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毎日いっしょ。

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頭の中を、空っぽにして好きなキャラで
思い切り書いています。

元は、私の創作から出ているキャラ2人です。

ここでザックリと説明をしていきます。

基本的には、コンビとしてとらえて書いています。
CPでもあり、相棒。

【登場人物】
伊吹(三十路)
元は、忍者であったものの時代の代わりと共に
転職をした、今は製薬会社勤め。
志摩とは、色々ありすぎて
一蓮托生と思って、同棲している。
周りから、オッサン扱いされたりもするが
ただの、面倒見のいい絆され人。

体に消えない雷紋が走っている。


志摩(20代前半)
忍者ショーに出たりしている、本物の忍者。
線の細い体で、ショーでは一躍人気者。
本人は、今一つ、伝えたいものを伝えられずにいる
現状に時々思い悩んでいる。
見た目は、派手そうに思われがちで
心は落ち着いており、言葉も少なめ(伊吹には遠慮なし)

伊吹には精神的にも、支えられていると
自覚もある。
なんだかんだ、付き合いが長くなって
一緒に居られることに満足している。


と、いった感じです。
本来はここに、不死設定も入るのですが
それは、あえて全面だしせずに
2人の日常や、感情に重点をおいて
書きたいな、と思います。

「っ痛ー…、」
ぢゅ、と切れた指先の傷を口に含む。

寝起きの志摩が料理をしていた。

こんな小さな傷さえ、痛みは確かなものだったかと
ぼーっとする頭で、玉ねぎを切る。

『…切ったのか?』

すぐ背後からの声は、伊吹だ。
「ん…、俺の血薄いね。」

は、とため息をつく伊吹がすぐ側に来て
志摩の手を捕らえて
傷の深さを確認した。

「ほら、また大袈裟…」
いいから、と手を引っ込めようとする。
『…刃先か、一旦手を洗って絆創膏、』

生来の世話焼きが、こう毎日も続けられるのが
志摩にとっては、不思議だった。

「伊吹、大丈夫…。舐めとけば治るよ。だって、俺…死にそうにないもん。」

はっきり言わなきゃ、伊吹は時々忘れるんだよな。

まるで、普通の人ぶるんだから。

『志摩、またそんな事を…』
「じゃなくてもさ、大袈裟なんさ。それに、ちょっと…近い。」

思春期の娘が、父親を避ける感覚が
分からないでもない、っての。

『解った…。』
「嫌いじゃないよ?…伊吹の、そゆトコ。」

軽く、手のひらを振って志摩が笑う。
何事も無かった顔で、
台所に立つ。

今夜は、伊吹が早く帰ってきた。
単純に嬉しくって、志摩は夕寝から目を覚ますと
いそいそと、夕飯の支度にとりかかった。

『志摩、』
「んー?」

居間で、伊吹は退屈しのぎを探しているのか
何かを探している気配がした。

『忘れてなんか、いないからな。』
「やろなぁ?」
『老いないお前なら、俺は好都合だし…。』
「や、め、て、もらえます?この変態。」

指先の傷は治癒し始めている。
都合がいいともいえる、この体。

『志摩が至高…!』
「あー?ほんとに?…ね、ちょっとメシ出来そうだからさ
テーブルの上、片してくれ。」

ここの所、続く雨のせいで
今日も部屋の中が、うすら寒い。
大皿に、料理を盛り付けて、居間に運んでいると
ふくらはぎに温かい感触が伝わり

「ギャーーーーー!?テメ、ッ何してんだよ!!皿落っことすトコだったっての!!」

『あ、珍しく家の中で靴下を履いてるから、寒いのかと思って…』

脚を掴まれて、動けずにいると
伊吹は、しれっとした顔で言ってのけた。

「危ないから…っ、本当に…もう、変態。」

感情の上がり下がりが酷くて、志摩は不整脈でも
起こすんじゃないかと、危惧しながら
ゆっくりとテーブルの前に屈む。

『脚を冷やすと、体によくない。そもそも、志摩はいつも寒そうな格好ばかり
しているのは、何なんだ?』
「…いやいや、お前こそ何なんだよ。人の脚に絡もうとしたり、怖すぎるから。」
『その露出、今本当に必要なんですか?』

「人を、露出狂みたいに言うの…やめてもらえます?」

あー、くだらない、と志摩が会話を切り上げようとすると
『俺は、志摩を放っておけずに生きているからな。』

食卓に、器を並べながら伊吹が、微笑む。

「知ってるよ。だって、俺が一番近くで…それを、見て来たんだから。」
気恥ずかしい事を、言わせるなよと
志摩がうつむくと
『いつだって、どこでだって…志摩の事で頭が一杯だ。』
伊吹に。額へと口づけられると
つい、いつもの様に目元がほころんでしまう。

「こんな、オッサン…ほんと、どこが良いんやろ?」



「最近さ~、俺の仕事中の動画が…投稿サイトに乗せられてんの。」

珍しく、眼鏡の奥の瞳が険しそうな志摩を見て
伊吹は身を乗り出す。

『っても、ショーだったら、問題ないんじゃなかったっけ?』

居間の隅に体を寄せて、スマホを片手に操作している志摩が
ずいっ、と画面を伊吹に見せた。

「そうだよ、ショーの動画は問題ないんだけど…このコメント。読んでて
もう、吃驚するやん。」

言われるままに、伊吹が志摩の言う動画のコメント欄を
黙ってスクロールしていく。

「昔から、ファンは居たけど…最近こういうのを見てから、職場に
来る人が増えてるらしくてさ~。何なんだろ?ありがたい話ではあるんだけど
過激なコメントもあったりするから、世の中…変わったな~って思うんさ。」

決して、嫌なわけじゃ、無いよ?と
志摩は恥ずかしそうに柱に額をつけて笑っている。

『…志摩くん、えちえち。脇チラありがとうございます…。これ、女の子からか。』
「女の子も、男の子も…何かもう色々なんさ。俺やっぱり、考えが古いのかな?
俺にそんな事思う相手っていえば、この目の前のオッサンぐらいだと、思ってたのに。」

『志摩くんの脹脛も好きだし、まぁ、一番は顔!なんだけど…。って、これは男性?からか…』
「俺ね、一応は忍者でしょ?ん百年前からの…でも、今の仕事も楽しくて
昔はちゃんと受け継いでいきたいって覚悟とか、信念があって。でも、近頃は
見せる事に特化しすぎた自分がね…間違ってるのかな?とか、考えちゃうんさ。」

真面目な悩みを伊吹は、志摩の口から聞いて
考え込む。
いや、志摩は四六時中頭の中で考え事が、終わらないらしい。

状況、周りをいつも見つめながら生きていると
情報過多になって、気苦労が耐えないのだと。

『お前は、間違わない…。たまには休みをもっと貰って来い。』
「うん。でも、俺…お金大好きだから休めない体だし。」

『俺と志摩は、休みが合わないからなぁ…』
「俺は、土日、祝日が出勤だからね。でも、平日の休みって俺は結構あり難いよ。」

『一日中、寝てるもんな…志摩の場合。』

いつからか、志摩はよく眠るようになった。
時間が、あまりにも長いから
たくさん寝れば、あっという間に時間を消化できるのだと。

「起きて、何かするのも楽しいけど…起きてると余計な気を
使うからさ。頭が疲れちゃうんさ。」

『好きなだけ、休むと良い。志摩がしたい事に尽力すれば、俺はそれを支えよう。』
長い髪を結いながら、志摩は子供の様に頷く。
「伊吹は、毎日…忙しい?」
『毎日、ではなくとも忙しくなる瞬間は来る、か。』
「俺、ヒマでもないし忙しくもない。このまま何を求めて生きていくのかなぁって、
考えると、行き詰る。」

『求めるのを、止めればいい。志摩には志摩の生きる道がある。望むままなんだ。』
「…何だったら、俺が動画投稿でも始めようかな?」

悪戯っぽい笑みを志摩が、伊吹に向ける。
もちろん、解っててこの無邪気な青年は、あえて
言葉にするのだと、
伊吹も承知していた。

『じゃあ、俺が逐一コメントしよう…志摩の愛らしさを、賛美す「…ばーか。何でオッサンまで一緒に
なってんのさ。それじゃ、俺が面白くないってのに」…志摩は、相変わらず天邪鬼だなぁ。』


オッサンに、独占されているのが、まんざらでもない
志摩青年。



志摩の忍者のお話とか。

「自分が、今ここに存在してる事を…伝えたいのかな?」

いつだったかの、志摩の言葉が
伊吹には急に懐かしく思い出される。

満天の星空を見上げて、どこか冷静な目で
言葉をつむぐ。
真っ暗闇の中を、月明かりも星影もない
しんとした、夜のとばりが下りた頃が

志摩の、時間だった。

明るい時には、所在がないとでも言うのだろうか。

長く、忍者としての意識が抜けなかった。

肩書を気にした事もない伊吹だったが、志摩はいつの時代も
どこか物憂げで。
考え事をする性質なのだという事は、見ていれば分かった。

『今の時代は、そうなのかもしれないな。外の世界がある事が
当たり前の概念となっている。』

「いつの世も、素性を隠して…引っ越しももう、何度もした。
人の記憶に残らないようにって。不思議な事やなぁ。」

『それでも、志摩はずっと忍者の肩書は…下ろしては居ないのが凄い。』

にやぁ、と志摩が笑い
「え?皮肉?」
『まさか…。』
「俺の本来は間違いなく、忍者でしかないし。他のものになれる気もしない。」
『たまには、昔の様にしてもいいんだぞ?』
伊吹が上を指さした。

あぁ、と志摩が察して脚を組み
「駄目だよ、空に干渉するのは…。ただでさえ、この数年は豪雨が増えてきてるのに。もう
随分と空には関わらなくなったなぁ。」

風で雲を呼び、雨を降らせ、雷を降ろす。
これらが、当たり前にできるのが
伊吹の目の前で、今日も溶けそうに寝転がっている
志摩の特技だった。

今、こんな事をすれば周囲にも迷惑を掛けるため
志摩は牙を抜かれた虎のようでもある。

借りてきた猫とでも、言うべきか。

『龍が呼べる域なのに、もったいない。』
「世に合わない…。俺は、ショー自体も実演も魅せ方の一つだと思うから。」

気圧の影響や、湿度にもかなり影響されやすい体質の
志摩を見ていれば、その大変さがよくわかる。
その上、帯電体質。

なので、家の中では志摩は、ほとんど裸足なのだった。

『ここに、こんなにも優秀な忍者がいる事を…誰にも言えないなんて…』
「忍んでないんさ、そもそも。」
『忍者のイメージが独り歩きでも、してるみたいだ。』
「場に違和感なく、溶け込むのはみんな無意識にやってるし。」
『俺は、その点…不向きだったな。』
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