かった。
片田舎出身の僕からすれば、小さなマルシェには
馴染みがあったけれど、区外の広場で開かれる規模にまでなると
人の多さに圧倒された。
何度か、幼馴染のユークレースも同伴してくれていたものの
予定が合わなくて、来られない時には一人で見物していた。
広場の外れには、警備の人がちゃんと配置されていて
治安維持は適切に行われている。
皆が安心して楽しめる催し物、と言った認識だった。
ただ、時々は人の多さに乗じてスリや、置き引き・盗みを
働くそんな悲しい事案もある事を、僕は後にユークレースから
教えて貰った。
確かに、警戒心は少し持っていた方が良いのかもしれない。
しばらく、出店計画を考えてユークレースにも相談をしながら
僕は、一応アカデミアにも許可申請を出して
認可が下りてからの出店参加となった。
夏の暑さがまだまだ落ち着かない初秋。
いくつものお菓子のレシピから量産をして、鮮度管理も魔法で
行いながらの出店。
この日は、少し遅れてユークレースが警備に加わる事を聞かされた。
広場で自分のお店の設営を朝から行いつつ、ずっと販売するための
商品の鮮度を魔法で管理している。
暑い、頭がぼーっとしそうで慌てて気を引き締めなければ!と
自分に言い聞かせる。
人が段々と広場に集まり始め、マルシェは開幕された。
この日までに準備していた釣銭や、包装資材も売れていくたびに
当たり前だけれど無くなっていく。
お店の商品は売れている。
特に、魔力で冷やす炭酸水の瓶がよく売れている。
暑さと人の熱気で、僕は知らず知らずの内に疲労が
自分に蓄積している事に気が付いた。
隣のお店のおばさんが、僕を気遣って椅子を貸してくれた。
「有難うございます。」
お昼頃には、少しだけユークレースがお店を見に来てくれた。
『魔力切れに気をつけろよ。休憩しなくても大丈夫なのか?』
「ココ、空けられないし。3時までだから大丈夫だよ。」
いくら善意で参加しているとは言え、ユークレースの手を
煩わせることは避けたい。
『…1人で参加するのは大変なのが分かったな。』
「ホントだね。でも、喜んでくれるんだよ?僕の作った魔法の炭酸水で」
『今日は暑いから、あまり無理はするな。顔が青白いんだよお前…。』
そう言えば、今日はまだ思ったよりも汗が出てない気がする。
妙に自分の息があったかい。
あんまり気にしない様にしてた。
「だ、大丈夫…。」
『早くに引き上げる店もある。帰る支度だったら手伝うから。』
「もう少し、だけ…」
僕は結局、椅子に座る前にその場で熱あたりを起こし
倒れてしまった。
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