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第22話 モラルに欠ける
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その時壱流に殺されても良いと思ったなら、そこで本当に死んでしまっても良かったのか。
そんなに好きだったのか。
けれど、やはり短慮だし浅はかだ。
「今思うに、いつ消えるかわかんない自分だからこそ、その時の感情を優先させてたんかな、とか……」
「はた迷惑な奴だな」
「竜ちゃんのこと話してるんだよ」
ぴっ、と俺の鼻先を指差して、壱流は軽く笑った。アルコールのせいか、若干ご機嫌が直ってきた気がする。しかしその指はすぐにテーブルに下りて、ため息が洩れた。
「俺ん中でさ、竜司のアレが萎えてくのがわかんの。挿れっぱなしで首なんか絞めさせるから、このまま死んじゃうのかっていうのがすごいリアルで、だからすごい悲しくなって。……手ぇ、離した」
「いきなり何言ってんだ」
唐突に妙なことを口にされ、俺は動揺した。
もしかして.5というのはこの首絞めプレイで中断された分を言っていたのだろうか。
……いや、別にプレイじゃないだろうけど。
何を考えているのだ俺は。ちょっとくらくらしている俺を尻目に、壱流はまたビールを流し込んだ。
「と、ところで……流血後のアルコールって、どうなんだ?」
「どうなんだろうな。よくないかも」
「もうやめとけ。なんとなく昨日のことはわかったからさ」
「信じてくれるんだ?」
ことんと缶をテーブルに置いた壱流が、俺の目をじっと覗き込んだ。
まただ。
この印象的な黒い目に、引き込まれそうになる。
今の俺にとって壱流は友達であり恋人ではなかったが、見つめられると不思議な気分になるのは何故だろう。
以前からこうだったろうか。それとも壱流の視線が、以前とは異なった性質の物に変わってしまったのか。
消えた時間の中で深みを増した黒。綺麗な闇の色。
「……信じてやるよ?」
なんとか返事をした俺から、壱流はゆっくりと視線を外した。
ゆうべ、こいつに記憶だけを殺された俺は満足だったのだろうか。
それとも現状を知ったら、後悔するだろうか。結果的に壱流はまたリセットされた俺に出会ってしまったわけで、なんの解決にも至っていない。
実に短慮だ。
「なあ、真田……」
「──ん」
「俺のこと、どう思ってたんだ?」
無意識に苗字で呼んでしまったことに気づいたが、壱流は特に指摘しなかった。
「どうって?」
「いや、だから。昨日までの俺は、おまえのなんだったんだ? って」
恋人、という返事が返ってくるのかと待っていたが、壱流はちょっと考えてから、椅子から腰を上げた。
「さあ。俺にもわからない」
そんなに好きだったのか。
けれど、やはり短慮だし浅はかだ。
「今思うに、いつ消えるかわかんない自分だからこそ、その時の感情を優先させてたんかな、とか……」
「はた迷惑な奴だな」
「竜ちゃんのこと話してるんだよ」
ぴっ、と俺の鼻先を指差して、壱流は軽く笑った。アルコールのせいか、若干ご機嫌が直ってきた気がする。しかしその指はすぐにテーブルに下りて、ため息が洩れた。
「俺ん中でさ、竜司のアレが萎えてくのがわかんの。挿れっぱなしで首なんか絞めさせるから、このまま死んじゃうのかっていうのがすごいリアルで、だからすごい悲しくなって。……手ぇ、離した」
「いきなり何言ってんだ」
唐突に妙なことを口にされ、俺は動揺した。
もしかして.5というのはこの首絞めプレイで中断された分を言っていたのだろうか。
……いや、別にプレイじゃないだろうけど。
何を考えているのだ俺は。ちょっとくらくらしている俺を尻目に、壱流はまたビールを流し込んだ。
「と、ところで……流血後のアルコールって、どうなんだ?」
「どうなんだろうな。よくないかも」
「もうやめとけ。なんとなく昨日のことはわかったからさ」
「信じてくれるんだ?」
ことんと缶をテーブルに置いた壱流が、俺の目をじっと覗き込んだ。
まただ。
この印象的な黒い目に、引き込まれそうになる。
今の俺にとって壱流は友達であり恋人ではなかったが、見つめられると不思議な気分になるのは何故だろう。
以前からこうだったろうか。それとも壱流の視線が、以前とは異なった性質の物に変わってしまったのか。
消えた時間の中で深みを増した黒。綺麗な闇の色。
「……信じてやるよ?」
なんとか返事をした俺から、壱流はゆっくりと視線を外した。
ゆうべ、こいつに記憶だけを殺された俺は満足だったのだろうか。
それとも現状を知ったら、後悔するだろうか。結果的に壱流はまたリセットされた俺に出会ってしまったわけで、なんの解決にも至っていない。
実に短慮だ。
「なあ、真田……」
「──ん」
「俺のこと、どう思ってたんだ?」
無意識に苗字で呼んでしまったことに気づいたが、壱流は特に指摘しなかった。
「どうって?」
「いや、だから。昨日までの俺は、おまえのなんだったんだ? って」
恋人、という返事が返ってくるのかと待っていたが、壱流はちょっと考えてから、椅子から腰を上げた。
「さあ。俺にもわからない」
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