転生したらただの女の子、かと思ったら最強の魔物使いだったらしいです〜しゃべるうさぎと始める異世界魔物使いファンタジー〜

上村 俊貴

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第6巻第2章 竜騎士闘技会

決勝戦

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「くっそ~! もうちょっとで勝てたはずだったのにっ!」

「ふっふーん、甘い甘い。私に勝とうなんて100年早いよっ! なんてね」

 マヤは地面に倒れたウォーレンに手を差し伸べる。

 ウォーレンがその手を取ると、会場から割れんばかり拍手が巻き起こった。

『勝者! マヤ選手っ!! いやー、準決勝に恥じない激闘でした!』

 竜騎士闘技会の準決勝、マヤとウォーレンのミルズ村代表同士の戦いは、マヤが勝利した。

 始まってすぐに正面から組みあったドラゴン同士の取っ組み合いは、強化魔法がかかっているマヤのドラゴンが早々に制し、そこからは単純にマヤとウォーレンの戦いだった。

 最終的には、自身に強化魔法をかけたマヤがウォーレンの剣を弾き飛ばし、ウォーレンは倒れ込んだところで降参を宣言、決着となったのだ。

「次は勝ってやるからな」

「ふふっ、いつでも相手になってあげるよ。でもその前に、約束、覚えてるよね?」

「ああ、覚えているとも。負けたほうが勝った方の言う事をなんでも1つ聞く、だろ? マヤは好きだよな、こういうの」

 前回が射的で対決した時と同じ罰ゲームに、ウォーレンは苦笑した後、思わずマヤから顔をそらした。

 ただ言うことを1つ聞くだけだったはずの罰ゲームでマヤに告白されたことを思い出したのだ。

「今回は前みたいなやつじゃないから安心してって」

「なっ!? 俺は何も言ってないだろう?」

「顔見ればわかるって。ささっ、早く行こうっ」

 マヤはウォーレンの腕を抱きしめると、そのままぐいぐいと引っ張っていく。

 それを見ていた2人を恋人同士だと思った一部の観客から黄色い声が上がるが、マヤは気にせず歩いていく。

「お、おいっ! マヤ、自分でついていくから引っ張るなって」

「ウォ、ウォーレンさんは、黙って引っ張られてればいいんだよっ」

 マヤの声がやや震えていることに気がついたウォーレンがマヤをよく見ると、白く輝く髪の隙間から覗く小さな耳は、真っ赤に染まっていた。

(恥ずかしいなら腕なんて組まなければいいだろうに)

 ウォーレンは微苦笑すると、早足でマヤの隣に並ぶ。

 そのままマヤが抱きついているのとは反対の手でマヤの頭をぽんぽんと撫でる。

「並んで歩くから引っ張らないでくれ。それならいいだろう?」

「…………っっ!? う、うん…………」

 マヤはうつむいて消え入るような声で返事をする。

「それで、俺は何をすればいいんだ?」

「え? えーっと……一緒に、出店を回って欲しい……です」

「了解だ。それじゃあ、まずは腹ごしらえだな」

 黙って頷くマヤを連れて、ウォーレンは出店へと向かった。

***

 マヤたちが楽しく出店を回っていた頃、エスメラルダはファズが泊まっている豪奢な部屋を訪れていた。

「あなたがセシリオ殿の使者の方ですか?」

(セシリオ様を「殿」とは、なかなかふざけたトカゲですね)

 エスメラルダは内心でファズを軽蔑しながら、それをおくびにも出さずにファズからの問いかけに答える。

「ええ。エスメラルダと申します、ファズ様」

 エスメラルダはメイド服のスカートの前で手を合わせると、恭しく頭を下げた。

「エスメラルダさん、あなた、以前ミルズ村の連中と一緒にいたようですが……」

「あれは個人的な事情です。セシリオ様は関係ございません」

「そうですか。その事情とやらが気になりますが、今それはいいでしょう。セシリオ殿はなんと?」

「はい、セシリオ様は「予定通りやっていただいて構わない。報酬は約束する」と」

「素晴らしい! これで……っ! これで私が……っ!」

「ファズ様?」

「おっと、これは失礼。今のは忘れてください。エスメラルダさん、セシリオ殿には、了解した、とお伝え下さい」

 それからもニヤニヤと笑いながら何やらブツブツ呟いているファズに、エスメラルダはこれ以上ここにいる必要はないと判断する。

「承知いたしました。それでは、私はこれで失礼いたします」

「もうお帰りになるのですか?」

「ええ、用件はすみましたから」

 踵を返して出ていこうとするエスメラルダの腰に、ファズの腕が回される。

「そうおっしゃらずに。実は私、一目見た時からあなたの美しさの虜になってしまいまして」

 エスメラルダの耳に顔を近づけて歯の浮くようなセリフを吐くファズに、エスメラルダは鳥肌が立ちそうになるのをなんとか抑える。

「それは嬉しい限りですが、申し訳ございません。私はセシリオ様のものですから」

 エスメラルダはするりとファズの腕から抜け出すと、そのまま部屋の出口へと向かう。

 しかし、ファズは諦めず、今度はエスメラルダの肩に腕を回してくる。

 その視線は、エスメラルダの深い谷間に向けられていた。

「そうつれない態度を取られると、逆にものにしたくなってしまいます」

「おやめください」

「いいじゃないですか、少しくらい――」

 ここでファズは大きな失敗をする。

 エスメラルダの尻に手を伸ばしたのだ。

「あがっ!? い、いだっ、いだだだだだっ!?」

 尻を触ろうとした腕を骨が折れる寸前の力で掴まれたファズは情けない声を上げる。

「おやめくださいといったはずですが?」

 ぎりぎりと腕を掴む手に力を入れながら冷たい視線を向けるエスメラルダに、ファズは底知れぬ恐怖を感じた。

「わ、わかった! いえ、わかりました! やめます、やめますからっ!」

「わかればいいんですよ、ファズ様。それでは今度こそ失礼させていただきます」

 エスメラルダは最初同様スカートの前で手を合わせて恭しく頭を下げると、ファズの部屋を後にした。

「バケモノめ……」

 後に残されたファズは、エスメラルダが去っていたドアを見ながら独りごちたのだった。

***

『さあ、いよいよ決勝戦の始まりだあああ! 強者揃いのトーナメントを見事勝ち抜き、決勝へと駒を進めたのはこの2チームっ!』

 決勝戦開始前の実況が響き渡ると、会場から大きな歓声が上がる。

『ファズ村代表! 妖艶なる美女ステラ選手となんとなんと子供にしか見えないながらその夫であるオスカー選手のペア!』

 実況の言葉に合わせてステラとオスカーが姿を表すと、会場からステラを呼ぶ男の声と、オスカーを呼ぶ女性の声が混ざって湧き上がる。

『ミルズ村代表! 白い髪のうら若き乙女、可愛い見た目からは信じられない動きから繰り出される剣技で圧勝続きのマヤ選手!』

 マヤが姿を表すと、今度は明らかに男が中心だとわかる野太い声援が耳に飛び込んできた。

「やっぱりこうなったね」

 たどり着いた闘技場の真ん中で、マヤはオスカーに声をかける。

「ああ、予想通りだ」

「悪いけど、勝たせてもらうよ?」

 マヤは不敵に笑って剣に手をかける。

「そう簡単にはいかないさ」

 余裕の笑みを浮かべてみせたオスカーが、マヤへと杖を向けた。

『試合開始!』

 ついに、ステラとオスカー対マヤという魔王同士の試合の火蓋が切って落とされた。
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