5年ぶりのこんばんは

あきすと

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夜中に落ちて来た恋人

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ずっと、忘れられない相手がいて俺にはいつからか
不思議な能力が身についていたのだ気づいたのは、ごく最近だった。

身に降り掛かる不運を回避できるものが、世の中に一体どのくらい居るのだろう。
いや、そもそもが幸運と不運だけでこの世の中が二分されている筈もない。

俺は、19歳の頃に付き合っていた相手を喪って、5年が経過しているが
日常の中で揺れたり揉まれながら、歳だけはきっちり重ねていくものだから
心が上手く追いつけていない。

思い返せば、昨日と似た鮮明さでその日の事を振り返られる。
起こった事は無かった事にもできない。
分かり切っている。毎日、少し思い出しては、胸の底の重りを感じて
すぐに、他の事に気を移して暮らしている。

ある日、寝ている時に急に胸の辺りが重たく感じて
まさか、金縛りかと思い視線だけをそっと自分の身体を見ようとして
『った~、いきなり落とすなんて…ひどい。』
聞きなれた声に、鳥肌が立った。

「その声…、朝来か?」
『…ん?…んん?あれぇ、もしかして、ぇーっと?』
「思い出してないだろ…」
『うん。名前忘れちゃったからちょっと、教えてくれる?』
「彼氏の名前忘れるなよ。あぁ、それよりも…体が重いんだけど」
『…!二葉君、だ。思い出した~。こんばんは、お久しぶりです』
夢を見てるんだろうか?
朝来は、…朝来はもう居るはずがない。
なのに、俺の前に…居る。
畳の上に立って、昔よく見た格好で。
「いやいや、お前…成仏、してないのかよ」
『多分、二葉君があんまりにも俺を呼ぶから?ちょっと、何とかして来なさいって感じで
落っことされたんだよ。』

目から鱗と言うか、何と言えばいいのか分からなかった。
「じゃ、俺は日頃の行いをお前にも…見られてるのか?」
『うん。見守ってるんだけどね。こんな事は特例で…ぁ、ううん。とにかく、二葉君のしばらくの間
傍にいて、俺が出来る事をするんだけど。初めてだから、何をしたらいいのかさっぱり』

「もしかして、俺によくない何かを…感じ取ってるのか?」
『分かんない。俺にも…とりあえず、がんばりましょう!』

えーーーー。

「お前、はっきりと見えると思ってたけど、周りがぼんやりしてるな。」
『仕方ないよ。もう、この世界には居なくなった存在なんだから。でも、こんな事言うと
怒られそうなんだけど…俺、二葉君に逢いたかったから。今回の事少し嬉しかったりする。駄目だね。』

こんな事、よく言ってたなぁ。朝来は明るくてちょっとドジな性格が可愛げがあって
高校の時から付き合っていたんだ。
「…そろそろ寝るわ。お前はどうすんの?」
『俺は、消えたり現れたりも自由。もう寝る時間だもんね?あ、もし用があったら心の中で呼び掛けてね。』
「おやすみ。…ってのも変か。」
ぱっと、朝来の姿が消えた。

居なくなれば、それはそれで静かになって何となく寂しい気もしたが
明日の朝になれば、きっと夢だったと
思う事になるんだろう。
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