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第6巻第3章 聖剣争奪戦
エスメラルダの能力
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「エスメラルダさん、どうしてここに?」
オリガは突然現れたエスメラルダを警戒しながら問いかける。
問いかけてはいるオリガだったが、先ほどのエスメラルダの発言から、エスメラルダの正体についてはなんとなく推測できていた。
なので当然ながら、なぜ今ここに姿を現したのかも、ある程度推測できている。
「オリガ様のことですから、なぜ私がここに来たのか、本当はわかっているのでしょう?」
「わかっていますよ。もちろん推測の域は出ませんが。でも、できればエスメラルダさんの口から教えてほしいです」
エスメラルダが今回の件の黒幕、あるいは黒幕の手先、というのがオリガの今のところの推測だ。
しかし、オリガとしては短い間とはいえともに旅をした仲間であるエスメラルダが敵だとは思いたくなかった。
「なるほど、オリガ様はお優しいのですね。あの魔王にしてこの部下あり、ということでしょうか」
エスメラルダはオリガへと柔らかい笑みを浮かべる。
その様を見ていると、オリガはやはりエスメラルダが悪人だとは思えなかった。
「いいでしょう、お教え致しまします。今回の爆発、その魔法自体を設置したのは私です。それからもう一つ、ファズ様を除いた四皇の方々と龍帝様を封印空間に閉じ込めたのも私です」
「そう……ですか……それは、エスメラルダさんの意思なんですか?」
まだどこかでエスメラルダは敵ではないと思いたいオリガは、そんな質問をする。
「いえ、主の命令です」
「その主っていうのは……」
エスメラルダは申し訳無さそうに苦笑する。
「それはお教えできません」
「わかりました……。なら、力ずくで聞き出すまでです!」
オリガは覚悟を決めると、一気に6つの魔法を発動し始める。
「それだけの数の魔法を並列発動するとは、流石ですね。しかし――」
「…………っ!?」
オリガの魔法攻撃がエスメラルダに殺到するという瞬間になってもいやに落ち着いているエスメラルダに、オリガは気味悪さを感じて息を呑む。
直感的に魔法を放つことが悪手のような気がしたオリガだったが、流石のオリガも魔法の発動を中断できるタイミングではなかった。
(おいカーサ! まずい! 今すぐ変われ!)
「へっ!? あっ、うん……」
珍しく切羽詰まったカーリの声に、カーサは慌てて身体の主導権を明け渡す。
「間に合えっ!」
「ええっ!? カーサさん!?」
突然カーサからほとんど体当たりのような勢いで抱きつかれたオリガは、そのままカーサに抱きしめられて地面を転がった。
あまりにも突然のことに驚いて目を回してしったオリガだったが、すぐに近くで轟音が鳴り響きオリガは無理やり混乱する頭を落ち着かせて音の方へ目を向けた。
「あれは……」
轟音の発生源はついさっきまでオリガが立っていた場所だった。
そして、その轟音を生み出していたのは――。
「あれは、私の魔法?」
そう、オリガがいた場所に降り注ぎ轟音を生み出していたのは、オリガがエスメラルダへと放ったはずの魔法だったのだ。
「素晴らしい判断力と行動力です。あなたはカーサさん……ではありませんね?」
状況が理解できずにいるオリガをよそに、油断なくエスメラルダを睨みつけるカーサをエスメラルダが称賛した。
「お見通しか……いかにも、我はカーリ。カーサの中に居候させてもらっているしがない剣客だ」
「ご謙遜を。カーリ様といえばオークの初代剣聖にして剣神と称される魔王デリック様と剣技で渡り合った唯一の剣士と聞いております。であれば、先ほどの動きも納得というものです」
その言葉に嫌味は感じられず、本心からカーリのことを評価していることが伺える。
(侮ってくれると助かったんだがな……)
こんなことなら名乗らないほうが良かったか、とも思ったカーリだったが、そもそも遥か昔に死んだ剣聖カーリの名を名乗って、疑うことなく剣聖カーリ本人だと認めたところを見ると、もとからカーサの中に剣聖カーリがいることを知っていたのかもしれない。
「カーリさんだったんですね……、ありがとうございます」
「ああ。だが今はのんきに礼を言っている場合ではない。オリガ、さっきのはどういう原理か理解できているか?」
「いえ、なんで私の魔法が私のいたところに返ってきたんです?」
「…………そうか。説明している時間はないからな、オリガは我のサポートだ。自分の身体ぎりぎりのところで防御魔法を発動してチャンスがあれば我に身体強化でもかけてくれ。無理ならいい」
カーリは一方的に捲し立てると、そのまま剣を抜いてエスメラルダに相対する。
「もう見抜かれたとは。恐ろしい洞察力ですね」
「これくらいできなければデリックとは戦えんからな」
(――と、余裕ぶっては見たものの、なかなか厄介な能力だ。どうしたものか……)
カーリの予想が正しければ、エスメラルダの能力は自身の周りの一定範囲の空間を任意の空間とつなげるものだ。
さっきのオリガの攻撃で言えば、オリガの魔法がエスメラルダの近くの空間に届いた瞬間、その空間とオリガの頭上の空間を繋いだのだろう。
結果として、エスメラルダに向けて放ったはずの魔法がオリガの頭上から出てきたのだ。
「では、私も本気でいかせて貰います」
エスメラルダは長いメイド服のスカートをめくりあげ、太もものベルトからナイフを取り出して構える。
「そんな刃渡りの短い得物でいいのか?」
「ええ、私に間合いは関係ありませんから」
突然背後に現れた殺気にとっさにしゃがむ。
「……っ!? なるほど、確かにこれでは間合いも何もあったものではないな」
しゃがんだカーリの頭上にはエスメラルダのナイフ突き出されていた。
「流石にこの程度はかわしてきますか」
「まあ、なっ!」
カーリは自分の剣の間合いに入れるため、エスメラルダとの距離を詰めにかかる。
「そうはさせません」
疾駆するカーリの動線上に矢継ぎ早に繰り出されるナイフをかわしながらカーリはどんどんと距離を詰め、ついに剣の間合いにエスメラルダを捉える。
カーリはぎりぎりエスメラルダに届くかどうかといった距離で斬撃を放つ。
「流石ですが、これで終わりです」
必殺の一撃が迫らんとしているにも関わらず笑みを浮かべるエスメラルダに、カーリは背筋が寒くなる。
カーリは自身の剣が途中で消えていることに気がついた。
(やはり剣でもこの空間に入れば別の空間に飛ばされるのかっ)
とはいえ、カーリもエスメラルダのナイフによる攻撃が空間を越えて来た時点で、エスメラルダが空間を繋げて飛ばせるのは魔法だけではないのだろう、ということは予想していた。
カーリは背後から自身の斬撃が迫っているのを確認し、踵で背負っている鞘を蹴り上げ、背後から迫る自身の剣を弾きあげる。
死角からの斬撃を背負った鞘を蹴り上げて弾きあげるなど、達人と言われるような剣士でも難しいだろう。
「…………あれを防ぎますか……」
常識外れの絶技を見せつけられたエスメラルダはその顔に初めて驚愕をにじませる。
今までどこか余裕を残していたエスメラルダから、完全に余裕が消えたのがはっきりとわかった。
オリガは突然現れたエスメラルダを警戒しながら問いかける。
問いかけてはいるオリガだったが、先ほどのエスメラルダの発言から、エスメラルダの正体についてはなんとなく推測できていた。
なので当然ながら、なぜ今ここに姿を現したのかも、ある程度推測できている。
「オリガ様のことですから、なぜ私がここに来たのか、本当はわかっているのでしょう?」
「わかっていますよ。もちろん推測の域は出ませんが。でも、できればエスメラルダさんの口から教えてほしいです」
エスメラルダが今回の件の黒幕、あるいは黒幕の手先、というのがオリガの今のところの推測だ。
しかし、オリガとしては短い間とはいえともに旅をした仲間であるエスメラルダが敵だとは思いたくなかった。
「なるほど、オリガ様はお優しいのですね。あの魔王にしてこの部下あり、ということでしょうか」
エスメラルダはオリガへと柔らかい笑みを浮かべる。
その様を見ていると、オリガはやはりエスメラルダが悪人だとは思えなかった。
「いいでしょう、お教え致しまします。今回の爆発、その魔法自体を設置したのは私です。それからもう一つ、ファズ様を除いた四皇の方々と龍帝様を封印空間に閉じ込めたのも私です」
「そう……ですか……それは、エスメラルダさんの意思なんですか?」
まだどこかでエスメラルダは敵ではないと思いたいオリガは、そんな質問をする。
「いえ、主の命令です」
「その主っていうのは……」
エスメラルダは申し訳無さそうに苦笑する。
「それはお教えできません」
「わかりました……。なら、力ずくで聞き出すまでです!」
オリガは覚悟を決めると、一気に6つの魔法を発動し始める。
「それだけの数の魔法を並列発動するとは、流石ですね。しかし――」
「…………っ!?」
オリガの魔法攻撃がエスメラルダに殺到するという瞬間になってもいやに落ち着いているエスメラルダに、オリガは気味悪さを感じて息を呑む。
直感的に魔法を放つことが悪手のような気がしたオリガだったが、流石のオリガも魔法の発動を中断できるタイミングではなかった。
(おいカーサ! まずい! 今すぐ変われ!)
「へっ!? あっ、うん……」
珍しく切羽詰まったカーリの声に、カーサは慌てて身体の主導権を明け渡す。
「間に合えっ!」
「ええっ!? カーサさん!?」
突然カーサからほとんど体当たりのような勢いで抱きつかれたオリガは、そのままカーサに抱きしめられて地面を転がった。
あまりにも突然のことに驚いて目を回してしったオリガだったが、すぐに近くで轟音が鳴り響きオリガは無理やり混乱する頭を落ち着かせて音の方へ目を向けた。
「あれは……」
轟音の発生源はついさっきまでオリガが立っていた場所だった。
そして、その轟音を生み出していたのは――。
「あれは、私の魔法?」
そう、オリガがいた場所に降り注ぎ轟音を生み出していたのは、オリガがエスメラルダへと放ったはずの魔法だったのだ。
「素晴らしい判断力と行動力です。あなたはカーサさん……ではありませんね?」
状況が理解できずにいるオリガをよそに、油断なくエスメラルダを睨みつけるカーサをエスメラルダが称賛した。
「お見通しか……いかにも、我はカーリ。カーサの中に居候させてもらっているしがない剣客だ」
「ご謙遜を。カーリ様といえばオークの初代剣聖にして剣神と称される魔王デリック様と剣技で渡り合った唯一の剣士と聞いております。であれば、先ほどの動きも納得というものです」
その言葉に嫌味は感じられず、本心からカーリのことを評価していることが伺える。
(侮ってくれると助かったんだがな……)
こんなことなら名乗らないほうが良かったか、とも思ったカーリだったが、そもそも遥か昔に死んだ剣聖カーリの名を名乗って、疑うことなく剣聖カーリ本人だと認めたところを見ると、もとからカーサの中に剣聖カーリがいることを知っていたのかもしれない。
「カーリさんだったんですね……、ありがとうございます」
「ああ。だが今はのんきに礼を言っている場合ではない。オリガ、さっきのはどういう原理か理解できているか?」
「いえ、なんで私の魔法が私のいたところに返ってきたんです?」
「…………そうか。説明している時間はないからな、オリガは我のサポートだ。自分の身体ぎりぎりのところで防御魔法を発動してチャンスがあれば我に身体強化でもかけてくれ。無理ならいい」
カーリは一方的に捲し立てると、そのまま剣を抜いてエスメラルダに相対する。
「もう見抜かれたとは。恐ろしい洞察力ですね」
「これくらいできなければデリックとは戦えんからな」
(――と、余裕ぶっては見たものの、なかなか厄介な能力だ。どうしたものか……)
カーリの予想が正しければ、エスメラルダの能力は自身の周りの一定範囲の空間を任意の空間とつなげるものだ。
さっきのオリガの攻撃で言えば、オリガの魔法がエスメラルダの近くの空間に届いた瞬間、その空間とオリガの頭上の空間を繋いだのだろう。
結果として、エスメラルダに向けて放ったはずの魔法がオリガの頭上から出てきたのだ。
「では、私も本気でいかせて貰います」
エスメラルダは長いメイド服のスカートをめくりあげ、太もものベルトからナイフを取り出して構える。
「そんな刃渡りの短い得物でいいのか?」
「ええ、私に間合いは関係ありませんから」
突然背後に現れた殺気にとっさにしゃがむ。
「……っ!? なるほど、確かにこれでは間合いも何もあったものではないな」
しゃがんだカーリの頭上にはエスメラルダのナイフ突き出されていた。
「流石にこの程度はかわしてきますか」
「まあ、なっ!」
カーリは自分の剣の間合いに入れるため、エスメラルダとの距離を詰めにかかる。
「そうはさせません」
疾駆するカーリの動線上に矢継ぎ早に繰り出されるナイフをかわしながらカーリはどんどんと距離を詰め、ついに剣の間合いにエスメラルダを捉える。
カーリはぎりぎりエスメラルダに届くかどうかといった距離で斬撃を放つ。
「流石ですが、これで終わりです」
必殺の一撃が迫らんとしているにも関わらず笑みを浮かべるエスメラルダに、カーリは背筋が寒くなる。
カーリは自身の剣が途中で消えていることに気がついた。
(やはり剣でもこの空間に入れば別の空間に飛ばされるのかっ)
とはいえ、カーリもエスメラルダのナイフによる攻撃が空間を越えて来た時点で、エスメラルダが空間を繋げて飛ばせるのは魔法だけではないのだろう、ということは予想していた。
カーリは背後から自身の斬撃が迫っているのを確認し、踵で背負っている鞘を蹴り上げ、背後から迫る自身の剣を弾きあげる。
死角からの斬撃を背負った鞘を蹴り上げて弾きあげるなど、達人と言われるような剣士でも難しいだろう。
「…………あれを防ぎますか……」
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