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天使様…?いいえ、魔王様ですっ!
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目を覚ましたミスティは、自分の身体を思うように動かすことができないことに気が付いた。一瞬状況が理解できなかったが、どうやら拘束魔法をかけられているらしい。
床に倒れたままあたりを見回すと、どこかの国の玉座の前に横たえられていることが分かった。
「目を覚ましたか」
少女の声だ。ミスティよりもずっと幼い。
おそるおそる見上げると、玉座に座っているのは真っ白な髪の幼女だった。
「て、天使さま…?」
やたら黒っぽい服を身にまとってはいるが、肌と髪が白く、かわいらしい大きな瞳をぱちくりと瞬く姿はまさしく天使であった。
やはり私は死んだのか。死んだと思うと、ミスティは少しすっきりした。
「天使とか言ってますよ、魔王様」
今度は低い男の声だ。声のした方を見ると、真っ黒な髪で片目を隠したガタイのいい男が笑っていた。
「天使だと…?この、極悪非道の魔王タピア様に向かって、天使だと…?」
ん?なんか魔王とか言ってる気がする。もしかしてここは地獄ですか?!民衆たちを騙してゴミを売りつけていたから、地獄に落ちたんですか?!
「ち、違うんです!国王に命じられて!あのクソゴミボケカス男に命じられて作ってただけなんです!民を騙したかったわけじゃないんです!」
「何を言っておるのだ…?」
ミスティの必死の言い訳も、魔王には伝わらない。なんとなく、ここは地獄ではなさそうな気がする。
ああ、それにしれも…!怪訝な顔の天使様…もとい魔王様も本当におかわいらしい。
「おい、キティ。お前が拾ってきたんだろ。なんで拾ってきたんだ?説明しろ」
魔王はミスティの隣にいる男に向かって問いかける。
横を見ると、赤髪に猫の耳のようなものがついた男が正座をさせられていた。
「た、倒れてたんですにゃ。にゃーが倒れてた時も魔王様は拾ってくださったじゃにゃいですか」
大の男が、幼女に追及されてあせあせと言い訳をするさまは滑稽だ。
「元の場所に返してきなさい」
しっし、と、うざったそうに魔王は言う。猫男は渋々といった様子で、ミスティを立たせた。
「ちょ、ちょっと待って!帰りたくないの!お願い!」
ミスティは必死だった。やっと国を抜け出せたっぽいのに、帰されるわけにはいかない。
それに、こんなにかわいい魔王様と離れたくない!
「なんでもします!働かせてください!」
「却下。お前、ここがどこだか分かってないだろ。人間がいていい場所じゃないんだよ」
魔王はため息をついてそう言った。そういえば、ここはどこなんだろう。
「ここは魔界だ」
ミスティがあたりをきょろきょろと見回しているのを見て、魔王が答える。
「魔界?!そんなもの、実在したんだ…」
「そうだ。人間がいていい場所じゃない。自分の世界に帰りなさい」
幼女の姿の魔王に命令されるのは不思議な気持ちだった。かわいい女の子に命令されるのも悪くない。ミスティの中の妙なスイッチが入りかけた。
「あんな国に帰るなら魔界で働いたほうがいいです!1日18時間は働けます!昨日までは三徹で672連勤目でした!300連勤までは元気にこなせます!なんでもします!お願いします!」
ミスティの言葉に、あたりがシン…と静まり返る。あれ?何か変なこと言ったかな。
「え…?やっぱり、1日20時間は働かなくちゃだめですか…?」
隣の猫男が、同情したような目でミスティを見る。何?どうしてそんな目で見るの?
「魔王様。これでもこの女を元の場所に返せとおっしゃいますにゃ?」
「うーん」
魔王はしばらく考えて、それから盛大なため息をついた。
「それで、お前、何ができるんだ?」
魔王の問いかけに、チャンスを感じたミスティはここぞとばかりに自分を売り込む。
「なんでもできます!得意なものは光魔法で、一番得意なのはフレアです!その気になればこの世界のすべてを強烈な熱エネルギーで焼き尽くすことができます。自分の全体魔力と一度に出力できる力を具体的に計算したので間違いないです!ちなみに、私のフレアを食らったものは跡形もなく焼き尽くされて塵の1つも残りません。しばらく不毛の土地にはなりますが、魔族は強そうなのでたぶん暮らせますよ!手始めに私の国を滅ぼしましょうか!」
魔王も猫男も片目隠し男も、唖然としてミスティを見た。
「いや…お前の国はいらないんだが」
「え?!ゴミ国王を焼き尽くしたいんですけど、だめですか?!」
「やるなら一人で勝手にやってくれ」
魔王は頭を抱えてもう一度ため息をつく。
「とにかく、一度しっかり寝た方がいい。今回も倒れてからちょうど3時間で目を覚ましたからな。寝てないから頭がおかしくなっているんだろう」
魔王はそう言って、拘束魔法を解いた。
「さ、最初の仕事が”睡眠”ってことですか…?!どんだけ優しいんですか魔王様?!かわいいだけじゃなくて優しいなんてやはり天使では…」
「キティ、連れていけ。くれぐれも他の奴らに会わせるなよ」
魔王はミスティの言葉を完全にスルーして猫男に指示を出す。
「はいにゃ!」
魔王からの命令に、猫男は嬉しそうに答えた。
「しっかりついてくるにゃ」
立ち上がってみて気付いたが、猫男にはしっぽも生えていた。しっぽをピンと立ててミスティを先導する姿は、どう見てもただの猫だった。
床に倒れたままあたりを見回すと、どこかの国の玉座の前に横たえられていることが分かった。
「目を覚ましたか」
少女の声だ。ミスティよりもずっと幼い。
おそるおそる見上げると、玉座に座っているのは真っ白な髪の幼女だった。
「て、天使さま…?」
やたら黒っぽい服を身にまとってはいるが、肌と髪が白く、かわいらしい大きな瞳をぱちくりと瞬く姿はまさしく天使であった。
やはり私は死んだのか。死んだと思うと、ミスティは少しすっきりした。
「天使とか言ってますよ、魔王様」
今度は低い男の声だ。声のした方を見ると、真っ黒な髪で片目を隠したガタイのいい男が笑っていた。
「天使だと…?この、極悪非道の魔王タピア様に向かって、天使だと…?」
ん?なんか魔王とか言ってる気がする。もしかしてここは地獄ですか?!民衆たちを騙してゴミを売りつけていたから、地獄に落ちたんですか?!
「ち、違うんです!国王に命じられて!あのクソゴミボケカス男に命じられて作ってただけなんです!民を騙したかったわけじゃないんです!」
「何を言っておるのだ…?」
ミスティの必死の言い訳も、魔王には伝わらない。なんとなく、ここは地獄ではなさそうな気がする。
ああ、それにしれも…!怪訝な顔の天使様…もとい魔王様も本当におかわいらしい。
「おい、キティ。お前が拾ってきたんだろ。なんで拾ってきたんだ?説明しろ」
魔王はミスティの隣にいる男に向かって問いかける。
横を見ると、赤髪に猫の耳のようなものがついた男が正座をさせられていた。
「た、倒れてたんですにゃ。にゃーが倒れてた時も魔王様は拾ってくださったじゃにゃいですか」
大の男が、幼女に追及されてあせあせと言い訳をするさまは滑稽だ。
「元の場所に返してきなさい」
しっし、と、うざったそうに魔王は言う。猫男は渋々といった様子で、ミスティを立たせた。
「ちょ、ちょっと待って!帰りたくないの!お願い!」
ミスティは必死だった。やっと国を抜け出せたっぽいのに、帰されるわけにはいかない。
それに、こんなにかわいい魔王様と離れたくない!
「なんでもします!働かせてください!」
「却下。お前、ここがどこだか分かってないだろ。人間がいていい場所じゃないんだよ」
魔王はため息をついてそう言った。そういえば、ここはどこなんだろう。
「ここは魔界だ」
ミスティがあたりをきょろきょろと見回しているのを見て、魔王が答える。
「魔界?!そんなもの、実在したんだ…」
「そうだ。人間がいていい場所じゃない。自分の世界に帰りなさい」
幼女の姿の魔王に命令されるのは不思議な気持ちだった。かわいい女の子に命令されるのも悪くない。ミスティの中の妙なスイッチが入りかけた。
「あんな国に帰るなら魔界で働いたほうがいいです!1日18時間は働けます!昨日までは三徹で672連勤目でした!300連勤までは元気にこなせます!なんでもします!お願いします!」
ミスティの言葉に、あたりがシン…と静まり返る。あれ?何か変なこと言ったかな。
「え…?やっぱり、1日20時間は働かなくちゃだめですか…?」
隣の猫男が、同情したような目でミスティを見る。何?どうしてそんな目で見るの?
「魔王様。これでもこの女を元の場所に返せとおっしゃいますにゃ?」
「うーん」
魔王はしばらく考えて、それから盛大なため息をついた。
「それで、お前、何ができるんだ?」
魔王の問いかけに、チャンスを感じたミスティはここぞとばかりに自分を売り込む。
「なんでもできます!得意なものは光魔法で、一番得意なのはフレアです!その気になればこの世界のすべてを強烈な熱エネルギーで焼き尽くすことができます。自分の全体魔力と一度に出力できる力を具体的に計算したので間違いないです!ちなみに、私のフレアを食らったものは跡形もなく焼き尽くされて塵の1つも残りません。しばらく不毛の土地にはなりますが、魔族は強そうなのでたぶん暮らせますよ!手始めに私の国を滅ぼしましょうか!」
魔王も猫男も片目隠し男も、唖然としてミスティを見た。
「いや…お前の国はいらないんだが」
「え?!ゴミ国王を焼き尽くしたいんですけど、だめですか?!」
「やるなら一人で勝手にやってくれ」
魔王は頭を抱えてもう一度ため息をつく。
「とにかく、一度しっかり寝た方がいい。今回も倒れてからちょうど3時間で目を覚ましたからな。寝てないから頭がおかしくなっているんだろう」
魔王はそう言って、拘束魔法を解いた。
「さ、最初の仕事が”睡眠”ってことですか…?!どんだけ優しいんですか魔王様?!かわいいだけじゃなくて優しいなんてやはり天使では…」
「キティ、連れていけ。くれぐれも他の奴らに会わせるなよ」
魔王はミスティの言葉を完全にスルーして猫男に指示を出す。
「はいにゃ!」
魔王からの命令に、猫男は嬉しそうに答えた。
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