①天乃屋兄弟のお話

あきすと

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杏子の頃

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「…で、出来たぞ。星明」
俺は、庭先で星明が暑がるので髪を切ってやっていた。
昔から、ご家庭散髪はしてきているんだけど。
今日は、数年ぶりにやってみるか。って流れになり
俺も、安請け合いしたのがいけなかった。

『兄貴、手鏡かして』
一瞬、ドキッとした。
「ぁ、後ろ見たいんだろ?それは後で洗面所でな」
俺は、誤魔化すように切り落とした星明の髪を掃き集める。

『そだね、兄貴は昔美容師さん目指してたくらいだから、心配ないか。』
星明の無意識の言葉が、心にグサリと刺さる。

結構、短くしてしまったんだよな。
整える感じでは、全然なくなってるし。

トップの方も、本人はそんなに気づかないだろうけど
俺が気にするレベルなだけかもしれないし。
『なんか、スッキリした~もしかして、結構梳いてくれたの?』

「厚みも減らしたし、長さも…そうだな。今から暑いし丁度良いんじゃないか?」
星明は髪を手櫛で通しながら頷いている。
「…やっぱ、ごめん!星明…、お兄ちゃん嘘だけはつけないから~。謝る!」
『ほぁ…、やっぱり。なぁんか元気ないし。いつもだったら馬鹿みたいに
俺の天使が~とか、褒めちぎるのに。』

星明は、苦笑いしている。
「怒らない…?星明…」
『うん。だって、もう無いのに騒いでもしょうがないもん。じゃ、説明だけ
聞かせてくれる?』

星明が性格の良い天使で、本当に良かった。
俺は、とりあえずスマホで数か所のアングルから
星明の頭部を撮影して、縁側に座り隣で説明した。

『…あのさー、細かすぎてそんなの、兄貴にしか分からないよ?』
写真を見ながら、星明はキョトンとしてる。
「本当に?」
『ま、まぁ…ちょっと思ってたよりかは後ろの方が短いけど。全然、
見て分かんないもん。』
「レイヤーの入れ方がね…ちょっとさ」

星明はニコリと笑って、
『でも、いつも同じ髪型だったから、なんか夏らしくて自分で言うのも何だけど
良いと思うんだよね!』
俺の、杞憂は簡単に洗い流されてしまった。

『お邪魔します…、』
加賀が庭先にやって来た。
相変わらず、爽やかな雰囲気でその手には
「お前、また何持って来たの?」
『あ、加賀さんだ~。こんにちは。』

『祖母が送って来た。あんず。』
「匂いすごいな…懐かしい。」
クラフトの紙袋に入ったものを、加賀は星明に手渡した。
『髪、切って貰ったのか。少し、子供の頃を思い出すな。似合ってる。』

俺の前で、イチャイチャしだす加賀と星明に内心
おもしろくないと思っていたけど。
『ありがとう、加賀さん。早めに美味しくいただきますね。』
「うんうん、星明に任せておけば間違いないからな。」

『月夜もたまには、料理も手伝ってやれよ?星明ばっかりに
作らせてるだろう。』

う、当たってるだけに反論しづらい。
「分かってるよ。」
『顔色が、あんまり良くない。こう、毎日暑いと体調も管理しにくいからな。
2人とも無理するタイプだから、気に掛けてる。』
真面目な言葉を、ありがたく受け止めて。

「何か飲んでく?今日休みなんだろ。」
『今日はこの後予定があるから、ありがとう。』
『加賀さん、結婚するからでしょ?』
星明の言葉に、加賀はにこりと笑って
『…大事な存在が増えるのは、とても良い事だ。』

どうやら、本当に結婚する流れらしい。
勿論、心から祝福する。ただ、加賀の心配な所は
初恋が星明であると言う点。

星明は昔から、出来上がってたし。
可愛さが異常値だから、致し方ないよな。
「さっさと結婚する方がいいよ。加賀みたいに堅実な相手ならな。」

星明は加賀に頭を撫でられて、俯いている。
『なんでだろ、加賀さん取られるみたいで…ちょっと寂しいなぁ』
星明、お前がそんな事言うと…物事がよからぬ方向に
行くかもしれないってのに。

「あらあら、お兄ちゃんがいるでしょ?星明~」
『でも、兄貴は…兄貴だし。加賀さんは俺の幼馴染でもあるからさ。』

なるほどね。でも、言わんとしてる事は理解できる。
『星明…、』
「加賀~、ウチの弟泣かせないでくれます?初恋の相手なんだろう?」
気持ちに、ケリつけるくらいは。
俺も、手伝ってやってもいい。
『加賀さん、俺…兄貴の次に、加賀さんが大好きだよ。』

はぁ!?そこまでサービスしろとは言ってない。
加賀は、少し屈んで星明の前に来ると
『俺も…星明は特別だと思っていた。』
星明が立って、加賀に抱き着いた。相変わらず、加賀の手は
星明の頭を撫でている。

星明は、少しだけ寂しそうに笑って加賀から離れた。
「今生の別れじゃあるまいし。逆に縁起悪いわお前ら。」
加賀は、珍しく赤面して帰って行った。

どうすんの、この微妙な空気。
『加賀さんは、俺のもう一人のお兄さんだもん。』
「でしょうね。」
俺は、星明から紙袋を貰ってあんずを冷蔵庫に入れに行く。

ちょっとでも傷がつくと、痛みが早いから
星明なら、美味しいお菓子に変えてくれる事だろう。
台所に戻って来た星明は、俺を見つめて
『兄貴は、結婚願望あるんじゃないの?』
直球で聴いて来る。

「俺は、いいの。星明と一緒に生きる事が大切なんだ。」
『別にね、誰かに認めて貰おうとは思わない。でも、俺がいるから
兄貴が何かを犠牲にしたり、諦め続けるなら…俺は兄貴の側に
いられないと思う。』

言葉ってのは、とても便利で。とても不自由だ。
ごまんとある、組み合わせを駆使しても
自分の想いをそっくりそのまま、相手に伝える事はできないのだから。
「俺は、神様が…一番近くに星明と言う存在を与えてくれたから。
他の人はもう、って。分かるかなぁ?この感覚。」

複雑そうな表情をして、星明は俺にくっついて来た。
『俺もね、同じ。兄貴が居ればそれでよくて。他の人ってのは
考えられない。』

俺は、愛おしいって言葉の意味を星明からいつも感じている。
何度抱き締めて、繋げた体も一瞬の充足でしかない事も理解している。
「愛してる事は、もう俺にとっては大前提なの。星明が生まれた時から。
その色が、変化していってるだけだ。」
星明は、爪先立って俺にキスをした。

『一つになれない事も分かってるよ。でも、良いの。ただ、兄貴は
カッコいいし。子供が居たなら絶対可愛いだろうなぁって。』
「まぁね?そんな事言ったら星明の子供なんて、もっと…」

お互いが、恥ずかしい程にお互いを大好き過ぎて笑ってしまう。

『兄貴、あんず触ったからいい匂いする…』
「何作ってくれるの?アレで」
『タルトとかかな?美味くできたらお客様にも出していい?』
「好きにするだろ?いつも…」
はにかんで、星明は俺の服の裾を少し引っ張る。

「さすがに、ココではダメだろ?星明のテリトリーなんだし」
『でも、キス足りない…』
天然だよなぁ、天然の小悪魔っぽいんだよ。
「あー、はいはい。抱っこね」
軽々と星明を抱き上げて、リビングのソファに座らせる。
俺の腰に抱き着いて、ちらっと見上げるしぐさもイチイチ可愛い。

「はぁー、目の毒だから。」
『んふふっ…』
星明が、ごそごそと俺のズボンの前を寛げてしまう。
「星め…っ…、」
星明の口内の温かさに包まれて、一瞬背中に電気が走ったかと思った。

珍しい。本当に珍しい。あんまりしてこないのに。
してしまうと、その後俺がキスをしなくなるから。とか言ってたな。

小さめの口に、自分のを…と考えるだけでも頭どうにかなりそうなのに
目の前でのビジュアルに俺が未対応すぎた。
薄目の舌がちろちろ見え隠れしながら、まさかこんな事をされるなんて
思ってもみなかったから、本当に余裕がない。

危うく星明の頭を、押さえつけるところだったのを回避した。
俺も、星明に触ってやりたいけど。そこまで、果たして余裕があるのかも
怪しい。
決して上手くはないし、それが返って良いとも言えるし
何より絵面がやばすぎて直視したら、アウトだと思う。

ただでさえ、音だけでも顔熱いのに。
『…っはぁ…にき…っぃ?』
呼ばれてる…。
顔を少し上げる。
『ね…ぇ、…ひもちぃ…?』

ファー……

クッソえろい顔しやがって、星明の奴……!!
ちょ、やばいやばい。星明どかさないと…っ
さては、飲む気だな!?ぁ……。

『ぁ…は…っ……』
タイミング悪く、中途半端に吐精したのが星明にかかってしまい
俺は眩暈が起きそうだった。
そして、星明は咳き込みだした。

最悪だ…。

俺は、慌てて、テーブルのティッシュを数枚とり星明の口元を拭う。
「吐きだせ、」
『ンン…っ、平気…それより』
はぁはぁ、と星明は肩で数回息をする。
背中を撫でてやりながら、横抱きすると
「無理すんなって。見てらんないぞ。苦しかっただろうに。」
『俺…これはたしかにあんまり、しないけど。嫌いではないよ。苦手なだけで。』

「そんな事してくれなくても、俺は星明が好きなのは変わらないからな。」
『…そっか、ありがとう』

星明はニッコリと笑って、俺にキスをした。
「…ギャー…、い、今のは俺ちょっと無理かも。」
『うん。だって、ワザとだもん』

今日も、俺の星明が可愛く俺を弄んでくれている。
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