転生したらただの女の子、かと思ったら最強の魔物使いだったらしいです〜しゃべるうさぎと始める異世界魔物使いファンタジー〜

上村 俊貴

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第7巻第4章 亀裂と……

復権派の計画

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 仲間も、そして国民さえもいなくなった街で一人に崩折れるマヤを神の世界から見て、復権派の神々は喜色満面だった。
 
「やはり創造神様はただ封印されたわけではなかったのだ!」

 誰かが発したその言葉に、他の神々も追従する。

「ああ、間違いない! あれだけ強く繋がっていたマヤと原初の魔王どもがバラバラになったのだ。しかも、マヤ自身の振る舞いが原因で。これは間違いなく創造神様のお力に違いない」
 
「単純にこのマヤという娘が愚かだっただけということはないのか?」

「いや、それはないだろう。こんなにすぐに仲間が離れていくような人間に、創造神様を封印できるほどの連携ができるとは思えんしな」

「それもそうか。では、やはり創造神様が」

「そう考えるのが妥当だ」

「何にせよ、マヤが一人になったということは、我らの出番ということだろう?」

 復権派の神々は、創造神の仇を取り、再び神が人間を支配する世界にするのは自分だと、にわかに騒がしくなる。

「落ち着け。襲撃の計画はすでに立案済みだ」

 落ち着いた声で周囲を静まらせた神は、その手に出現させた大きな紙を、テーブルの真ん中に広げた。

「我々には空間を越える力がない。従って、我々があの世界に行くには――」

 リーダー格の神は、地図上の一点を指差す。

 そこは、創造神が復活した漆黒のドアがある場所だった。

「――ここに行く必要がある」

「つまり、マヤのところに直行できるわけではないのだな」

「その通りだ。しかし、時は止められずとも、我らの移動速度なら半日もかかるまい。ということで、今回の襲撃は創造神様も通られたドアを通じて人間の世界に移動、マヤの元へと直行し、到着と同時にこれを打つ。異論のある者は?」

 リーダー格の神の言葉に、復権派の神々が一様に頷いた。

「それでは早速出発だ。マヤを打倒し、創造神様を救い出し、再び我ら神による支配を」

「「「「「神による支配を!!」」」」」

 おおよそ人間なら立てないであろう計画とも呼べないほどずさんな計画をまとめた復権派の神々は、神の世界にある漆黒のドアに向かって移動を始めた。

 しかし彼らは腐っても神、一人一人が原初の魔王クラスのバケモノたちである。

 計画があまりにもずさんだったとしても、彼らは今のマヤにとって十分な脅威なのだ。

 普段のマヤなら、復権派という言葉から、創造神の仲間の存在を予測できたかもしれない。

 その予測に基づいて想像神が復活したドアの前で厳戒態勢を取ることもできたかもしれない。

 だが、すべてを失って呆然としている今のマヤには、そんなことできるはずもないのだった。

*** 
 
「ははっ…………はははっ…………まさか、本当に誰もいない? はははっ…………ぐすっ……」

 マヤは普段は人で賑わうショッピングモールを歩きながら、流れてきた涙を袖で拭う。

 いつでも子どもやその家族の声で賑わうショッピングモールは、しんと静まり返っていた。

「なんで…………なんで、こうなっちゃったのかな…………私、何か悪いことした…………?」

 マヤはショッピングモール内のベンチに腰掛け、うつむく。

 自分の何が悪かったのだろうか考え始めると、思いつくこと思いつくこと、全部自分が悪いように思えてきてしまい、マヤはなぜ生きているのかわからなくなってくる。

 そんな時、マヤの頭に浮かんだのはウォーレンの顔だった。

 しかしすぐにその姿は、エスメラルダに愛をささやくウォーレンへと変わってしまう。

「…………また、嫌なこと、思い出しちゃった…………なんで今さらウォーレンさんのことなんか……」

 マヤはそう思って周囲を見渡し、以前も一度このベンチに座っていたことがあったのを思い出す。

「そっか、このベンチは、ウォーレンさんが私をデートに誘ってくれた時の……」

 確かあの時は、マヤがこのベンチで黄昏れていたのを見たウォーレンが、マヤを元気づけるためにデートの誘ってくれたのだ。

 あの頃は完全にマヤの片思いだったので、元気づけたかっただけというウォーレンの気遣いだとわかっていても、マヤは心が踊ったのをよく覚えている。

「楽しかったなあ……あの時は……」

 楽しかったことを思い出したせいで、今や周りには誰もいない状況が際立ってしまい、マヤは思わず自分を抱きしめた。

「ウォーレンさん…………ウォーレンさん…………」

 マヤはそのまましばらく、その場から動くことができなかった。

***

「マヤが異変は創造神のせい、か。まあ薄々感づいてはいたがな」

 セシリオの空間跳躍によって、国民たちと一緒にヘンダーソン王国の辺境の街にやってきていたマッシュは、エメリンから事情を聞いてそう答えた。

「わかっていて放っておいたんですか?」

 エメリンの言葉に非難の色を感じたマッシュは顔をしかめる。

 と言っても、そういう雰囲気になったというだけで、うさぎであるマッシュに表情などエメリンたちにはわからないのだが。

「まさか、そんなわけ無いだろう? 何度もマヤには確認した。創造神は起きたのか? なにか変なことを言われたりしてないか? 身体に異常はないか? とな。それでもマヤは何もないといったのだ。それ以上どうしろと言うのだ」

「それは……マッシュさんはマヤさんの魔物なわけですから、それを利用してこう……上手いこと……」

「何だ上手いことって……少し落ち着けエメリン」

「そうだよお母さん、魔物の側から魔物使いにできることなんてほとんどないって、お母さんならわかってるはずでしょ?」

「それはそうなんだけどねオリガ、シロちゃんがマッシュさんが鍵だっていうから……」

「私が鍵、なあ……私に何ができるというのだ?」

 シロちゃんの言葉を疑うわけでは無いが、マッシュは自分が鍵だなどと言われても何も思い当たるところが無かった。

 それこそ、シロちゃんのほうがマヤとのつながりは強そうなので、シロちゃんのほうがよっぽど鍵なのではないかと思うのだが、違うのだろうか。

「マッシュさん、何か思い当たることはないですか?」

「あったら悩んでいないだろう? そうだな……ひとまずマヤの位置でも……」

 マッシュは自身に流れ込んできているマヤの魔力に意識を向ける。

 瞬間、マヤの感情が一気にマッシュへと流れ込んできた。

「これは……っ!?」

 寂しい、悲しい、悔しい、憎い、どうして、どうして、どうしてどうしてどうしてどうして…………そんな感情が流れ込んできたマッシュは、思わず近くにいたオリガの膝に跳び乗ると、その上で丸まって震えだしてしまう。

「マッシュさん? どうしたんです、突然」

「マヤの感情が流れ込んできたのだ…………強烈な負の感情だ……」

 マヤの感情を受け取ったマッシュは、その負の感情に押しつぶされそうになりながらも、なんとか立ち上がる。

「エメリン、オリガ、マヤを救うには、私たちだけでは足りない。ウォーレンが必要不可欠だ」

 マッシュはマヤの感情の一番奥深くで目にした光景、エスメラルダと仲睦まじく話すウォーレンの姿を見てそう確信したのだった。
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