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決心。

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夏休みに入る。

寂しい、もうしばらくしたら裕乃とは会えなくなる。

2か月ほどの夏休みは、現実的ではない。


10月の後期からのやる気を、充分に失わせてくれる。

大きな退屈を小さく埋める日々だ。


今年は、帰省するの止めようかな?なんて裕乃に言ったら

どんな顔するんだろう?

ずっと、金曜日の夜の気持ちでいたい。


少しだけ、飲んで。ちょっと笑って

話してる内に、心地よくなって眠くなる。

裕乃となんとなく過ごしてみたいだけ。


友人以上の心を俺が持っているのかも

まだ分からないけど。

不器用で懸命な、そして繊細に揺れてる裕乃は

一人の人間としてとても魅力的だ。


5分も大学から掛からない立地の

学生アパートに2人で向かう時。

去年の秋ごろだったかな?

初めて、

『ごめん。今日は用事があるから。……未来、なんて顔してんだよ。』

「部屋、寄らない?」


あー、何だろう。この感情。

すごく、弱弱しくて。でも、強く腹の奥ににじみ出てる。

哀しいんじゃない、きっと寂しいんだと思った。

ゆるやかに手を振って、清々しい笑顔で

裕乃はオレンジの空を背景に、溶けて行く気がした。


輪郭がぼやけて思えたのは

俺の心が、どうかしてるだけ。それだけ?

また明日、なんて言わなくてもイイ間柄。


またね、もバイバイも俺は聞きたくない。

いちいち、区切らなくても良いって思ってた。

俺は、裕乃と同化したい。


不可解な感情かもしれないけど。

さっき思い出した裕乃の後姿は、確かにオレンジと

同化していた。


電話を、手に取ってみる。

久し振りに掛けた母の番号。

「ぁー…、そう。夏休みさ。……帰る。バイト探さないとな。」


裕乃と過ごす夏休みの可能性を

俺は、自分から可能性を下げに行った。

何も言わずに、帰ってしまおう。


って、思ってたのに。

裕乃からその夜、メッセージが届いていた。
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