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第一章「いきなり冒険者」
第8話「女聖騎士」〇 ※イラストあり〼
しおりを挟む「私の名はシスティーナ。吸血コウモリに襲われ、この穴に落ちてしまったところだ」
ならばオレと同じということか。
どれどれ――システィーナ 聖騎士LV45。
怪我が少ないのはレベルによるところか。
今は普通の服を着ているが、聖騎士として職務についている時は鎧に身を包んでいるに違いない。
金髪の女聖騎士か。
カッコいい!
是非ともお近づきになりたいです。
彼女は怪我をしているようだった。
「不覚にも足に怪我をしてしまった。君は無傷みたいだな……恥ずかしい限りだ」
「いえいえ、運が良かっただけです」
全身の複雑骨折と頚椎骨折及び頭蓋骨陥没で即死した男は平気で嘘をついた。
システィーナの足を見せてもらう。
痛みのせいか――システィーナの美しい顔が苦痛にゆがむ。
すべすべの白い右足。その足首が大きく腫れていた。
(報告。麻酔と鎮痛作用の薬を調合。成功しました)
マザーさん気が利くね。
でも、これってどうすればいいのかな。
まさか……ぶっかけ……!
(事例案。薬は手からの抽出も可能)
さいですか。ちょっと残念。
オレはシスティーナの横にかがみ込む。
(代替案。痛みを緩和させるため能力「フェロモン」を発動させます)
やはり精神に作用する能力のようだ。落ち着かせたりとか――代替案ってことは、今後しっかりとした能力があればそれを使うということだろう。今は苦痛を和らげるためにフェロモンを使うということか。
オレが触れるとビクリとシスティーナの身体が動いた。
「ちょっと触るけど我慢してくれ」
システィーナの顔を見るとなんだか緊張しているみたいだ。松明の明かりでよくわからないが、赤面しているような……もしかして怒ってる?
聖騎士といえば貴族が多いとかアランが言ってたな。もしかして、下賤のオレが触ることに抵抗があるとか。
もしかして激オコ中なのか?
でも、このままにしておくこともできない。
オレは腫れている部分に優しく触れる。
「あん♡」
システィーナの身体がピクンと跳ねた。
手のひらからの薬の抽出。麻酔と鎮痛作用があるということだから、もう痛みは軽いはずだ。
腫れもみるみるひいていく。
システィーナを見ると下を向いたままぷるぷると震えている。
「システィーナ、大丈夫か?」
肩を触ると身体を仰け反らせる。
何だ。もしかして知らないうちに毒をうけていたのか!
(否定。フェロモンの効果だと思われ……)
マザーさんこんな時に説明は必要ないです!
緊急事態なんです。
「大丈夫か?」
「ち、違う……なんだか身体の奥が熱くて……ひゃん♡」
これは、危機的状況だ。システィーナの顔を見れば息も荒く、真っ赤になっている。快感に興奮している顔に見えなくもないが、それはない。聖騎士に限ってそんなことはない。
ああ、なんてことだ。
オレは助けるつもりで聖騎士を危険にさらしてしまっていたんだ。
後悔がオレを押しつぶす。
「システィーナしっかりしろ!」
システィーナの手を強く握る。
「待って……あなたに触れられるとゾクゾクしてしまう……ん♡」
悪寒がすると言っている。
これはまずい。
システィーナは自分で胸を揉み始めた。
なんてひどい勘違いをしているんだオレは!
これは胸が苦しいからに違いない。
「すまない」
オレはシスティーナを抱きかかえた。
「ちょっと待ってくれ、刺激が強すぎる! 今は……イクっっ♡」
システィーナが声にならない悲鳴を上げオレに強くしがみついてきた。何度も痙攣するようにガクガクと身体が揺れる。
すごい汗だ。
なんとかしなければ。この勇気ある聖騎士が死んでしまう。
(報告。個体名システィーナの感情の昂ぶりを確認。性的興奮状態にあると推測されます)
マザーさんの診断もおかしくなっている。システィーナは苦しんでいるじゃないか。
早く助けなければ。
みんなの所に連れて行かないと!
一歩歩くごとにシスティーナの身体が震え、小さな悲鳴を上げる。
悦びの声に聞こえてしまうのはオレがやましい考えをしているからに違いない。
システィーナはオレの腕の中で何度も何度も痙攣している。
オレをつかむ手の力もすごい。爪が背中に食い込みそうだ。さすが聖騎士。
潤んだ目でオレを見ている。
「もう我慢できない♡」
何度も懇願するようにうめいている。
熱にうなされてかわいそうに。
システィーナが抱きついてきた。
「また……イク♡」
なんだかとっても艶っぽい声。
不純なオレよ。今は死んどけ!
聖騎士がそんな声を上げるはずがない。
「出口はどこだーーーー!」
オレは叫びながら洞窟内を走る。
そして。
マザーさんの助けを借りてなんとか洞窟内を脱出することに成功した。
「ノゾミ!」
洞窟内を出るとすぐにミーシャ達に合流することができた。
「システィーナを……聖騎士を診てくれ!」
オレはミーシャに失神したシスティーナをあずける。
「え、ええ……」
ミーシャはどこか呆けたようにオレを見ている。
ミーシャも周囲の人達もなんだかおかしい。
どうしたんだ。
もしかして、フェロモンが原因なのか?
マザーさんも何か言いかけていたし。
フェロモンを解除する。
(推測。能力「フェロモン」の効果によるものだと思われます。フェロモンは発した異性に対し劇的な性的欲求を誘発させ……)
「無事だったかノゾミ!!」
アランがオレの背中にぶつかってきた。
――???
アランのせいで何か大事なことを聞きそびれたような気がしたが、まあ、いい。
ハッとしたようにミーシャが回復魔法をシスティーナにかけはじめた。
どうやら、フェロモンは相手を呆けさせるかもしくは強制的にリラックスさせる能力のようだ。
もしかして、性的な興奮を起こす能力? などど考えたが、どうやらそれは間違いのようだ。
今後、使いどころに注意しなければ。
「ノゾミ! 本当にすまなかった。オレは……オレには仲間を救うことなんてできないんだ!」
アランは泣きそうな顔でオレに謝罪する。
「アランはずっと君に謝りたかったんだよ。今は素直に彼の話を聞いてあげてくれ」
オットーもオレの姿を見て安心したようだった。
あの事故はオレのせいだ。アランの責任ではない。
それはオレ自身がしっかりと認識していた。危険だと承知で洞窟に入り、不注意で落ちたのだ。
「吸血コウモリが襲ってきていたんだ。穴に落ちたのはオレの不注意だった。すまないアラン……みんなに心配をかけさせてしまって……」
マヤが背中に抱きついてきた。
「お兄ちゃん! 心配したんだからね!」
みんなに聞こえるように大声で。
「……このドジ! 何回死んだら気がすむの!」
後半は小声でみんなに聞こえないように言われてしまった。
はい。反省しております。
今後このようなことが起こらぬよう。細心の注意を払いつつ、行動してまいりたいと思います。
反省文のテンプレ終了。
オレの無事はみんなに伝わった。
さて、次の仕事に行くか。
「もう一度洞窟に行ってくる」
オレはアランたちにそう言った。
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